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【プリズンライターズ】ろくでなしの自分を生かす為の食べ物に…

今回は縁というものに付いて思うことを書かせて頂こうと思うので、少しの間お付き合い頂きたい。
一言(ひとこと)で縁と言っても、良縁もあれば、悪縁もあり、悪縁とは縁が無い方がいいに決まっている。

人間として、この世に生まれて現在に至る訳だが、両親との縁が有り親子となり、更に縁が有れば兄弟姉妹ができて、縁が無ければ一人っ子となるのは仕方のない結果であるが、全世界には沢山の夫婦が存在するのに、何故この両親の子に生まれてきたのか、何故この兄弟姉妹と兄弟姉妹になれたのか考えてみると、こんなに不思議なことはない。

増してや他人との恋愛や結婚では、まったく違う環境で育った人間同士が恋愛したり結婚できるのも、縁がなければ出会うことすらできず、友人、知人にしても同様に巡り合えることすら不思議というほかない。

人との縁と同様に物とも縁が有って、購入したり人から貰ったりして自分の所有物となる。
商店で沢山、陳列された商品の中から選んで購入する商品と、同じ商品で横に陳列されている商品の違いは縁が有るか内科の違いであり、やはり不思議だと思う。

このほかにも、触れる物、見る物、聞く物、香る物、食べる物など、いろんな縁が有る中で、今回、一番伝えたかったことは食べ物との縁で、人間に生まれてきてから今日まで、具合が悪くて食欲がないなどの特別な理由がない限り、毎日、当たり前のように食べてきた食べ物は、たまたま偶然で口に入っているのではなく、縁があるからこそ自分の口に入っているという事実を、もっと真摯に考えるべきではないかということだ。

職業が農業で自分が育てた食べ物にしろ、商店で買った食べ物にしろ、刑務所で給与される食べ物にしても、縁がなければ自分の口に入ることは有り得ないのである。 そう改めて考えると、食べ物に対する気持ちが、当たり前のように食べてた時から一変するのではないだろうか。

植物にしても動物にしても人間と同じ生物であり命である。

その命を、刑務所に無期刑で服役するような、事件を起こした、ろくでなしの自分を生かすために食べ物になってくれている事実に気付いた時、夕食の食事中だったのだが、申し訳ない気持ちと心からの感謝の気持ちが込み上げ、いい歳したおっさんが、嗚咽するほどに泣けてきて、少しおさまるまで食事が続けられなかった程であった。

まさか自分が、そんな心境になるとは、まったく想いもしなかったので、とても驚いたが、受刑者という特殊な立場ではなく、一般社会で生活を続けていたなら、間違いなく、そのような心境になることは、なかったであろうと考えれば、最底辺の受刑生活でも自分のためになるものを見つけられることを知った。

多くの者が縁と言えば、人と人の縁を考えるだろうが、今後は人以外の物との縁も考えて、大切にして頂けたら、今までよりは充実した人生に変わるのではないだろうか。 恐らく、これまでの食事前の「いただきます」が口先だけの形式的なものから、心からの感謝の気持ちの籠もった「いただきます」に変わるはずである。

この変化が食べ物を無駄にしてきた者たちの意識を変え、食品ロスの量が激減されればと心から願うばかりである。

令和5年7月10日


更生する方法を知らない者


大分刑務所で十八年目の受刑生活を送る無期囚の私に、これから先の受刑生活を一変させる、工場担当刑務官との出会いがあったので、世間体を気にした建て前ではなく、真摯に受刑者の更生を考えてくれる人たちの眼に留まり、今後の刑務所運営や改革に活かされることを願い、この投稿をさせて頂くことにした。

人がオギャーと生まれてから、成人するまでの時間を過ごしてきて、沢山の同囚や刑務官と出会ってきて、いろんなことがあり、いろんな思いをしてきた訳だが、受刑者の更生というものを考えた時に、最重要となるのが、各工場で受刑者の作業態度や生活態度を、日々監視し評価している工場担当の資質(人間性)だという大切なことを、法務省矯正局を筆頭とした役人たちが、どれだけ理解しているのかは、出所者の再犯率が下がらないことが証明していると思う。

資格主義で適性を見落としていて、工場担当の試験に合格しただけで、自身の出世、保身のことしか頭にない、利己的な不適合者を、受刑者の生死も左右し得る工場担当にしておいて、受刑者に更生を求めること自体、大間違いで、更生など出来る訳がない。

法律を改正しようが、優秀な幹部職員を刑務所に揃えようが、各犯罪の教育指導を強化しようが、受刑者本人に更生しようと思わすことが出来なければ、絵に描いた餅と同様で役に立たない。詰まる所、受刑者本人に、どれだけ本気で更生しようと思わせることが出来るかになる訳だが、人間一人では弱いもので、一人で簡単に更生できるものではないから、思わないというのが、受刑者たちの本心だと思う。
そもそも、更生という言葉は知っていても、更生する方法を知らない者が、ほとんどではないだろうか。

現在の日本の刑務所の工場担当の駄目な所を挙げれば切りがないので、これまで人生を諦めて投げ出していた私に、更生(受刑者が本来進むべき正しい方向)への一歩を踏み出させてくれた工場担当が、これまでの工場担当と何が違うのかを書かせて頂くので、今後の行刑改革に携わる人たちは、是非参考にして頂き、改善をお願いしたい。

これまでの大半の工場担当が受刑者と接してきた態度は、『罪を犯した社会のゴミの分際で、人としてまともに扱ってもらえると思うなよ』と完全に見下していて、職務だから仕方なく面倒を看てやっていると言わんばかりの態度で接してくるので、受刑者が更生しようなどと思える訳がなく、刑務所に対しても反感しか持てないというのが実状であるが、これに対し受刑者を一人の人間として接してくれ、一日でも早い出所を一緒に模索してくれる、刑務官としての情熱を持った親父と呼ぶに相応しい工場担当も稀少だが実在していて、どちらが受刑者のため、社会のため、法務省のためになる工場担当なのかは、一目瞭然で火を見るより明らかだろう。

今後の刑務所運営において、行刑改革に関わる人たちが真摯に受刑者の更生と再犯率の低下を考えるなら、無意味な議論を重ねるのではなく、毎日受刑者と接する工場担当刑務官の資格を、試験の点数だけで与えるのではなく、受刑者の人生と刑務所の存在意義を委ねられるかを慎重に見極めた上で、工場担当の資格は与えるべきで、既に工場担当の資格を与えてしまっている中で、工場担当の資質を欠く者は、受刑者との接点が少ない部署に異動させることが重要であると、非常に貴重な体験をした者からの提言とさせて頂く。

令和5年9月23日

A212さんの過去の投稿


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