アベノミクスをやり抜くと「日本は衰退する」

リフレ派の主張を検証する。

日本は20年間、数え方によっては30年間、デフレを経験して来たのです。確かに、消費者物価指数が明らかにマイナスという年は、プラスになったりマイナスになったりしました。しかし、全体としての20年、30年を見ると、やはりマイナスなのです。

消費税率調整済消費者物価指数(総合)の最大値は1998年10月の103.0、その後の最小値は2013年2月の97.7なので、20年間、30年間のデフレというのは甚だしい誇張である。

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リフレ派は因果関係の「因」を誤認しているので論理展開も誤ってしまう。

「内部留保が増えると、給料が増えない」のではなく、「給料が増えないから、内部留保が増える」のである。

少なくともメンタルの意味では、日本国民は商品を買うことに慎重で、企業は設備投資に慎重です。ですから、内部留保がどんどん増えて行くのです。内部留保が増えると、給料が増えないのです。給料が増えないから消費も増えないという、悪循環が続いて来ました。

物価が上がらないから賃金が上がらないのではなく、賃金が上がらないから消費が増えず物価にも波及しないというのが実態に近い。

物価が上がらないということは、賃金も上がっていないのです。賃金が上がらなければ、家計は厳しくなります。賃金が上がり、それによって消費が増え、消費が増えた結果、物価もゆっくり上がるという状態に早く持って行かないと、間違いなく日本は他の国と比べても、永遠のハンディキャップを負っています。

1998年10月→2013年2月の消費者物価指数の下落は年率-0.37%に過ぎないので、企業に設備投資を躊躇させるほどの影響はない。

デフレから脱却しないと企業が前向きな投資をしません。成長戦略の成功の前提に、マクロ政策の成功があるのです。つまり好循環をつくって、将来に対する明るい展望を企業経営者にも投資家にも、消費者にも持ってもらうということが、成長戦略が成功することの前提となっているのです。

将来の日本は「過疎化が進む老人だらけの集落」のようになっていくので、マクロ政策で企業に「将来に対する明るい展望」を持たせることはほとんど不可能に近い。

これ(⇩)も初歩的な誤りで、名目で円高になっても実質でならなければ問題ない。現実の実質為替レートもプラザ合意の前の水準に低下している。

日本だけインフレ率が1%でもいい、0.5%でもいいと言った瞬間に、これから円高傾向がずっと続きます。常に足かせを負ったまま、日本経済が進まなければいけないということで、これが10年、20年と続くと蓄積は非常に大きいです。

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「民間金融機関」が預金取扱機関のことを意味しているのだとすると、現実の貨幣制度(monetary system)の成り立ちを理解していないことになる。預金取扱機関が貸す金は客から預かったものではなく自ら発行した負債(預金)である。

民間金融機関、特に地方の金融機関は、料金を低金利で預かって、それを低金利で貸すのですが、両方とも低金利なので利ザヤがなかなか取れず、経営が厳しくなって来る。

新発国債を日本銀行が直接買い取ることは禁止されている。主に証券会社が仲介して銀行や機関投資家が買った時点で国は資金調達できているので、その後に日銀が流通市場から買い入れても国の財源にはならない。国債を買った銀行や機関投資家の預金が財政支出で出す資金になり、受け取った企業の預金になる(日銀発行の預金はトランスポーターの役割)。経済活動の活発化による「良い金利上昇」を無理に抑え込む必要もない。国に資金供給しているのは民間部門であって中央銀行ではないことを理解していないようである。

新しい国債を発行して、日銀がそれを買い取る。その国債で調達した資金を、財政が民間部門に対して出す。財政で資金を出すと、必ずそれが預金になります。お金が出ますから、例えば政府小切手で渡すと、受け取った企業はそれを銀行に持って行きます。そうすると預金になるのです。その預金がぐるぐる回り始めます。ですから、そのままだと金利が上がって行くので、金利を下げるために大規模緩和を同時にやる。そして同時に、政府の資金を財政資金として民間部門に出す。同時にやる必要があるのです。

日本経済の問題の核心がこれ(⇩)で、その原因は①人口減少のために「将来に対する明るい展望」を持てないことに加えて、②大企業では株主が要求する利益率が経済のファンダメンタルズに比べて高すぎる、③グローバリゼーションの進展により投資のホームバイアスが弱まったことがある。

企業は普通だと赤字主体、つまり投資の方が本当は多い。しかし、日本の場合は企業も貯蓄の方が多いのです。

②だが、実質GDP成長率と連動していたROAが2000年代前半から乖離して上昇している。このことは、企業の増益が成長(増収)からコストカットに依存するようになったことを示している。

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給料が増えない主因は企業の目標利益水準が高まったことで、代わりに配当が激増している。

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③だが、国内の設備投資が未だにバブル期を下回る一方で、対外直接投資は激増している。

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対外直接投資+配当の設備投資に対する比率は1996年度の9%が2018年度には66%になっている。企業は現預金を貯めこんでいるだけではない。

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これ(⇩)は全くその通りなのだが、アベノミクスは衰退を止めるものではなく促進するものである。

何とかして投資を活性化し、生産を増やさないと、日本は衰退して行きます。

企業の金の使途が激変した主因は❶日本と海外の潜在成長率格差と❷グローバル投資家が要求する世界一律の資本コスト(を上回るリターン)だが、
安倍首相はこの(⇩)ように、企業が株主利益を最大化するために投資を国内から海外にシフトすることを促していた。なので、アベノミクスをやり抜くと日本の衰退は確定する。

安倍内閣の改革は、どんどん進んでいます。中でも、私の改革リストのトップアジェンダは、コーポレートガバナンスの改革である。繰り返し、そう申し上げてきました。
24日からの国会に、会社法改正を提案します。これで、社外取締役が増えます。来月中には、機関投資家に、コーポレート・ガバナンスへのより深い参画を容易にするため、スチュワードシップ・コードを策定します。

アベノミクスは第三の矢が本命で、第一の矢と第二の矢はそれを成功させるための陽動作戦だったように思える。

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