不動産会社で経験したアンコンシャスバイアス(無意識の偏見)
「アンコンシャスバイアス」という言葉を聞く機会が増えています。「無意識の偏見」「無意識の思い込み」などと訳されることもあります。
(1)アンコンシャスバイアスの例
内閣府男女共同参画局の広報誌(こちら)から一部をご紹介します。
アンコンシャスバイアスは他人だけでなく、自分にも働きます。例えば日本の企業では「やまとなでしこ問題」と呼ばれる現象があります。「自分は女性だから、管理職にチャレンジするには力不足だろう」といった過剰な謙虚さによって、能力のある女性が自分に限界を設けてしまうことを指します。
こうしたアンコンシャスバイアスによって、自分にも他人にも可能性を狭めてしまう、あるいは失礼な発言をしてしまうことがあります。私がある不動産会社で経験したお話をさせていただきます。
(2)不動産会社で経験したアンコンシャスバイアス
大学の同級生が家庭の事情で退学することになりました。同級生は大学の近くで一人暮らししていましたが、退学に伴って別の地域の家賃の低いアパートに引っ越すことに。「自分はその地域のことに詳しくないから、一緒に不動産屋さんに行ってもらえないか」と相談され、私がその地域に馴染みがあったため、同行することになりました。
最初に訪れた不動産屋さんで対応してくれたのは、30代くらいの男性の社員。同級生は男性、当時の私は女性に見えるかもしれないくらいの外見。同級生が事情を話して、社員の方はいくつかアパートをピックアップしてくれたのですが、なぜか一人暮らしにしては部屋数が多いような?
私が同級生に「こんなに部屋数いらないんじゃない?」と聞くと、社員の方は「いやいや、一人で住むならそうですけどね」「あまり狭いと一人分しか荷物も入りませんし」
・・・話聞いてました? 同級生は一人暮らしするんだってば。
物件を見に行っても「ここなら二人くらいは寝られますよ」「ここを仕切れば二部屋になりますからおススメです」と、複数人で住む前提で話を進めます。
・・・もしかして、私たちが恋人同士で、二人で住む部屋を探していると思われているのか?
「さっきも言いましたけど、同級生は一人で住む部屋を探しているんです」
「まあまあ、大丈夫ですよ、わかってますって」
わかってなーい!!
想像するに、社員の方は「親に内緒で一緒に住む部屋を探している学生カップルに配慮してあげよう」と思われたのでしょう。むしろ微笑ましい気持ちだったのかもしれません。
しかし男性に見える人と女性に見える人が一緒にいる=恋人同士に違いない、と思い込むこと。その二人が部屋を探している=一緒に住むに違いない、と思い込むこと。これがアンコンシャスバイアスです。このアンコンシャスバイアスによって適切な物件を案内できず、社員の方は信頼と契約機会をひとつ失ったのでした。
(3)他にもこんなアンコンシャスバイアスが
「女性/男性に見えるのだから、この人は女性/男性だ」
「人は異性を好きになるものだ」
「恋愛に興味のない人なんていない」
「親と言えば母親と父親のことだ」
セクシュアリティや性別に関するこうしたアンコンシャスバイアスは、LGBTsだけではなく多くの人の暮らしに影響します。他にもこんなアンコンシャスバイアスがあるかもしれません。
「保育士なら子どもが好きに違いない」
「社長と言えば年配の男性に違いない」
「シニアの人は頑固で融通が利かないはずだ」
「障害のある人には難しい仕事はできないだろう」
私たちの生活にはアンコンシャスバイアスが溢れています。アンコンシャスバイアス自体に善し悪しはありません。しかしアンコンシャスバイアスに無自覚であることによって、さまざまな立場の人が息苦しくなっています。
こうした状況で私たちにできることは何か? 自分がアンコンシャスバイアスを持っていることを認識した上で、相手を尊重して話を聞くこと。そこから目の前の「個人」のニーズを拾い上げることが達成できます。今一度、自分のアンコンシャスバイアスを考える機会を持ってみるのもいいですね。
日々を快適に過ごすために、住まいと暮らしのアイデアを、引き続きお届けして参ります。「こんなテーマを取り上げてほしい」といったご意見がありましたら、ぜひお寄せください。
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