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新型コロナウイルス感染症(COVID-19)について。No.3

注:本記事は3月6日にFBにアップしたものを転載した。

繰り返すが私は細胞生物学者でありウイルス学は専門ではない。しかし今回新型コロナウイルスが大きな問題になっていることで少し勉強した。コロナウイルスに詳しいウイルス学者にも話しを聞いた。

実はコロナウイルスについては既知のものでも不明な点が多く、ましてや新型となるとほとんど実態が判らないので、本当の専門家は不正確なことを言うのを嫌って沈黙してしまっているか、発言がマニアック過ぎて一般の人には理解不能になっている。(テレビに出ているコメンテーターの多くは、私程度かそれ以下の門外漢である。)しかし今回のような感染症の脅威下では、推測であっても、確度がより高くかつ論理的な情報は一般の人々に共有されるべきだと思うので、私が知りえた情報からそのようなものについて、3回目ではあるがまた発信しようと思う。

・危機は回避できる
COVID-19流行に対する政府の要請もあって、休校や集会の自粛が始まり日本全体を大きな不安の陰が覆っている。確かに、感染力が強く重症化すれば死に至る場合もあるウイルスの脅威に晒されているのは事実であり、人類が初めて遭遇するウイルスであるため先行きが完全には読めないことが焦りを生む。
しかし、初期の封じ込めに失敗し国内感染期に入ったとは言え、今後科学的に適切に対処すれば、爆発的感染拡大により医療崩壊と多数の死者をうんだ武漢の悲劇には陥らない。

・感染拡大のスピードを抑制する
感染のある程度の拡大は恐らく止められない。だが政府の専門家委員会が言うように感染拡大のスピードを減じれば、重症者が出ても手厚い医療を施し救命することができ、多くの感染者は無症状ないし軽症で終わって流行は終息することが期待できる。我々はそのようなソフトランディングを目指すことになる。感染スピード減により感染のピークをなるべく低くかつ後ろに持っていきたい。

・感染により免疫ができる
新型コロナウイルス(SARS-CoV-2)の近縁の他のコロナウイルスは、持続感染したり再感染したりすることが知られているのでSARS-CoV-2でもそれは起こるかもしれない。しかしそれは免疫ができないことを意味していない。中国CDCのレポートによれば、回復した人の血液中にSARS-CoV-2に対する抗体ができていることが確認されている。
免疫は抗体だけでは無く細胞性免疫もあり、かなり複雑なシステム=系だ。コロナウイルスの仲間が原因のSARSやMERSが収束した理由は未だに不明だが、免疫系によって収束したと考えるのが最も妥当性が高い。
すなわち、持続感染や再感染で重症化するケースはレアで、多くの人では感染しても免疫系が作動しウイルスの排除に成功したのだと思われる。そういった場合、集団免疫が成立する。集団免疫とは、免疫を持つ既感染者が増えて免疫を持たない人の周りに免疫を持つ人の壁ができ感染しなくなる現象である。かなりの確率でCOVID-19の流行もそのようにして収束すると思われる。
なお、再感染性があるとインフルエンザのように毎年流行するといったことは起こりえる。COVID-19がそうなるかは現時点では全く不明である。

・感染抑止の主役は各個人である
個人個人が感染抑止に努めることで感染拡大のスピードを抑え、医療機関がパンクすることを回避し、重症化しやすいハイリスクの高齢者や基礎疾患のある人が感染しないようにすることができる。
コロナウイルスは空気感染ではなく、接触感染と飛沫感染で伝播していく。ウイルスを含む飛沫が付着したところを触って、さらに粘膜(口や目など)を触ることが大きな感染原因になる。従ってこまめな手洗い、タオルや食器の非共有、ドアノブなどの消毒(70%エタノールなど)などで感染をある程度防ぐことができる。ハイリスク者と同居している人は、特に注意が必要だ。マスクは他人への感染を抑制できるが、感染防御にはあまり役立たない。恐らく手洗いが最も有効で最も重要である。

・PCR検査に代わる検査方法が望まれる
テレビなどではPCR検査の話題が大きく取り上げられているが、この検査方法には欠点があることに留意すべきである。PCRそのものは、多くの生命科学系研究室で行われるポピュラーな実験手技で私の研究室にも装置が複数台ある。遺伝子を確認するには優れた手法だが、検出感度は十分に高くなくウイルス数が少ないと検出出来ない。
つまり偽陰性がかなり出る。また擬陽性もありえる。従って1回の検査で診断は確定しない。PCR検査さえすれば良いと言うことは無い。
しかし感染の有無の確認自体は、突然の重症化に備えるためにも(ハイリスク者で無くても重症化する場合があるし、発熱を伴わない重症化例もある)、感染の広がり方を理解し対策を立てるためにも重要である。
シンガポールの研究グループが、COVID-19の血清学的検査に成功したというニュースが入ってきている。実用化できれば、インフルエンザウイルスのように迅速な診断が可能になるので期待したい。この検査では回復していてウイルスが排除されていても過去に感染したかどうかが確認可能である。

・過剰に恐れる必要は無い
SARS-CoV-2の親戚であるSARS-CoVの場合、感染流行の終息に6ヶ月かかっている。COVID-19の流行も数ヶ月に及ぶかもしれない。しかしひとりひとりが感染防止を意識することで、感染拡大のスピードを減じてウイルスとの闘いに勝つことはできる。決して負け戦では無い。
相手はエボラウイルスのように致死性が極めて高いわけではない。パニックになる必要も暗い気持ちになる必要も無い。長期戦になるかもしれないので、それに持ち堪えるためにも、過剰な自粛はしない方が良いと私は思う。精神と経済の萎縮は避けるべきだ。感染防止に細心の注意を払いつつ平常心と気持ちの余裕、そして他者への思いやりを持つことが対ウイルス戦争で勝利するために必要なことであろう。

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