見出し画像

Part1【解説】白雪千夜のこれまでとこれから

【この記事について】

2022年2月28日をもって、白雪千夜がシンデレラガールズに登場して3年が経つ。千夜は、この3年間で様々な経験を通して変化し成長してきた。
そして、その変化と成長は、3年を迎えた今がちょうど区切りと言えるタイミングである。
この記事では、白雪千夜の3年間の活動から彼女の人物像に迫っていく。

1.喪失

千夜の過去は、現在の彼女を形成する上で欠かせないものとなっている。
まずは白雪千夜の過去について見ていこう。

白雪千夜は、12歳の時に家族を喪っている
その後、黒埼の家に引き取られ、ちとせの「僕」になった。

それ以前の千夜は、ちとせとも友人の仲であったことも語られており、この「家族を喪った」という出来事を境に、千夜の人生と価値観が決定的に変化したとも言ってよい。

「あの頃の私たちはまだ、ただの友だちで…お嬢さまは銀世界に遊ぶ、無邪気な少女で…私は…自分のことは、覚えていません。」

[ひとり、時は過ぎて]特訓エピソード

「喪失」は、白雪千夜を捉えるうえで重要なワードのひとつである。

「全てはいつか喪われるもの。遅かれ早かれ、いつかは…」

デレステ白雪千夜 ホーム
Fascinateイベントコミュ3話

2.無関心

ここからは登場したカードに触れつつ彼女の人物像とアイドルとしての物語を解説する。

当時の千夜の性格を一言で表すなら「無関心」である。

千夜はあらゆる他者(ヒトだけでなくモノ、コトも指す)に対して無関心な態度をとる。唯一、黒埼ちとせを除いて。
必要以上に仲良くなることをしなければ、仲を悪くするようなこともしない。好きと嫌いを数直線で表すなら、常に0で居続けようとする。
モノに対しても同様である。自分のものは必要最低限にとどめているのだ。

ここは騒がしい…私の自室には何もないから、余計にそう思う…

デレステ白雪千夜+ ルーム

ちとせ「そういえば、前の寝間着はどうしたの?」
千夜「捨てましたよ。お嬢さまからもらったアレがあれば十分です」

Fascinateオープニング
メモリアルコミュ3話


なぜ無関心を貫くのか

なぜここまで極端に無関心であるのか、それは先述した喪失が要因になっている。
持たなければ、喪うこともない。それが喪失から逃れるための唯一の手段である。
自分の最も近くにいた家族でさえ簡単に喪ってしまうこの世界で、何かを求めたり、関心を持ったりすることは無駄である、というのが彼女の考えだ。

お嬢様との穏やかな日々は、変わらない速度であればいい…

[ホワイト・ロワイヤル] マイスタジオ

すべてが、変わらず穏やかで美しくあればいい。それが、私の願い

[君のステージ衣装、本当は…]+ ホーム

何も求めず、ただひたすらに黒埼ちとせに従って生きてきた千夜にとって、「アイドルになる」というのは非常に大きな変化であったと言える。昨日と同じ今日を求める彼女にとって、目まぐるしく日常が変わるアイドルとは正に彼女の価値観と相反するものと言えるだろう。

[Fascinate]特訓エピソード


3.認知

無関心を貫く千夜にとって、個性派だらけのシンデレラガールズは様々な変化を生じさせるものとして十分な場である。
初登場の『Fascinate』以降、本格的に始まったアイドル活動は、彼女に他者の存在とアイドルという希望を認知させることになる。

『Unlock Starbeat』では、千夜の提案がより良い練習方法へと繋がったり、カメラを意識しすぎていることを指摘したりなど、合宿という環境が他者と深く関わる機会になっていることが分かる。

私の言葉が、他の誰かに影響を与えることなど、思い上がりだと考えていた…。でもそれこそが、自分は特別だという思い上がりなのでしょう。

[Unlock Starbeat]親愛度50

他人が遠慮なく私の内に踏み入り、平穏をかき回し、大きな波紋を残していく…合宿中はそんな日々です。何とも騒がしい。こんな環境を望んだことはなかった。
しかし、それ自体は不快に感じることもなくなりました。何よりも恐ろしいのは、この騒がしさに慣れてしまった、私自身の心の内です。
この時間が、この先もずっと続くというのなら…アイドルというものに対する向き合い方を、考えねば。私が…決定的に変わってしまう前に。

[Unlock Starbeat]親愛度100

そして、アイドルは白雪千夜に希望を見せる。
アイドルとしての素質ともいうべきものが明らかになっていき、千夜自身もそれに気付き始めたのである。

全力で演奏しながら、観客の声に応えること…いまの私なら、できる…!

