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経済

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2020年12月の記事一覧

「コロナ課税」は百害あって一利なし

国民に誤った財政の認識を植え付けるマスメディアの有害さを示す記事である。「時事通信社入社後は浦和支局で警察を担当した以外は一貫して経済畑」でも財政・金融の基本を全く理解していないことがよくわかる。 これにより21年度末の国債発行残高は990兆3066億円と、1000兆円の大台目前となった。この借金返済は孫やひ孫、玄孫の代になっても圧し掛かり続ける。 赤字を後代に押し付けたままにするべきではないとなれば、対処方針を示しておくのが我々の世代、政権の責務でもある。 例えば、東

大阪市は成長していたのか

「大阪の成長を止めるな」は大阪市廃止派のスローガンだったが、そもそも大阪市は経済成長していたのかを内閣府「県民経済計算」の1人当たり県民所得で確認する。 大阪市の1人当たり市民所得は1993SNAから2008SNAへの変更によって大幅に変わっているので、ピークの2007年度=100とした指数で比較する。 大阪市は全県計を大きくアンダーパフォームしている。 橋下徹市長就任(2011年12月19日)後のパフォーマンスも他の主要都市に比べて見劣りがする。これを「成長している」

反緊縮派の日銀批判の妥当性

先日の記事の続編。要点を先に書くと、 リーマンショック後に米欧の中央銀行に比べて日本銀行の金融緩和が不十分だったように見えるのは、米欧では「取り付け騒ぎ」対策が必要だったが日本では不要だったため。日銀は景気対策として利下げしているので漫画の「『注視』するだけでほぼ手を打たなかった」は事実に反する。 「翁-岩田論争」は、当時、日銀スタッフであった翁邦雄と上智大学教授であった経済学者の岩田規久男との間で行われた論争である。 この論争が始まった時、おそらく日本の債券市場で実務

過去最大の「ワニの口」は杞憂

コロナ不況対策で国の財政の「ワニの口」が拡大したことを懸念する記事(⇩)だが、財務省の見通しの数字は杞憂であることを示している。 2020年度の一般会計歳出は国債の借り換えに回る債務償還費を除いても160兆円と、2010年代の80兆円強の2倍近くに急増し、2021年度も90兆円を上回ることになる。この歳出を賄うための新規国債発行額も2020年度は空前の110兆円超、2021年度も2013年度以来の40兆円超となる。 2021年度末の普通国債残高は990兆円に達する見通しだ

日銀批判の漫画の歴史修正

漫画家がいい加減な知識に基づいて歴史修正しているので検証する(「国債を出さない→円高」のメカニズムはさておく)。 「リーマンショックにおいて日本は財政政策を誤り」「この時は日銀の所為でしたが」も意味不明だが、リーマンショック(2008年9月)の翌年度に政府は大幅に財政を拡大している。 リーマンショック後に米欧の中央銀行が金融機関の連鎖破綻を防ぐために流動性を大量供給して超過準備を激増させたのに対し、日本銀行は増やさなかったことを批判しているようだが、それは当時の日本の金融

イタリアは「改革」の反面教師

先日の記事でも示したが、2005年→2018年の1人当たり実質GDP成長率が主要先進国の中でギリシャに次いで低いのは日本ではなくイタリアである。 イタリアには放漫財政や硬直的な経済構造(→構造改革の遅れ)のイメージがあるかもしれないが、下の記事は現実はそうではないことを指摘している。 7つの中でも特に日本の参考になるのがこれである。 5. Italy has carried out many market-liberal reforms ‘Structural ref

日中経済比較

日本の外国敗北の背景に圧倒的な経済規模の差があるとの分析。 記事にあるIMF予測のGDPから世界シェアと対日本比をグラフ化する。2025年には中国は日本の4倍弱になる。 王毅外相が尖閣を中国の領土としたのに対して日本がその場で反論しなかったことを中国は外交勝利と狂喜している。GDP規模が2025年にはアメリカの9割に及ぶとしたIMF予測を背景に中国は強気に出たのだ。 中国の強気の背景にはGDPというマクロに加えて企業レベルのミクロもあると考えられる。 日本を代表する企

企業が「内部留保」を吐き出さない理由

この記事の「内部留保」は待機資金の意味だが、吐き出せない第一の理由は危機的状況がいつまで続くか予測不能だからである。 第二の理由は、経済産業省の「伊藤レポート」にあるように(⇩)、内部留保は最低限8%を上回る利回りで運用しなければならないからである。 資本主義の根幹を成す株式会社が継続的に事業活動を行い、企業価値を生み出すための大原則は、中期的に資本コストを上回るROEを上げ続けることである。なぜなら、それが企業価値の持続的成長につながるからである。この大原則を死守できな

『マンガでわかる 日本経済入門』は粗雑すぎる

中野剛志は素人を釣るために「嘘も方便」と割り切ってこのような主張をしているのかもしれないが、誤った認識は誤った対応を招く危険性があるので、反知性主義の素人ホイホイ的な言論活動は止めるべきである。 これではリフレ派と大同小異である。 インフレ(需要>供給)になると、経済は成長するということです。 デフレ(需要<供給)になると、経済は成長しなくなるのです。そのためには、日本経済を成長させるためには、まずはデフレやディスインフレを脱却し、インフレにしなければなりません。 「