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第二次来店バブル到来で困窮者の大量生産待ったなし? 駆け出し来店演者の待遇問題を考える

最近、手取りが少なくて生活していけない来店演者の話でTLが盛り上がっている。

これに設定漏洩が疑われている人物の噂話も含めると、演者関連の揉めごとはキリがない。

「下位層で起きていることでしょ」と一括りに片付けられれば楽だろうが、パーラーフルスロットルの管理人"第二次来店バブル”と表現しているように今は供給が追い付かないほどの需要があるようだし、この類の問題は今後も表で裏で起き続けるだろう。

こうした状況に対して直ちに処方箋を出せるような立場や能力があるわけではなく、個人としては応援している演者を囃し立てるくらいことしかできない。
解決策については外野がどうこう言える話でもないので、当事者同士で考えてもらうほかない。それでも状況をある程度整理して記録しておくことくらいはできるので、この文章を書いている。

実際、この文章が当事者に届くことはまずないだろうが、自身の境遇に苦しむ人がもしいたらこの文章を読んで楽になれば良いなと願っている。
また、気が付いたらフリーランスになってしまった自分に喝を入れたい意図もある。

来店演者に憧れて目指しているような人、また実際に演者になった駆け出しの方々の役に立てれば嬉しい(具体的なアドバイスはほぼ書いていないけど)。

①単価は「需要と供給」では決まらない?

業界によっては「神の見えざる手」が働かないこともある。

まず演者の日給について。
すだちさん&くるみんさんがそれぞれ公表している単価(前者は40,000円、後者は実戦費45,000円)だが、個人的には安いとも高いとも評価しにくい。

自分が請け負っている動画編集の仕事よりは確実に高い。
特に駆け出しであればこれは圧倒的に高単価な仕事と言えるかもしれないが、何らかの数字(ホールや広告代理店が設ける指標)をクリアできなければコッテリと絞られるであろうことを想像するとやはり評価が難しい。

そもそも最低限の単価を取り決める同業者の組合が存在する様子がないので単価を押し上げるようなムーヴメントは存在しないはずで(演者も春闘やったら面白いのにね)、需要と供給で決まっているというよりは代理店もしくは媒体の一存で決まっている側面が大きいのだろう。

出世を果たしてノルマをゴリゴリこなせるようになり、多数の来店仕事を貰えるようになればそこでようやく単価の高さが活きてくるのかもしれないが、月に入る仕事が月2~3本では生活を成り立たせられないことは想像に難くない。

加えて、媒体から実戦機種の指定があり得ることも踏まえるとなおのこと「単価が高い」とは言いにくい。
演者とはつまるところ「しゃべるチラシ」であり、デジタルに管理可能な媒体(人間疎外だ!)だから、代理店としてはいくら持っていても損はないカードなのだろう。
ただしカード側からしてみれば、出番が少なければ少ないほど困窮するし、そこに媒体から「コイン単価が高い台を打て」なんて指示が入ろうものなら当然くたばるに決まっている。

単価が「需要と供給」では決まらず、場合によっては実戦機種に制約が入ることを踏まえると、少なくとも「えらい金貰ってんなあ」と評価するのはちょっと違うように思う。

②労働基準法では守られない存在になる

労働基準法とかいうつよつよな特別法。

これは業界慣行からの推測になるが、媒体(事業者)に対して雇用契約を締結し、従業員として働いている演者はほぼいないはずだ。

せめてスロパチステーションの演者陣くらいはさすがに有利な契約を結んでいてほしい。

あそこの事業部は、少し前にたしかカメラマン兼運転手の求人を出していたし、母体が大手企業なのでさすがにその辺りはしっかりやっていると信じたい。専属マネジメント契約なのか従業員としての契約なのかはあずかり知らぬところだけれども、あれだけ努力している人たちなのだからできるだけ好待遇で報われていてほしい(実際、しっかりと報われてように見えるが)。

一方で、各媒体の演者募集要項を軽くさらった感じ、駆け出しの演者はおそらく業務委託契約という形で契約を結ぶことになると思う。

演者個人と会社が業務委託契約を締結するということは、他に仕事があるにしろ実質的にその契約の中ではフリーランスになるということを意味する。フリーランスになることはつまり「労働基準法の外に出る」ことだ。

フリーランスは「Free(自由)」と「Lance(槍)」を組み合わせた言葉とする説がある。自前で磨き込んだ槍を構えて敵地に突撃するのがフリーランス、というわけだ。

