国の借金1200兆円は(現時点では)ヤバくない

「国の借金」について森永卓郎と藤巻健史が討論していたが、どちらも極論で聞くに堪えない内容である。

藤巻の「日銀が債務超過に→ハイパーインフレーション」は論外だが、森永も(おそらく情弱ビジネスのセールストークとして)いい加減な話を連発している。

一点指摘すると、24:40~で「円が暴落して1ドル=300円や500円になれば、世界最強の輸出競争力をもって雪崩のように輸出する」と言っているが、日本経済は既にそのような構造ではなくなっている。むしろ、為替レートの暴落が貧困化を促進する後進国型に近づいている。

本来、こうした通貨価値の劣化は日本の輸出産業にとって追い風になるはずだ。しかし、有力企業の多くはすでに海外に生産移管しているので、通貨価値の劣化=円安の影響で(業績を大きく押し上げるほどに)輸出量が伸びることはもはやない。
結局、最後に残るのは、「弱い円」を介して海外の財・サービスを購入しなければならない日本人の不利な状況だけだ。

13:40~では財政状況を一般家計に置き換えて説明しているが、国を個人にたとえるのであれば、二点の決定的な違いを踏まえなければならない。

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①収入が「給料」ではなく国中から巻き上げる「みかじめ料」
②事実上の不死(永続的存在)

①は国民経済そのものが収入源であること、②は元本の完済期限がないことを意味する。

ローン残高5379万円→完済不要
元本の返済7万円→借り換えで賄う

なので、利払い(5万円)が収入(33万円)比で無理のない範囲に抑えられていれば、元利払いが滞るデフォルトのリスクは無視できる。

近年では、利払費は税収の1/8程度に抑えられているので、財政危機が迫っている状況ではないと判断できる。

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公債増発に伴つて利払費は漸増し、租税その他の収入もその利払ひに追わるゝ結果となるであらう。かくの如き事態が生ずると、国費中公債による部分がますます多くなり、財政の機能は行詰りに陥らざるを得ない。かくては国家財政の信用を維持し難く、公債の消化は行詰り、結局印刷機械の働きにより財源の調達を図らざるべからざる状態に至る。かくて、所謂悪性インフレーションの弊は必至の勢ひとなるであらう。

国の借金のリスクはデフォルトリスクではなく、市中のマネーが過剰になって狂乱物価を引き起こすインフレリスクである。インフレ率が低位安定していることも、現時点では財政は危機的状況ではないことを示している。

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