この音は、お前がいなければ生まれなかった。…認めてやります、いまは

[Unlock Starbeat]+ ホーム

音が重なり、心が繋がる。私たちのメロディが生まれる。まるで魔法のような、信じがたい光景です。奏でる私自身が、何かを信じてしまうほどに…

[Unlock Starbeat]+ 親愛度200
TRUE COLORS 2Dリッチ

アイドルがであり希望であるということは千夜にとっても同じことだっただろう。
しかし、先述した通り、アイドル活動自体が千夜の価値観と相反しているのも事実である。だからこそ、このままではいられないのが千夜なのである。

4.対峙

アイドル活動を通して、千夜は仲間や経験、思い出など様々なものを得ることになる。

SSR[ひとり、時は過ぎて]では、彼女の喪失の過去をアイドルとしての魅力として捉えるものだった。それはつまり、「私に価値はない」と言う千夜に価値を見出すということである。

全てを失った私に、価値はありません。価値など、あってはならないのです。失った現在を…認めるなどあり得ない
認めた先に待つのは、さらなる喪失でしょう。これ以上、私の時を動かそうとしないでください。でなければ、私は…どう生きたらいいのか。

[ひとり、時は過ぎて]+親愛度200

得ることと失うことは切り離せないことである。千夜は、今まで避けてきた喪失、そして千夜自身の心の変化と否応なしに向き合わなければならなくなる。

『君のステージ衣装、本当は…』で千夜たちが演じたのは、友人との別れの物語である。友人との別れもまたひとつの喪失の形である。この仕事を通して、千夜の心も動かされる。

千夜「手放したものは戻りません。喪失を受け入れなければならない。ですが、私は…
奏「変わってきたわね、千夜。」
千夜「…貴方からはそう見えますか。」
奏「嫌?」
千夜「…答えを出す時ではないと思います。」
奏「ふふっ、そうね。でも、その気持ちは仕方がないと思うわ。」
千夜「…なぜ?」
奏「気持ちって、一度気づいたら抗えないの。どんなに綺麗でいたくても、取り繕おうとしても、無視することを許してくれない。
奏「でも…それでも認めたくなくて、足掻いて。そうやって意地を張るのよ、みんな」

君のステージ衣装、本当は… 3話

わからないし、理解しようとも思わない。…そう思っているのに、私は

どんな感情も…いつか、気付かなければ良かったと思う日が来るのです

[君のステージ衣装、本当は…] ホーム
[君のステージ衣装、本当は…]特訓演出

『君のステージ衣装、本当は…』の時点では、千夜は自身の気持ちに対する回答を保留している。
これに対し、本格的に向き合っていくのが『Drastic Melody』だ。

Drastic Melody 3話

このコミュでは、主に凛のアプローチに対して千夜が強い反発を見せる。なぜこのような反応を見せたのか、先述した通り、アイドルが変化を望まない彼女の価値観と反すること、そして向き合わなければならない現実に対する恐れが原因にあるからである。

凛「私たち、同じ事務所の、アイドルの仲間でしょ。支えあえば、どんな壁だって…。」
千夜「…仲間ですか。そういった括りに、私を無理矢理入れないでください。」
凛「無理矢理って、そんな…。」
千夜「仲間など、新しい支えなど…望みなど。…私には不要です。」
千夜「喪って、苦しんで…私の人生は、すでに終わったのです。もう何も求めたくない、何も望みたくない。望まなければ、喪わない。

Drastic Melody 2話

お前たちは、いつもそうだ。善良で温かく、いつも優しくて、正しい。そして無自覚なままに、差し伸べる手で私を傷つける。

Drastic Melody 2話

先述した通り、アイドルがであり希望であるというのは千夜自身も認めている。
それに手を伸ばすことは再び喪失を経験することと同義であり、だからこそ千夜は目を背けた。しかし、今やそれも限界なのである。
これについて千夜に思いをぶつけたのが涼だ。

