「出生率」にもいろいろ
「出生率」は対象集団の出生数を人口で割ったものだが、分子と分母の範囲をどうするかでいろいろあるので、整理してみる。
粗出生率または普通出生率
分子が総出生数、分母が総人口で、単に「出生率」とある場合はこれを指す(日本では外国人を除く日本人人口)。
総出生率
分子が総出生数、分母が再生産年齢(通常は15~49歳または44歳)の女の人口。
この二つは直感的に理解できるが、年齢構成によるバイアスが生じるため、国同士や地域間の比較には向いていない。例えば、東京都は全国に比べて再生産年齢の人口割合が大きいため、普通出生率と総出生率には引き上げバイアスがかかっている。
普通出生率と総出生率から年齢構成の違いから生じるバイアスを除去する調整を施したものが下の二つになる。
標準化出生率
普通出生率は全年齢の総出生数÷総人口だが、これを年齢別に分解して各年齢の出生率を求め、それらを全国の年齢別人口割合で加重平均する。
合計出生率
総出生率は総出生数÷再生産年齢の女の人口だが、これを年齢別に分解して各年齢の出生率を求め、それらを合計する。
標準化出生率では各年齢のウェイトが全国の年齢別人口割合だが、合計出生率では等ウェイトとなる。
東京都の位置
2022年の東京都の普通出生率は6.78‰で全国の6.32‰を上回る10位だが、年齢構成調整後の標準化出生率は5.37‰で最下位となる。この極端な差は東京都の引き上げバイアスが突出して大きいことから生じている。
総出生率は42位だが合計出生率は最下位。
合計出生率との相関は普通出生率→総出生率→標準化出生率の順に強くなる(グラフの橙マーカーが東京都)。
ということで、年齢構成の違いを調整して地域間比較する際には、やはり合計出生率がベストということになる。ただし、その地域差は独立して生じているわけではないので、解釈には注意を要する。
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