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鑑賞記録vol.3 奇想のモード 装うことへの狂気、またはシュルレアリスム

行ったらすぐに書こうと思っているのに、なかなか書けずにいて期間が空いてしまいました。
東京都庭園美術館で2022/1/5~4/10まで開催されていた、奇想のモード展の鑑賞記録です。

展覧会の概要

展覧会の概要は、以下の通りです。

20世紀最大の芸術運動であったシュルレアリスムは芸術の枠を超えて、人々の意識の深層にまで影響力を及ぼしました。革新的な意匠を生み出し、時代を先駆けようとする優れたクリエーターたちの表現は、時にシュルレアリスムの理念と重なり合うものであり、モードの世界にもシュルレアリスムに通底するような斬新なアイデアを垣間見ることができます。

一方、シュルレアリストたちと親交のあったエルザ・スキャパレッリは、シュルレアリスムの潮流のなかで示された特異な感覚を、モードの世界に積極的に取り込んでゆきました。またシュルレアリストたちは、帽子や靴、手袋といったファッションアイテムを霊感の源として、絵画や写真、オブジェといった作品のなかに生かしました。衣裳へのトロンプ・ルイユ(だまし絵)的なイラストの導入や、内側と外側の意識を反転させたようなデザイン等、シュルレアリスムを契機として出現したユニークな発想力は、まさに「奇想のモード」として今日にまで影響を与え続けています。

本展ではさらに、シュルレアリスムの感性に通ずるような作品群にも注目し、現代の私たちからみた<奇想>をテーマに、16世紀の歴史的なファッションプレートからコンテンポラリーアートに至るまでを、幅広く展覧します。シュルレアリスムがモードに与えた影響をひとつの視座としながら、その自由な創造力と発想によって、モードの世界にセンセーションをもたらした美の表現に迫ろうとするものです。

https://www.teien-art-museum.ne.jp/exhibition/220115-0410_ModeSurreal.html#outline

展覧会の題名を見て、私の中では、シュルレアリスムとモード(ファッション)が関連するイメージがあまりなかった(シュールというと、「シュールな笑い」のような言葉が最初に浮かんできていた)のですが、確かにハイブランドのファッションショーの写真を目にしたりすると、果たしてこれは服なの?ファッションなの?おしゃれなの?と不思議に思うこともあったので、そうか、それはシュルレアリスムに通じているのだな、と気づきを得たような気がします。実際に鑑賞してみて、どう感じるか楽しみな気持ちで訪れました。

シュルレアリスムとは

まず、アート初心者の私としては、シュルレアリスムの定義を確認しておこうと思います。

■シュルレアリスムとは

超現実主義。フランスの詩人A・ブルトンによる1924年の著作『シュルレアリスム宣言・溶ける魚』(「シュルレアリスム第一宣言」)に始まる芸術運動。その影響力からすれば20世紀最大の潮流といえる。フロイトの精神分析理論に影響を受け、無意識の表面化、無意識と理性との一致を目指した。

https://artscape.jp/artword/index.php/%E3%82%B7%E3%83%A5%E3%83%AB%E3%83%AC%E3%82%A2%E3%83%AA%E3%82%B9%E3%83%A0

超現実主義、ということで、現実を超える=無意識の表面化・無意識と理性の一致を目指す、となるのでしょうか。
言葉で読むとあまり理解できていない気がしますが、代表的な日本でも有名な作家・ダリの作品を見るとなんとなく雰囲気がわかる気はするかも…といった状態で展覧会を訪れましたが、今回の奇想のモード展の作品を鑑賞して、たしかにこれはシュルレアリスムだ、と感じ取ることができたと思います。

感想

展覧会は、テーマごとに歴史的な装飾品や服装品から、現代のモードファッションに至るまで、様々な作品が展示されていました。

展示会序盤で印象に残ったのは、入口入ってすぐ、大広間に展示されていた、サルヴァドール・ダリ<抽き出しのあるミロのヴィーナス> と ヤン・ファーブル <甲冑(カラー)>です。

