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経済

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2019年6月の記事一覧

日本経済衰退の嘘と誠

消費税率引き上げに反対する積極財政派の代表的論客の藤井聡(京都大学大学院教授)は、著書『「10%消費税」が日本経済を破壊する』で 今、日本が成長できない真の理由は、「今の日本人が、日本経済について根本的に間違った『物語』を信じている」というものであった。[p.188] 筆者はまずは、本書の読者だけでも、そんな「物語転換」を果たしてもらいたいと、切に願っている。 そして、それが叶えばぜひ、読者の周りの方の「物語転換」を促してもらいたい。それはSNSやブログなどを通して、ある

預金と信用面の対応が示す「国債残高1000兆円は適正水準」

「財政再建を急がなければならない」という主張は「財政赤字の継続→国債残高が巨額に増→悪性インフレを招来」という因果関係の理解に基づいている。日本銀行「資金循環」の速報値によると、2018年度末の国債・財投債残高は1000兆円を超えているので、このロジックに従うと財政再建待ったなしの状況と言える。 しかし、その前に考えなければならないのは、悪性インフレを引き起こすのは国債そのものではなく市中のマネーだということである。 マネーは市中銀行と中央銀行の信用供与(貸出や資産購入)

消費税の影響について統計で嘘をつく京大教授

財務省の緊縮財政路線に反対する論客の一人が「京都学派」の藤井聡だが、 新たな警戒対象として財務省が意識するグループもある。「京都学派」。京大教授で安倍ブレーンの内閣官房参与を務めた藤井聡と、京都選出の西田昌司自民党参院議員を、予算編成を担う主計局ではこう呼ぶ。 その主張が「嘘・大げさ・紛らわしい」だらけであることをこの記事から検証する。 下のグラフをご覧頂きたい。 これは1世帯あたりの消費支出額の推移を示したものである(総務省発表資料より、各年一月分のデータに基づき藤井

財務省を批判する「京都学派」の正体

緊縮財政路線に反対する「京都学派」の主張は、日本経済に関する誤った認識を拡散する有害なものと言わざるを得ない。 新たな警戒対象として財務省が意識するグループもある。「京都学派」。京大教授で安倍ブレーンの内閣官房参与を務めた藤井聡と、京都選出の西田昌司自民党参院議員を、予算編成を担う主計局ではこう呼ぶ。京都学派とは本来、戦前に活躍した哲学者西田幾多郎らのグループを指す。片や、公共事業の大幅積み増しを主張する藤井と西田昌司は、安藤らの理論的支柱だ。財務省が真に「最強官庁」だった

「国の借金」が1100兆円を超えても国債金利が低い簡単な理由

国の借金は増えるが金利は下がるいわゆる「国の借金」が1100兆円を超え、ジンバブエのように国債金利やインフレ率が高騰して制御不能となる「財政破綻」が懸念される一方で、 国債金利は史上最低水準に低下している。2013年以降は日本銀行の量的・質的金融緩和とマイナス金利政策によって押し下げられているが、それ以前から10年国債金利は1%を割り込んでいたので、日銀の介入がなくても低金利が継続していることは間違いない。 「債務が増えるのに金利が下がる」という一般常識に反する事態が生じ

もはやデフレではない

ベストセラーの『FACTFULNESS』には「10の思い込みを乗り越え、データを基に世界を正しく見る習慣」「賢い人ほど世界の真実を知らない」とあるが、 これは消費税率引き上げ反対&積極財政を主張するMMTerに当てはまるようである。 彼らによると現在の日本経済はデフレの状況にあるとのことなので、 「いま、日本経済は成長できずに衰弱していくデフレの状況にあります。デフレ不況から脱却する前に消費増税を行えば、破壊的な経済被害をもたらします。消費が著しく低迷し、国民の貧困化が