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LGBTsの住宅購入と、いざというときに助けになる「任意後見人」制度

「パートナーシップ合意契約書」や「相続」についてこれまでお話ししてきましたが、もう一つ、同性パートナーが家を買うタイミングでまだ締結していないのであれば、是非考えておきたいものがあります。それが「任意後見人契約」です。


任意後見契約とは

任意後見契約とは、万一病気や認知症などで、判断能力を失ったときに、代わりに判断をしてくれる人を決めるための契約です。たとえば認知症になってしまったら、財産の管理(不動産や、貯金などをどうするのか)を自分で行うことはむずかしくなります。それを、契約を結んで後見人になった人が、裁判所の決めた任意後見監督人のもとで、代わりにやってくれる、という契約を結ぶことができます。

つまり、同性パートナーが認知症などになってしまった場合、婚姻関係にないパートナーであっても、病院での手続きや、預金口座やお金の管理、不動産の管理などが正式にできるようになるのです。

ちなみに、任意後見人をつけることができるのは判断能力を失う前で、判断能力を失ってしまった後は、4親等以内の親族しか後見人になることができません。(この場合を法定後見と言います。)

どんなことができるのか

任意後見契約では、「誰が、何を、どのくらいの報酬で」行うのかということを決めることができます。例えば、認知症が進んできた場合、要介護認定を受けるときにパートナーが手続きをできるようになったり、介護施設に入らなくてはならないような場合に、パートナーが契約の手続きができるようあらかじめ取り決めておくことができます。以下が、取り決められる項目の例です。

●不動産、動産の処分をどうするのか
●自分名義の保険に関する手続き
●自分名義の銀行口座などをどうするのか
●介護や病院の入所・入院手続き  など

任意後見契約をお互いに取り交わしておくことで、「亡くなるまでお互いの面倒は、お互いで見ます」という証明になります。渋谷区などがパートナーシップ証明書の発行に任意後見契約を互いに結んでいることを条件に入れているのは、そういった理由からです。

以前ご紹介したパートナーシップ合意契約書は、パートナーと一緒に暮らしていくために必要な細々とした項目を定めており、任意後見契約は、どちらかの身に万一のことがあった場合にどうするのかを決めておく契約と言えます。

どのように契約を行うのか

任意後見契約は、公正証書で行う必要があります。専門家の意見を聞きながら書面を作り、公証役場で手続きを行い、登記といって東京法務局に登録するという手続きが必要となります。具体的な公正証書の作成方法は、以前書いた「パートナーシップ合意契約書」作成の記事に詳しく載っていますので、参照してみてください。


任意後見契約で、できないことや注意点

ただ、何点か注意点もあります。「法定後見契約」のほうでは、もしも認知症になって判断能力がないのに、騙されてなんらかの商品やサービスの契約をしてしまったときに取り消すことができる、「取消権」がありません。

また、判断能力を失ってしまい、そのまま亡くなってしまったとき、死亡届を出すなどの「死後事務」を行うことは契約に入れることができません。「死後事務」を行うためには、また別途「死後事務委任契約」を締結することが必要になります。

任意後見契約と住宅購入

ふたりで暮らす家を購入した場合、どちらかが認知症になって介護施設に入居したなどの場合、「家を手放す」という選択を迫られる場面もあるでしょう。回復の見込みが薄く、一人で住むには家を持て余してしまう、売却して少しでも介護資金に当てたい、などの事情もそれぞれに出てくることと思います。そのため、住宅を購入する段階で、万一のことがあった場合にどうするのかを考えておき、任意後見契約の中で、「この家の管理や売却はパートナーに任せます」ということを決めておくと安心です。

「二人で暮らす家を買おう」というワクワクした気持ちが大きいタイミングで、老後のことやもしものことまで考えるのはいやだな、と思う方もいらっしゃるかもしれません。逆に、老後に家の処分はどうしたらいいんだろうと不安で、なかなか購入に踏み切れないという方もいらっしゃるかもしれません。

法的に権利が守られているとは言い難い同性パートナーだからこそ、元気なうちにしっかり考えておくことは必要ですし、日々の生活に紛れて立ち止まって考えることも少なくなってしまいがち。ぜひ「家を買おうかな」と思ったタイミングで、一度考えてみませんか。

プリンセススクゥエアーでは、LGBTsのみなさんが不安に思っていることや考えておきたい将来のことについても一緒に考えていけたらと思っています。すでに住宅購入をされたLGBTsの方の事例も多数知っていますので、多少なりともアドバイスもできるのではと思います。

是非一度お気軽に、ご相談ください!

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