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【プリズンライターズ】再犯率が減らない理由を考えてみた Vol.4 教育編①

 再犯率が減らない理由を考えてみた「教育編①」に入りました。
この教育編での教育とは、「受刑者に対して更生につながるようにと直接的に刑務所が行っていること」と定義をして書こうと思います。
 
この教育が、本当に法務省が言うような効果を発揮しているのなら、再犯率は減っているはずです。
ところが50%近くもの増加傾向になっているということは、何かしらの問題があるからではないでしょうか。
 
 教育の中身も様々なので、①では職業訓練や資格取得などの勉学に関すること、②では個々の犯罪傾向にあわせたものなどの改善指導に関することと、大きく二つに分けて書いていこうと思います。


刑務所にある資格とその問題

 職業訓練でとれる資格は、電気工事士二級、フォークリフト、クリーニング師、理容師、美容師(女性のみ)、ボイラー技士二級、自動車整備士二級、情報処理技術者、危険物取扱者、小型特殊などです。一方自主学習だと、日商簿記、珠算、高卒認定などで、かなり減ってしまいます。
 
 いろいろな訓練を受けて資格がとれるように見えるでしょうが、いくつも訓練を行っている施設もあれば、一つぐらいしかない施設もあって、施設間格差がかなりあります。内容については私としては、少々現代社会からの需要がそんなに多くないようなもののように感じています。
特に自主学習なものが少なすぎるとは思います。


職業訓練を受けられる人数は
 少ないもので3名ぐらい、多いものだと15名ぐらいですが、ここまで多いものはなかなかありません。
訓練は当然税金でまかなわれているので、妥当な定員かもしれません…現行のやり方で、ならです。
 
 この人数も額面通りではありません。それを10名枠の訓練を例に説明しようと思います。
自所から7名、他の施設からが3名、といったような割合があると言われています。
 
 全ての施設でかは定かではありませんが、自所のもののみがあったりしますし、実際に見たこともあるので、何かしらあるのは間違いありません。
なので、訓練がない施設に送られてしまうだけで、受けられる訓練が制限されるに等しくなってしまいます。
更に10名が定員だからと言っても、定員まで取っていないケースもかなりあり、ほぼ外部の訓練を受けるのが不可能に近いのが現状かもしれません。

どうして他施設からの受入は少なくなるのか
 刑務所が受刑者の施設間移動に対して、かなり神経と経費を使うからなのではないかと考えられます。
なかなか難しいとは言っても、移送のタイミングには逃亡のリスクがつきまといます。
それを防ぐためにも、その分職員を配置して護送するため、職員の分の移送経費もかかってくるでしょう。
 
 ここまで経費をかけて送り出して、しっかり訓練を完遂してくれればよいのですが、問題を起こして送り返されてこないとも言い切れなかったりもするのです…。
 
 これだけ考えると、刑務所が「自分のところの受刑者だけに…」と思うのも無理はないのかもしれません。
経費も特にかかりませんしね。ただ、だからと言って受刑者の可能性の芽を摘んでしまうようなことになってしまっていてもよいのでしょうか?

それでも訓練を受けられた人はどんな人か
 日常生活は穏やかで真面目、作業も熱心、社会復帰への意欲が強い…“模範囚”と呼ばれる人だろうと思われるかもしれませんが、意外とそんな人ばかりではありません。
 
 優遇区分と呼ばれる五~一までで、数字が少なくなるほど優遇が受けられるものがあり、ちゃんと優遇が受けられるのが三からであり、多くの受刑者が大体は三です。この優遇区分が三であることが最低限の条件だろうと受刑者間でまことしやかに言われてもいるのですが、私は四なのに受けた人を見たこともあり、これも確かではないです…。
 
 “一定の学力を有する者”と条件がついていたのにも関わらず、まともにかけ算ができない人がいたりして…、多くの者に門戸を広げているからだと言い訳されれば信じてしまいそうですが、一方で我々受刑者から見ても“模範囚”だと思える人が受けられなかったりしている現実を見ていると、一体何が基準になっているかわかりません。

