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第5回 システム化基本構想の詳細:(3)実行計画の作成から報告書の最終化まで

前回は、テーマ設定した重点施策を詳細化するプロセスについてご説明しました。最終回である今回は、成果物である「システム化構想書」の最終章にあたる「実行計画の作成」について詳述します。

1 実行計画の作成
重点施策を詳述するにあたって目標としてきた「将来のあるべき姿」は、以下に大別できます。

① 将来に向けて現在のシステム構造を変更する
例えば、現在稼働しているレガシー化している「クラサバ型」のシステムを「クラウド型」のシステムに入れ替え、グローバル経営の根幹に据える。近年の働き方改革に対応する。スクラッチで開発しているシステムのメンテナンス要員が不足してきたためパッケージ型のERPに変更する。などです。

② 個別テーマを実現するシステムの導入
例えば、顧客管理を強化し成功要因の分析と失注管理を行うために「顧客管理システム」を導入する。実際原価計算から標準原価計算に切替え、工程改善や経営改善に原価差異情報を積極的に利用するために「原価管理システム」を刷新する。などです。

このようなシステムの目標に対して、いつまでに、どのように実現していくのかをまとめたものが「実行計画作成」と呼ばれる作業です。

現状のシステム構成を出発点にして、システム施策に盛り込まれた内容を整理し、「新規にシステムを導入する、ないしは既存システムを入れ替える」部分、「既存システムを改修する部分」、「既存システムを継承する部分」に層別します。新規のシステムは必ずしもパッケージ製品であるとは限らず、スクラッチで開発するほうが適している場合もあります。

新規導入、改修、継承のシステムスコープを確定させたのち、重点施策の優先順位に従いながら、個別システムの導入プロジェクトのテーマ設定(例:基幹システム刷新プロジェクトなど)と期待効果(例:営業活動から財務会計までスムーズなデータ連携が実現されていること。など)を設定します。

複数のプロジェクトの切り出しが終わると、各プロジェクトの実施順と、各プロジェクトの遂行期間を見積り、月別レベルぐらいの粒度でスケジュールを作成します。
システム導入のプロジェクトが進展する数年間は、将来のシステム構成に向けての過渡期として位置づけられます。この間システム構成は順次変化しますので、大きなフェーズ(会計年度別など)に分けて、システム構成の変遷図を作成します。弊社ではプロジェクトスケジュールと変遷図で構成される資料を「システム化ロードマップ」と呼んでいます。

なお、全業務がシステム対応しているとも限らず、マニュアル作業(例えばエクセルを使った業務)などを存続させる場合もあります。このような場合、システムで対応する業務と、マニュアル作業として存続する業務の「つながり」が重要なのですが、システムが対応しない業務とシステムとの間の「データ連携」がテーマとして見落とされがちですので注意が必要となります。


2 業務改革
システム化構想と言いつつも、システムと業務は表裏一体であることから、各プロジェクトの実施項目は、業務改革を伴うものも少なくありません。
重点施策の詳細化においてとりまとめた、「業務施策」が、各プロジェクト内における業務改革に引き継がれていきます。

3 資料の最終化
最後に、これまで蓄積してきた
・現状調査
・課題と課題分析
・重点施策
・システム化ロードマップ
を整理し「システム化構想最終報告書」という形でまとめ上げます

5回にわたって、「システム化基本構想の策定」についてご説明して来ました。システム導入をご検討するにあたって、ご参考いただけましたら幸いです。

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