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細胞老化の仕組みの一端を解明

ラボメンバー達が頑張ってくれて、最近次々と研究成果を論文として報告でき喜ばしい限りである。今回は、細胞老化とオートファジーの関係を明らかにすることができた。(大学のプレスリリースはこちら。)

人間は細胞からできている。従って皆さんは細胞が老化するから人間も老化するのだろうと思うかも知れない。しかし細胞は種類によって寿命が異なり、多くは人間(個体)よりずっと寿命が短く、一生の間に新しい細胞と入れ替わっているから、細胞の老化イコール個体の老化ではない。

また細胞老化は細胞分裂の不可逆的な停止や特別な因子の放出などの独特の定義があり、個体老化とは次元の異なる現象だ。実際英語では個体老化がagingなのに対して、細胞老化はCellular senescenceと違う言葉を使う。

一方で両者は密接に関係もしている。老化細胞が増えると個体老化も進むのだ。そして老化細胞を殺して減らすと個体老化を抑制できることが最近分かってきた。つまり老化細胞だけを殺す薬剤があれば、抗老化薬になる。セノリティックドラッグと呼ばれるそのような薬剤の開発が世界中で競争になっている。

我々は、Rubiconというオートファジーのブレーキ役のタンパク質が増えてオートファジーが低下すると細胞老化が起こることを発見した。そして、さらにRubiconを増やすスイッチになるタンパク質も見つけた。

随分マニアックな話だと思われるかも知れないが、このようにして少しずつ細胞の仕組みを解き明かし理解することで、どこを狙えば良い薬ができるかなどが分かり、将来(それも比較的近い将来)役に立つ。またそれ以前に、人間の本能とも言える「自然のより良い理解」を進めることができた。

それは小さな一歩だが、人類は科学の営みを通して、小さなレンガを営々と積み上げ壮大な知の伽藍を作り上げてきたのだ。それに貢献できることが研究者の悦びであり誇りだ。我らは煉瓦職人なり!


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