見出し画像

新型コロナウイルス感染症(COVID-19)について。 No.12

英国に住む公衆衛生学者の渋谷先生と言う方のコメントを読んで、私が思ったことを書きたい。 https://newspicks.com/news/4805047/body/

このコメントを読んで始めって知ったのだが、中国ではPCR検査をどんどん行い、感染者をアプリで徹底的に追跡するという最先端のテクノロジーを駆使した方法が取られたが、日本では追跡は保健所職員による聞き取りで、保健所とクラスター対策班とのデータ共有はファックスとのこと。

このファックスというのは衝撃的だ。この御時世に… 『クラスター班に集められた、疫学が専門の優秀なポスドク(博士研究員)たちは、データの解析ではなく、FAXの内容をデータ化するための入力作業という「前処理」に、大幅な時間を取られている。』(渋谷氏のコメントから) なんということ。今後のためにも絶対に改革が必要だ。

専門家委員会の見解と対策が、全て実証されていない仮説の上に立っているという指摘は、私も感じていたことだ。ただ、私は、実証する時間がないなかで、専門家委員会は健闘していると思う。対策に関する事後の解析は必須だが、この場合は責任論にすべきではない。そもそも日本には専門家が少ないことに問題がある。

私は以前に、専門家委員会には心理学、社会学、経済のエキスパートも加えるべきだと書いた。渋谷氏も経済行動学の専門家を入れて、『行動経済学的にどのようにメッセージを出せば人がどう動くか、といった知見が加われば、もっと良い発信ができるはずです。』と述べている。この点については、最近専門家委員会に大阪大学の大竹文雄教授が加わったことは朗報である。大竹先生は、著名な行動経済学者で、人の行動を左右する要因の実践的研究をされている。

印象深かったのが、パンデミック対策の基本が戦争や大災害と同じであり、インテリジェンスとロジスティクス・オペーレーションとシナリオ分析が不可欠であると言う視点だ。インテリジェンスは検査データ確保による正確な現状把握であり、ロジスティクスとは軽症者の施設療養の体制など、シナリオ分析は想定外を想定すること。全くその通りで、我が国政府にはこのような視点が欠けているように思われる。

そして最後に渋谷氏は、私も前回のnoteに書いた、都市封鎖は強制力のあるなしの問題では無いということを述べ、各個人の自覚を促している。『研修医が飲み会をして感染が拡大したといった、スキャンダラスなニュースが出るたびに、「馬鹿な人が感染を広げている」と、他人事になってしまう懸念は募ります。』ひとりひとりがこれまでの日常的な対人接触をぐっと減らすことが今のフェイズでは重要だ。

自分の知り合いに感染者がいないと、感染する人は全人口に比べれば僅かだし、感染しても皆が重症化するわけでもないから、自分は感染しないし、しても重症化しないと思ってしまいがちだ。前にも述べた「自分だけは」と言う心理、正常性バイアスだ。感染しても構わないと言う人さえいる。

しかし、あなたが構わなくても、あなたが感染させた人からさらに感染が拡がりその中に亡くなる人が出るかもしれない。あなたや私が気をつけることで、死ななくて良い人の死を回避できるのだ。そう思えば対人接触を減らすことの意味が理解できると思う。

インフルエンザで毎年沢山死者が出ているのに比べたら大したことは無いと言う議論も間違っている。既にインフルエンザで死ぬ人が沢山居るのだから、もうこれ以上死者は出したくないし、そもそもSARS-CoV-2の感染拡大を放置したらインフルエンザより遙かに多くが死ぬ。このウイルスの恐ろしさを過小評価してはいけない。

しかし対人接触減の意義を理解できても、所属する組織が普通に稼働していたら勤め人はどうしようもない。トップの認識と決断が必要だ。もちろん休んだら潰れてしまうと言う切実な企業もあるだろう。その救済は国の仕事だ。難しいことは重々承知しているが、是非知恵を絞って欲しい。

なおここで言う対人接触減は、家から一歩も出るな、誰とも会うなと言うことではない。短期間ならともかくウイルスとの闘いが長期戦になったときに、それでは別の病気になってしまう。前回に書いた通り、バランスをうまく取ろう。 https://note.com/prof_a_hill/n/n12ea1fae683e 

シェアはご自由に。

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?