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新型コロナウイルス感染症(COVID-19)について。No. 20

同僚である大阪大学核物理センター長の中野貴志教授が、自ら考案したCOVID-19流行の指標K値についてネット上で一般向けに分かり易く説明するそうだ。興味のある方はどうぞ。

中野先生の講演は下記要領で行われる。

2020年7月13日(月) 19:00 - 20:30
参加費:無料 / YouTube Liveで配信 ※視聴URLはお申し込みされた方へご案内いたします。
受付締切:2020年7月13日(月) 18:00
申込みはこちら。
https://kc-i.jp/activity/feature/virtual-springx/cho_vol004.php

このK値については、興味深い現象が見られた。学術的な批判では無く、感染症のことを知らない物理学者が余計なことをするなとか、医師免許が無い者がすべきことではない、といった意見(言いがかり?)があちこちから出たのだ。

K値は感染症の知識がなくても、いやむしろ無かったから導き出された。科学におけるブレイクスルーはしばしば分野外の研究者によってなされる。ある発見が科学的により真実に近いのかどうかは、誰が考えたのかではなく、科学的な検証によって判断されるべきである。

医師免許云々に至っては、話しにもならない。私は理学部出身で医師免許を持っていないが、医学博士の学位を持ち医学研究を行い医学部で教育している。医師免許を持つということは一定の医学教育を受けたことを示すが、医師免許授与の目的は患者に処置できる技術の担保であり、科学としての医学と医師免許はイコールでは全く無い。医師免許を持っていたら医学的なことを何でも知っているわけでは無いし、医師免許が無くても医学を語ることはできる。

餅は餅屋という言葉があり、それはしばしば正鵠を射ている。しかし、餅屋には餅の全体像が見えないこともある。物理学のような抽象性の高い学術分野は、専門家にはかえって困難な、要素の抽出を時として可能にする。餅屋の餅より優れた餅ができてしまうことがあるのだ。

なお中野教授は、物理学の世界では権威ある仁科賞も受賞されている我が国を代表する物理学者のひとりであり、すでに名誉も地位もお持ちである。K値を広めようとされているのは、功名心のためでも何でも無く、ただただ行き過ぎた自粛を避け、感染拡大阻止に適切な対策が講じられるようにK値を役立てたいと言う一心に他ならない。

もちろんK値には、これから学術的な議論と検証が必要だ。特に感染拡大収束がなぜこのような2重指数関数になるのか、理由の解明が望まれる。しかし実効性があればもう使っていけば良い。K値だけで判断するのでは無く、他の指標も勘案していけば、もし仮にK値に欠陥があった場合にもリスクは回避できる。

ちなみに、7月7日現在全国で増加傾向にある感染者数は、K値からの予想曲線によれば数日中にピークアウトするものと思われる。もしそのように推移すればK値の信頼性は増すであろう。(注:東京の新宿区などで現在集中的なPCR検査が行われており、まるで感染者数を維持しようとしているかのようであるが、そのようなケースではK値は適用できない。)

スライド1

このグラフは中野先生が作製された。指数関数モデルは、メディアで「専門家」が「このままでは4週間で6倍になる。」と述べたことを表している。

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