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経済

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2024年3月の記事一覧

日本経済の「意外なポテンシャル」はあったとしても期待できない

この👇記事の元の『一人負けニッポンの勝機』は日本経済の実態を全くつかめていなくて呆れた本だった。 何点かをピックアップする。 先日に記事にしたものと似た見方だが、初めの約10年間はバブル崩壊+超円高+金融危機といったマクロ環境の悪さ、不良債権処理と企業のリストラが一段落してからの約20年間は企業の収益追求がマクロ経済の好循環に逆行する経済構造になったことが主な理由である。 よくある例えだが、金融緩和はアクセルではなく「ブレーキを緩める」といったほうが適切である。なので、

日本経済を相対的に衰退させた「自滅行為」とは

日本経済の相対的衰退について、この👇ようなもっともらしい説明をよく見かけるが、事実とはかなりの相違がある。 このような個人や組織の判断ミス(過去の成功体験に囚われた)に原因があるとする説明が見落としているのは、バブル崩壊から約10年間の日本経済のマクロ環境である。 まず重要なのが、1990~91年のバブル崩壊に続いて、1993年から円高に襲われたことである。日本と同じく、1990年代初頭に不動産バブルが崩壊して不況に陥った北欧諸国では、為替レートの大幅減価→輸出促進によっ

株高が明るさにつながらない日本

株価のバブル期超えについては既に幾つか書いているが、ポイントを二つ挙げると、①株価のバリュエーションが全く違う、②株価形成の最大のファンダメンタルズである利益についての経営者の認識が大きく変化した、ことである。 バブルとは資産価格がファンダメンタルズ(株価の場合は、企業利益のストリームの現在価値合計)から乖離した水準に上昇することだが、日本のバブル期には、予想成長率が潜在成長率からかけ離れた水準に高まった(火が付いた)ところに低金利政策もあって益利回りが急低下した(油が注が

アメリカのGDPは日本の6.5倍

2023年の日本のGDPがドイツに抜かれて世界第4位になったというニュースが話題になったが、1990年代までは日本の約2倍だったアメリカのGDPは6.5倍になっていた。 バブル景気が山を迎えた1991年の1.69倍を基準にすると、1991年→2023年に米/日比は3.86倍になっていた。 これを分解すると、実質GDPが1.75倍(=人口1.32倍×1人当たり実質GDP1.33倍)、実効為替レートが2.20倍だった。 対ドルの実質円為替レートは1980年代前半よりもはるか

輸出数量

円の実質実効為替レートが50年以上前の水準にまで減価しても輸出数量増にはつながっていないことを確認する。 第二次安倍政権のいわゆるリフレ政策でも、円安→輸出数量増・国内生産増・設備投資増が期待されたが、そうはならなかった。貿易財を生産する企業が為替レート変動に影響されにくいグローバル生産体制を構築したためである。 米欧向けは世界大不況後に大幅に減少したまま。 アジア向けは世界大不況で増加トレンドが止まった。 円安の景気刺激効果がなくなり、逆に食料やエネルギーの輸入価格

10年遅い「デフレ脱却」表明

インフレは物価の上昇、デフレは下落でそれ以上でも以下でもないのだから、本来なら10年前にはデフレ脱却(持続的な物価下落が止まること)が宣言されているはずだった。 ところがそうはならなかったのは、「デフレ」に物価下落以上の意味を持たせてしまったからで、そのことが経済政策・経済運営を歪める結果を招いている。 デフレの期間は23年ではなく、長めにとっても1999年末~2012年末の13年間だが、2002~2007年には戦後最長の景気拡大を達成し、企業収益も悪化するどころか絶好調