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経済

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2020年3月の記事一覧

「零細企業の低賃金が経済全体に拡散する」原因

「零細企業の低賃金拡散現象」の本質である労働生産性について深掘りする。以前の記事と内容が重なることをお断りしておく。 零細企業が、低賃金労働供給のプールになり、限界的に賃金を抑える機能を果たしていることになる。 零細企業の低賃金が経済全体に拡散する現象だ。「賃金に関して、日本経済全体が零細化する」と表現してもよい。 問題の本質は、非正規の低い賃金でしか採算が取れないほど日本企業の生産性が低下したことにある。 生産性向上に真剣に取り組むことこそが、賃金問題の根幹だ。

なぜ給料が上がらないのか?

最近よく見かける「気鋭のデータサイエンティスト」だが、経済の知識が足りないようで、真実を明らかにできていない。 気鋭のデータサイエンティストがそうした視点で統計データを分析・検証する。結論として示される数字だけではなく、その数字がどのように算出されたかに目を向けて、真実を明らかにしていく。 この記事に欠けているのは企業の利益との関係である。内閣府「国民経済計算」と財務省「法人企業統計」からは、賃金が上がらない直接的要因が労働から資本への分配構造の変化であることが見て取れる

経済学者の「新しい発展」モデルの荒唐無稽

経済学者が煽った構造改革が荒唐無稽なことがよくわかる記事である。 中国はさまざまな点で日本と条件が違いすぎるので、日本は中国をモデルにすることはできません。また、すべきでもないでしょう。 しかし、アイルランドをモデルにすることはできます。 例えば、道州制を導入し、全国を5つの道と州にしたとすれば、一つはアイルランドと同じくらいの面積になります。これらの各々に独立国並みの自由度を与えることとすれば、新しい発展が期待できるかもしれません。 アイルランド経済は2018年には純輸

アイルランドのリープフロッグは日本再生のモデルになり得ない

アイルランドの猿真似が日本再生の最後の手段になり得ないことを検証する。 2018年のアイルランドの一人当たりGDPは、ドイツに比べても1.6倍です。「ヨーロッパで経済パフォーマンスがもっとも良好なのはドイツ」と思っている人は、是非、認識を改めてください。 さらに驚くのは、アメリカに比べても1.2倍になっていることです。 しかし、購買力平価換算の1人当たり家計最終消費支出はアメリカ、ドイツ、日本よりも少ない。 次に、EU諸国についてEurostatの統計で比較すると、アイ

日本の生産性は韓国に追い抜かれていない

この記事の数字は嘘ではないが、解釈は大袈裟でミスリーディングである。 日韓比較記事で比較されているデータをグラフで示す。いずれも購買力平価(日本は1ドル=104.6円)で換算した米ドル表示。 1人当たりGDP 記事では「労働生産性」とされている就業者1人当たりGDP 労働時間当たりの生産性では韓国に追い抜かれていない。 この記事では購買力平価についてこのように説明しているが、これは「相対的購買力平価」のことであり、 購買力平価とは、「ある時点を基準時点とし、そのと