駆け出しの演者はたとえ駆け出しであってもその契約形態から実質的にフリーランスになるわけだが、果たしてその手に持つ槍はしっかりと磨かれているだろうか? その辺で拾った木の棒を構えて突撃したところで結果は見えている。効力が強い労働基準法も、自前の槍を持ったフリーランスは保護してはくれない。

こう言うのは簡単だが、その手に持った槍をしてかまびすしい事業主と対等な立場で交渉できるくらいの手練れでなければ、フリーの演者業はとても務まらないだろう。労働基準法の傘の外に出る以上、己の槍を磨くのは必須の努力である。

③トップ層は時間外にすんげえ努力してる

いらすとやの「王様」の画像。ピン王にしか見えねえ。

いま、打ち手の気を少しでも引いて、長く活動を続けている演者やYouTuberは例外なく時間外に大量の努力している、と強く感じる。

大人数の集客もできるし、来店すればほぼ確実にメッチャ玉が出る(店舗が還元する)タイプの演者について、少なくとも自分はホールでの来客対応で手を抜いている場面を見かけたことがない。

なんなら実戦が終わったあともSNSでタコ負けした客をフォローしているし、ツイキャスあたりで一般ユーザーといろいろ喋ったりしている。夜になればスペースに顔を出していることもある。ずっと起きているように見えるから、正直「いつ寝てんの?」と不安になることもままある。

契約で縛られた時間外の活動で、少しでも多くのユーザーの来店動機を作るために努力しているのが見て取れるのだ。

冒頭に挙げた2名の演者とは別の人物が起こしたことではあるが、
たとえばAT機でフリーズを引いて何が起きたか分からず、LINEで助けを求めるようなことはまずない。

↑Sammy推しのフリー演者がこれやるの、ちょっと面白過ぎるな。

自分はガワと性格が良くないし、パチスロの新規ユーザーやリピーターを増やすことにあまり肯定的ではないし、そもそも引退しているので演者を目指すことはないけれど、大御所や今をときめく人たちを見ていると、業界を駆け上がるのに必要なスキルが膨大であることがうっすらと伺える。

「ひとつの機種に死ぬほど詳しくなる」みたいな努力はもはや当然で、版権の読み込みはもちろんのこと、来店客とのコミュニケーションスキル、媒体や店舗と良好な関係性を保つビジネスマナー、実践動画の離脱率を下げつつ注目ポイントをうまくまとめあげる動画編集のスキル、SNSのヘイト管理といった具合に、いまや多数の方向性に対して極めて多くの労力を割かなくてはならないのが演者業なのだろうな、と感じる。

そんな業界のトップ層の苦しみや努力が分からなければ(努力と感じない人もいるだろうが、それでも一定以上のスキルがなければ淘汰される世界なのだ!)、仕事も増えなければ日給40,000~45,000円は「一生低い」と感じることだろう。

おわりに:フリーの演者は先に自らを守る法律の知識を身に着けた方が良い

最近、仙台大阪王将の「ナメクジ」事件を告発した人物が威力業務妨害の容疑で逮捕されたことをご存じだろうか。

この件については「不正の内部告発ができなくなる」との声もあるが、適切な対応(行政機関への通報など)を踏まえなかったために罪に問われるリスクがある、ということで広く知られるべき事案だと思う。

業界の闇について声を上げるのは結構なことだが、であれば自分に火の粉が降りかからないように最新の注意を払って告発すべきだ。

もちろん、告発にはなによりも勇気がいるし、適切なルートを通そうとするなら時間的コストも膨大なものになるから「SNSでやっちまえ!!」となる気持ちも分かる。

ただ、このあと元の所属媒体と揉める可能性も十分あるのだし、それなら法律に詳しい誰かとしっかり組んでなんとかせえと思う。

別に今は戦国時代ではないが、槍すら持っていないことを見透かされた放浪者は十中八九狩りに遭う。理不尽に対する怒りは捨て去るべきではないが、怒りを伝える手段については熟慮する必要があるだろう。

と、ここまで書いて自分もスキルを高めないと…という気持ちになってきた。私は完全なプーの状態でパチ屋(最後の社会!!)にやってきたが、パチ屋で学ぶことだって沢山あった。

今後、多くの演者が己の槍を掲げて業界を駆け上がっていくことだろう。
彼ら彼女らを生きた教科書として(ときには反面教師として)、己を奮い立たせながら生きていきたい。

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