涼「お前にだって、見えたはずだ。目を逸らすことなんて、できないはずだ。あの舞台の輝きを、お前はもう知ってるだろ?
涼「見えてないフリをしてたって、もうそいつは消えちゃくれないぜ。ステージで見る光ってのは…そういうものだからな
千夜「やめろ。私の心を勝手に語るな!そんなことで、知った風に…何もわからないくせに!」
涼「ああ、わかんねえさ!だから叫べよ、千夜!抑えつけて、否定して、何もかもを取り上げた、このクソったれな世界に!」
涼「奪われたままで、悔しくないのか!?少なくとも、アタシは悔しかったね!」
涼「そのままでいいのかよ、お前は!?」
千夜「ああ、構わない…!停滞したまま、移ろわぬ日々を過ごし、いつか終われるのならば、それで…!
涼「本当にそう思ってるんなら、いい加減こっち見ろ!アタシらの目を見てその言葉を吐いてみろよ!なぁ、千夜!」

Drastic Melody 3話

…やめてくれと懇願しても、引きずり出すのでしょうね。すべての者が光を浴びて生きることを望む、傲慢な生き方が。無理矢理に、私の針を動かす…残酷に、時を刻ませて。

[Drastic Melody] 親愛度100

『Drastic Melody』という楽曲は、自らの強い思いを叫ぶことがコンセプトになっている。そんな曲を共に歌うSirius Chordの一員に選ばれたからこそ、千夜は喪失と向き合う第一歩を踏み出せたのだ。

抑えきれない衝動をこの歌に乗せ届けよう
世界を動かすほど叫べ

Drastic Melody

声を揃え、旋律に思いのたけを乗せる…それが、共に歌うということだと教わりました。飾られた言葉を、自分の言葉として叫ぶのだと。
…やはりまだ、その意味は理解できていません。叫ぶたびに感じるこの衝動の、名前も。ですが、それでいいと言うのでしょうね。
不本意ですが…答えが得られるまで、歌うことにしました。その道行きに、つきあってもらいます。お前は私の…プロデューサーなのだから。

[Drastic Melody]+ 親愛度300
[Drastic Melody]特訓演出

幻妖公演について

『Drastic Melody』終了と同時期にモバマスで『幻妖公演 霧の中の迷い子』が開催された。
千夜が演じた神使は字義通り神の使いであり、現実の千夜の立場と重なる点がある。
劇中では、チヅルと友人になり、チヅルを元の姿に戻すのと引き換えにチヨとの記憶を消すという喪失を経験した。
この役について千夜自身からの言及は少ない。
しかし、喪失への恐れを乗り越え、自分が欲しいものに手を伸ばすというチヨの行動は、千夜自身の未来を示唆していると考えることも可能である。

ヨシノ大神「せっかく手が届く場所に欲しいものがあるのに…手放すのですかー?」
チヨ「…。」
ヨシノ大神「わたくしは嬉しいのですよー?神使の一体が、お友達を作ったのですからー。」
チヨ「いいのでしょうか…私が…友を得るなど…。」
ヨシノ大神「特に縛ってはいませんから、好きにするのでしてー。」
チヨ「!私…行ってきます!!」

幻妖公演 ステージ8

5.まとめ

以上、白雪千夜の3年間を簡単にまとめるとこのようになる。

  • 千夜は家族を喪ったことで、あらゆるものに対して無関心であろうとした。それは、得ることが無ければ失うこともないから、喪失を避けるためである。

  • アイドルになったことで、それまでの日常に揺らぎが生じる。
    千夜自身もアイドルに希望を見出す。

  • アイドルに希望を見出し手を伸ばすことは、喪失を経験することと同義であり、千夜は恐れを抱く。
    しかし、自分の気持ちに嘘は付けない。千夜は喪失と向き合う第一歩を踏み出す。

白雪千夜の物語とは、即ち喪失と向き合う物語であるというのが筆者の考えである。
シンデレラ的に言えば、魔法が解けることと向き合うことでもあるだろう。

この先、千夜が何を経験し、何を思い、どう進むのか、是非皆さん自身の目で確かめてくれれば幸いである。

この記事に関する質問、意見、指摘等々はTwitterまでhttps://twitter.com/tyuna_nico

Drastic Melody エンディング


いいなと思ったら応援しよう!