<抽き出しのあるミロのヴィーナス>は、有名なミロのヴィーナスの身体のいたるところに、(何故か)引き出しがあって、不思議なのですが、どこに引き出しがあるのか、ここにも!といった感じで見入ってしまいました。

<甲冑(カラー)>は、大量の玉虫の羽で全体が装飾された甲冑が、光輝いていて目を奪われました。日本でも、法隆寺の有名な「玉虫厨子」がありますが、あれも制作された当初はこれくらいの輝きを放っていたのかな…と思ったりしました。
虫の羽を利用する、というのもシュルレアリスム、でしょうか。。

「歴史に見る奇想のモード」というチャプターでは、コルセットや纏足
鞋が展示されており、世界中で、特定の美的価値観の下で女性の身体が窮屈な形で矯正されていたのだな、と思いました。この点については、改めて考えてみたいです。

また、19世紀の昔の雑誌の付録の紙製の着せ替え人形の展示があったのですが、とても可愛らしく、私が子供の事遊んでいたような着せ替え人形がこの時代からあって、女性たちがファッションを楽しんでいたのだな、と思うと確かに昔と現在と繋がっているんだな、とちょっとあたたかな気持ちになりました。

また、「髪へと向かう、狂気の愛」というチャプターでは、
小谷元彦<ダブル・エッジド・オブ・ソウト(ドレス02)>という、全体が編まれた毛髪でできているドレスが印象に残りました。。
正直、怖かったです。。

このチャプターでは、モーニングジュエリーも多数展示されており、以前訪れた「メンズリング展」で初めてモーニングジュエリーを知ったのですが、写真や毛髪をジュエリーに飾ることで悼みを捧げるというのは、西洋的な感覚なのかな、と思いました。

「エルザ・スキャパレッリ」のチャプターで展示されていた作品は、どれもとても美しかったです。大胆な表現がとても魅力的でした。

特に美しかった<イヴニング・ケープ>

ちなみに、ショッキングピンクの語源となったというドレスも展示されていましたが、私が想像するショッキングピングよりはもう少し色のトーンが暗く、もともとショッキングピンクはこんな色だったんだ!それとも経年劣化で色のトーンが変わっているのか?と思いました。

続いて、「シュルレアリスムとモード」のチャプターでは、雑誌『ハーパース・バザー』『ヴォーグ』が多数展示されており、とても印象に残りました。
今ではそこまで驚きがありませんが、確かにファッション雑誌がシュルレアリスムの要素を前面に出した表紙を採用するというのがとても面白いと思ったし、アートとファッション・シュルレアリスムの繋がりがこういうところにも現出してくるのがとても興味深く、現代にもその流れがつながっている、と思いました。

展示会は本館と新館で構成されており、新館の「ハイブリットどモードーインスピレーションの奇想」の最終チャプターでは、現代の作品が多数展示されていました。どれも素敵なものの、ちょっと悪趣味とも思えそうな、微妙な感覚がまさにシュルレアリスムなのか、と思いました。

ガガ様も履いた
舘鼻則孝<ヒールレスシューズ>
人なのか動物なのか、動物なのか人なのか…
永澤陽一<ジョッパーズパンツ≪恐れと狂気≫>

終わりに

「奇想のモード 装うことへの狂気、またはシュルレアリスム展」では、モードとシュルレアリスムの深い繋がりを、沢山の作品から感じ取ることができました。正直、私はまだシュルレアリスムをとらえきれていない気がしますが、入門編としては鑑賞しやすかったのかな、と思います。
美しさと奇妙さ、悪趣味さとの微妙なバランスが芸術となるのか、そうでなくなるのか、アートって捉え方次第である者のやっぱり奥が深いな、と改めて感じた鑑賞体験でした。

また、庭園美術館には初めて訪れたのですが、とても美しい建物で、庭園も美しいとのことなので(閉鎖中で入れなかった)また行ってみたいです。カフェ行きたい。

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