#1 卒業式
ボクの特技は早起きだ。
駅前のカフェでゆっくりコーヒーを啜るのが一日の始まりでもある。
その日もスターバックスでブラックコーヒーを飲んでいる。
仕事柄、カフェですることが多いので今まで何杯飲んだかわからない。
ふと店員さんの声が聞こえる。
「素敵なお着物ですね?」
「ありがとうございます。今日卒業式なんです^_^」
声からして嬉しさと華やかさと充実感が伝わる。
そこのスタバ近くには大学がある。
もうそんな季節かと会話を聞いてコーヒーを啜る。
我が子も10年したら卒業するのかぁ…
想像と妄想を膨らませて胸が詰まる。
小学校、中学校、高校、大学と卒業する。
社会人になり、ひとり暮らし、出逢いによっては結婚し我が家からも卒業する。
その虚しさたるや受け止めらるのかしら…
でもふと気づき
ボクも卒業して来たのだ。
親の気持ちとは、親にならないとわからないとつくづく感じた。
華やかの着物を纏い、笑顔で母親らしき人と話している。
違和感がない距離に父親らしき人が携帯をいじっている。
心の中でお父さんに感情移入してしまう。
恥じらいを隠すように、気持ちと表情も隠すように
携帯と向かい会う。
本当に向かい会いたいのは華やかで大人になった娘なのにと…
お父さんお母さんもおめでとうございます。
一緒に卒業式を迎えられるだけでも素晴らしいことだ。
朝から色々考えさせられたスタバだった。
あ、そういえば
人は生まれたからには
必ずいつかこの世から卒業するのだ。
人生の終わりは教えてくれないから悲しいのか楽しいのか。
さぁ今日一日を思いっきり入学しよう。
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