まず手をつけるのは選定の明確化と開示
 現在は処遇申査会と呼ばれる一定の階級の職員による書類のみの申査だけで決まっています。
なので、どうして通らなかったのか、通ったのかが全くわからないブラックボックス化しています。
刑務所側の言い分としては、受刑者に教える必要はないのかもしれませんが、このままでは訓練を受けるために何をどう努力すればいいかわかりません。

 なので私は、採用に関して試験形式の導入を強く勧めたいです。
試験形式にすれば、点数という形で合否が明確化できるでしょう。
同点数の場合なら優遇で、そこまで同じなら面接で、と決めてしまえば、選ぶ方もあいまいなものよりもわかりやすく選定できるようになると思います。

 それに私は、努力しない者をふるい落とすことも容易になるとも思います。
私の肌感で申し訳ないのですが、刑務所において問題行動の多い人物ほど、努力をしない傾向にあるように思っています。
なので、努力しない者をふるい落とすということは、努力が必要なこの方法だと、そういう人物の混入を減らせることにもつながる可能性も高くなると思えるのです。

 また別の面だと、学力の基がなくても訓練に対して本気になって努力すれば、試験をクリアする可能性だって出てくるでしょう。
その努力による成功体験は、実際の訓練だけでなく生きていく上でも、きっと役に立つと思うのです。

受講先の絶対数を増やさなければならないが…
 いくら努力して訓練を受けられるようになっても、施設感の格差と刑務所側の懸念も軽減もできず、受入の絶対数を増やせないままでは、解決とは言えません。単純に各施設に一から新しく建設して増やすのは、さすがに現実的ではないでしょう。
しかし、ある方法によっての増設であるのなら、ある程度解消できるのではないかと思います。それは、リモート受講による増設です。
 
 リモートでなら、座学ぐらいのものなら工場内にある食堂を使って講義するぐらいはまず可能でしょう。
技術的な視堂が必要なものでも、訓練内容に類似したことができそうな工場がある施設でなら、その一部を間借りして代用すれば可能になることがあるはずです。
 
 これができれば、受刑者の移動は所内における工場内だけで済み、刑務所側が最も懸念しているであろう施設間の移動を減らせると思います。
そうなれば移送費用が減らせるだけでなく、一からよりも安価で増員が可能になると思えます。
 新たに用意しなければならなくなると思われるのは、リモートを行うための機材と環境、それと訓練に要する少々の資材と教材ぐらいでいけるのではないでしょうか。当然選定試験の合格者に限りますが、自費による参加も認めるのなら資材、教材の面はなんとかなる部分も出そうです。
 
 ただお金編②で書いたように、現状の受刑者の収入のままではなかなか厳しい人も多いと思うので、この辺の問題も目を向けるべきでしょう。
資格は社会復帰のための一助になることが多いはずなので、門戸は広げるべきかと思います。

もっと現実的な役立つものを
 先に述べたと思いますが、現在の刑務所の職業訓練や資格の多くが、現代社会にマッチしていない感じはどうしても否めません。
珠算と言われて、すぐに役に立ちそうな仕事、すぐに就職できそうな仕事をいくつ思い浮かべることができますか?
ただ、社会で役に立つと言われている国家資格には、我々受刑者にとって厳しい条件がついているものが多いのです。

 それは「罪を犯し、その刑を終了してから五年はその資格を公布しない」というものです。
国家資格は当然国が認めて初めて成立するものであり、これは自業自得なので仕方ありません。
なのでアレコレと国家資格をとれるようにするのは、現実的に厳しいでしょう。

