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新型コロナウイルス感染症(COVID-19)について。 No.8


COVID-19流行の現状、あるいは政府専門家会議の考えていることがあまり国民に伝わっていないように思う。極めて重要なことであるのに。専門家会議には、能力の高いサイエンスコミュニケーターが必要だと思う。

私も個人的に、現状をなるべく分かり易く伝えようとしてきたが、下記URLにある吉峯さんという弁護士の方の解説は極めてよく書けている。科学的に物事を理解し考えることに理系も文系も無いことが良く判る。

https://note.com/kyoshimine/n/n6bf078a369f9?fbclid=IwAR3TssnCW5XtQMJN07-cWyi2yWdVPygWYwEaaTl5g5qAMf6ZcBbfhaxLGSU

非常に科学的な文章であるが長いので、それをさらに要約しかつ私自身の見解も織り込みたい。親ガメの背中の子ガメの上の孫ガメみたいなもので恐縮だが。

・準封じ込め

これまで再三述べているように、我々は新型コロナウイルスSARS-CoV-2感染の封じ込めに既に失敗している。しかし、爆発的感染拡大には至っておらず、それは偶然では無く恐らく我が国では「準封じ込め」と吉峯弁護士が呼ぶ戦略がぎりぎりのところでうまくいっている可能性が高い。

この準封じ込めとは、専門家会議がクラスター対策と呼ぶものである。クラスターという一般には聞き慣れぬ用語だが、かたまり、集団といった程度の意味だと思ってよい。クラスター対策を理解するには、SARS-CoV-2の特異な性質を知る必要がある。

・SARS-CoV-2の特異な性質

1)一部の感染者が大規模な2次感染を起こす
例えばインフルエンザは感染者が他の人に移す率がほぼどの人でも同じなので連続的に感染が拡大し、最終的に日本全国にくまなく感染が拡がる。一方SARS-CoV-2は、ほとんどの感染者が他人には移さないのに、一部の人が大量の2次感染を起こす。つまり飛び飛びに伝播する。少数の感染者が引き起こす大規模二次感染をクラスター感染と呼ぶ。なお、どういう人がクラスター感染を起こすのかは現在のところ不明である。

2)日本では理由は不明だが、他人に感染させる率が低い
ひとりの感染者が他の人を何人感染させるかの平均値を、R0(基本再生産数)と呼ぶ。日本ではなぜかこの値が今のところ低い。検査数が少ないためそう見えるわけでは無いことが吉峯弁護士の説明中にもある。私は、ウイルスの変異による弱毒化が起こっている可能性があると考えているがこの問題は後日扱いたい。理由は不明であるがこのR0値が低いためクラスター感染の規模がそれほど大きくなく、クラスター対策が可能になる。

3)クラスター感染には3つの条件の重なりがある
既によく知られている3条件だ。北大医学部衛生学教室の西浦教授らの解析で発見された。換気の悪い密閉空間+多くの人が密集+手を伸ばしたら届く範囲での会話や発声。この条件も学術的な説明は今後の研究を待たねばならないが、経験則的に割り出された。ここでしばしば、誤解されているのが3条件のどれかひとつでも該当すると駄目なのかという点である。3条件が全て揃うとクラスター感染の危険があるということである。
満員電車では、今のところクラスター感染は確認されていない。条件1と2が該当するが、3がないためだと考えられる。
クラスター感染に、これ以外の条件がある可能性は当然考えられる。

・クラスター対策について

クラスター対策とは、クラスター感染の発生阻止と、その早期発見・早期制圧である。
大阪のライブハウスで発生したクラスターは、早期に発見され制圧できた。全国で散発したクラスターもいずれも現時点では制圧できている。
クラスター感染発生阻止には、まず第一に個人個人の手洗いや手指や物の消毒が重要で、かつ上記3条件の重なりを避けることである。日本におけるR0の低さが、この程度の「軽い」対策で感染爆発を防ぐことを可能にしている。

SARS-CoV-2には、もうひとつ特徴がある。若い人の重症化率が低いことと、不顕性感染(感染しても症状が出ないこと)が多いということだ。これらが意味することは、検知されないクラスター感染が起こる可能性であり、また若い人から高齢者への感染のリスクが高いということだ。

検知されないクラスター感染は危険でありそれを防ぐには、個人の意識の高さに頼るしか無い(若年者大量検査が功を奏しないことは、吉峯弁護士が詳しく述べている)。特に若い人が、自分はかかっても風邪程度だから良いと考えずに、手を洗い消毒し、密室・密集・密接の3条件が重ならないように心がければ日本を救うことができるのだ。

イタリアの感染爆発の背景には、親や祖父祖母と同居している若者が多いという事情もあったと推測している科学者もいる。私たちが、同居の有無にかかわらず、高齢者の親族や知り合いに接する際に感染防止を強く意識すれば、愛する人々を失わなくて済む。

・個人の意識の後退

R0が何かの理由で上昇したり、クラスター感染の阻止に失敗しメガクラスターが発生すると、ごく短い期間(1−2週間)で感染爆発が起こり、欧米のような都市封鎖、外出禁止、商店・会社の操業停止が我が国でも現実のものとなる。我々は紙一重の状況にいる。

私はこれまで過度に恐れる必要はなく過剰な自粛は社会の閉塞と経済的破綻の原因となるので、感染による直接被害と自粛などによる間接被害の総和を最小化することを目指そうと言ってきた。それは現状では可能である。手洗い・消毒と3条件の回避。それほどストレスなく実行可能である。

今は、逆に感染防止に対する個人の意識が後退することを恐れる。人間は私を含め、最初は過剰に反応するが時間が経つと慣れが生じ不安も感じなくなる。感染者数もびっくりするほど増えてないし、もういいのじゃないかと。

しかし今まだ我々は崖っぷちにいる。イタリアやアメリカに在住する人々の生々しいレポートに触れると、我が国における安穏とした日々は奇跡のようだ。ウイルスと闘ってくれるアベンジャーズやジェダイはいないが、私たちひとりひとりが、日本を悲惨な状況に陥らせない守護者・ヒーローなのである。感染爆発を避けることは、政治的立場を問わない国民に共通の利益であることを認識しよう。

多くの人に伝えたいので、是非シェアを。

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