 ただ、国家資格が資格の全てではないはずです。民間資格の中にも社会で必要とされている資格がたくさんあります。
そういう資格をもっととれるようにしたっていいはずです。
そして刑務所に押し寄せている超高齢化の波すらも利用しない手はないと思っています。
それは刑務所でもしっかりと介護を行うようにして、その経験を介護資格を受けるための職歴に換算できるように役立てられないかというものです。
やり方一つでいくらでも幅を広げていく方法はあるはずなのです。

リモートで届けたい訓練が必要な人たち
 いくつもの訓練を行っている施設と、そうでない施設があると述べたかと思います。
実はハッキリしていて、多く行っているのは主に少年刑務所で、最近出来だした半民間施設が少々です。
一般刑務所や再犯、長期刑を受け入れる刑務所ほど、ほとんど行われていないのです。
 
 少年に資格が不要だとまで乱暴なことは言いませんが、仮に資格がなくても“若い”というだけで更生する機会は少なくないと思うのです。
一方、一般刑務所に入る年齢の人達は、“元受刑者”でなくても資格もなく仕事に就くのが難しくなる年代が多いのです。
それに“元受刑者”という肩書きが付くのですから、難易度の高さは想像を絶するものになるはずです。
 
 そんな人達に資格や技術を身につけさせないまま社会に戻した結果、仕事に就くこともできないので再犯者になってしまっているケースは、けして少なくはないと思うのです。
 
 近年、厳罰化による刑の長期化が進んでいるのは、私は否定しません。
ですが、忘れてはいけないのは、長期化しているだけで、死刑ではないので皆いずれ社会に戻るということです。
長期的に刑務所に入れることになるのですから、再犯防止のための教育は当然大事ですが、それと同じだけの時間をかけて社会で通用する資格や技術を身につけることも大事なはずなのです。
そうでないと、刑務所に長期間入れたことで、社会不適合者を生産してしまうだけになりかねないのです。
何のための刑務所かわからなくなってしまいます…。
 
 少年や刑が短い人の中でも限られた人しか行くことができない半民間施設内だけで、チマチマやっているだけではいけないのです。そういう施設からこそ、リモートによる拡充を行い、少しでも再犯を行わずに済むようにしていくべきだと思います。

 コロナによって普及したリモートは、刑務所に非常にマッチしたものです。
コロナも刑務所も隔離という点において共通しているからです。私の提案する訓練を容易に拡充できることからも、刑務所こそ積極的に取り入れて活用すべきだと思えます。それによってとても難しいことではあるのですが、将来的に実現できてほしいと思うことがあります。
それは、リモートによる学びでの社会との交流です。
 
 英語が話せたり、手品ができたり…どんなものでもいいと思います。
社会の人との交流で何かを学ぶことで、受刑者自身で気付かなかった意外な才能が見つかることがあるかもしれませんが、本当に大切なものは社会の人との交流によって生まれる社会との接点です。

 社会に戻っていくことは絶対に一人でできることではありません。
社会の協力があって初めてできることです。諸外国でもその大切さに気付いて、社会との接点を持たせているところが増えているぐらいなのです。
それを私は何かを学ぶことを通じて持てるようになればと思うのです。
これら全ては受刑者の「社会に戻ってちゃんとやり直したい!」という強い気持ちが最も大切であることは言うまでもありません。
少なくともそんな人達がちゃんと社会に戻れるようにするためには、訓練の間口をリモートによってでも広げ、年代に合ったものを身につけられるようにしていくことは必要です。

 そして環境を整えることで、「私もやり直せるかもしれない…」と一人でも多くの受刑者に思わせることも必要でしょう。
これでこそ、学びが再犯率の低下につながっていくと言えると思います。可能性はあるのです。
勉学による改善的は伝わりましたでしょうか?旧時代のまま放置されたままなのです。

 さて次回は教育編②で改善指導について書きたいと思います。で
はまたお目にかかりたいと思います…刑務所が社会復帰を目指す人が頑張れる場所になりますように…。

A304さんの過去の投稿はこちら


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