見出し画像

原田翔太の知られざる秘密

2023 年6月に行われた原田翔太&プリンセスリズによる対談ライブ
「命の輝き」
HARASHOWさんの楽曲にかける思いや、幼少期に感じていたこと。
プリンセスリズが独自の完成でこれまでにないエピソードを引き出し、1時間半に及ぶ熱いトークが繰り広げられました。
今回は、そのエッセンスを凝縮してお届けします。

新曲「BE HERE NOW」は令和版「創造的破壊」


リズ:先日のシークレットライブで聞いた「BE HERE NOW」、「君は本気かー!」ってやつ。
この決断は本気なんだろうか?って迷ったり、怖くなることもある。でも、本気か?ってHARASHOWさんが言うなら、やるぞって思えて。心を打たれた💘

原田翔太(以下原田:敬称略):作り手は曲だけじゃなく、歌詞も考えて書いているから、そこもよく見て欲しいんだけど、それをリスナーにも要求するのもまた違うよね。だけど、リズみたいな聴き方は、正しいと思う。
いいリスナーになってくれてありがとう。

リズ:それから、もう一つ好きな曲があって。少し前の曲だけど「想像的破壊」
音楽って歌詞と曲が融合されたものが、エネルギーとして届いているわけだから、私は全部ちゃんと知りたいのね。
その中でめちゃくちゃ本当に歌詞最高って思ったのがこの曲。

原田:俺もこの曲が好きで。新曲の「BE HERE NOW」は昔作った「想像的破壊」の令和版なんです。続きものなの。

リズ:知らなかった!この2曲が特に心に響いてるってことは私、そのレールに綺麗に乗ってたんだ!

原田:そう、だからやっぱ正しい聴き方なんだよ。
 「創造的破壊」は、メジャーデビューした時のアルバムの1曲目。元々は全部、英語の歌詞だったけど、メジャーリリースするにあたって、日本語に書き直した。ぶっ壊してでも自分を変えなきゃいけなくて、音楽性ごと変更したんだよね。
 つまり絶望の一歩手前にいた18の時、ジャンルを変えてでも挑んでやると思って書いた曲。そして今回、もう最後だから同じ世界観の続編を書こうと思った。
 ボン・ジョヴィが、「リヴィン・オン・ア・ プレイヤー」って曲の現代版を書いたのが、「イッツ・マイ・ライフ」っていうのは有名な話。そのことも頭の片隅にあったんだよね。

リズ:そんな裏話があったとは。
 この曲を聴くと、向かってくるエネルギーと、伝えたいエネルギーの塊が凄すぎて、自分の中で何かが起こるの。

原田:そう、歌がいいとかいう世界じゃなくて、エネルギーがすごいんだよ。作品づくりに悩んでた時期でもあって、ロックってこと、自分なりに考えてた。かっこつけたロックがロックなんじゃなくて、エネルギーの放射、揺り動かしてくるメッセージがロックなんじゃないの?って。
 だから、スタイルとかセオリーを無視してでもいいから、自分のメッセージを率直にぶつけてみる歌を作りたかった。
 結局伝えたいのは、なにかっこつけて生きてんだよ、ってこと。電子書籍「ノーガードフルチン戦略」の歌版だと思ってもらえればいいよ。ちょうどこの頃、SNSが流行りだした時期でさ。みんな人にいいねして、すごいですね、かっこいいですね、とかやってるけど本当にそんなことして生きていきたいの?外野なんか関係ないし、絶対やるって決めたやつが、何かになってくんだから。人のことはいいから、真剣にお前の人生やれよ、みたいなアジテーションをしたくて。

リズ:私も今、人生の中で怖いことっていっぱいある。瞬時に変化しなきゃいけないこともあって、この曲の歌詞を震えて泣きながら読んだ。「飲み込め恐怖の感情」とか「今が絶望でも関係ねえ」とか。このあたりが、今の自分に本当に力をくれる歌詞。使命のために、いくしかないんだよねって、HARASHOWさんの言葉に後押しされてるの。

原田 歌詞はラップになってるんだよね、一応。でもいわゆるライマーのラップじゃない。俺はロッケンローラーだからね。ただ韻を踏むための芸じゃあ面白くないから、それ以上にぶつけたいメッセージを込めてる。
 例えば、「気持ち健常でも洗脳」っていう部分。世の中が常識という洗脳をかけてくるから、本音を偽った口上をFacebookとかに書いてる人、多いなと思ってて。常識にとらわれて、やる気があってもなんか踏み出せない。だけど「常識は除草 定石はよそう」なんだよね。 メディアってのも「常識の洗脳」だから、じゃあ「放送はただの情報 状態は助奏カウントダウン 1、2、3だ、いくぜ!」ってつながる感じ。

リズ:歌詞にある「Харашоу」ってどこの国の言葉?

原田:ロシア語だよ。ハラショーって読むんだよね。この曲は俺のテーマソングみたいなイメージもあるし、ロシア語のハラショーって最高ってことだから、両方の意味で使ってる。

リズ:めちゃめちゃいい!ライブでHARASHOWコールをしたら、最高!って言ってるのと同じってこと?

原田:そうそう。行くぜハラショー!行ってみようぜハラショー!って言ってほしいね。

リズ:一行一行に込められた意味とか、全部聞いてたら多分10時間くらいかかるよね。

原田:説明しようと思ったら話せるけど、キリがないんだよね。実は色々情報入れてるから。でも作者が言葉で説明するのってちょっと野暮じゃないかな。作者は語っちゃダメだと思うんだよね。作品で語ればいいと思うから、感じてほしい。 聞かれれば答えるけどね。

リズ:聞いてみて良かった。これでライブがもっと楽しめるじゃん。

原田:そんなリズの感性に本当に感謝。さっき言った通りこの曲は、英語から日本語に書き直してんだよね。前に書いた曲を、自分が直すにあたって、何を今、俺が紡ぐべきかなと考えたんだけど。 
俺が普段セミナーとか仕事で、みんなに言ってることを、歌の中で聴かせようと思った。だから結構、普段から俺が言ってること、そのものをぶつけてる感じがするよね。
 この「お前の中のヒーロー信じろ」って歌詞だけど、リズにとっては「お前の中のプリンセス信じろ」ってことになるよね。

リズ:そう!私も「プリンセス信じろ」って言葉に入れ替えてみて、めちゃめちゃ頑張れると思った。
頑張るって誰かになるんじゃなくて、自分を信じること。でもそれもやっぱり恐怖だよね。ブルブル震えるし、怖いし、吐きそうになるし。
で、それを自分で認めた先に人に表現していくわけで。それで生きていくって決めても、今話しながらも怖い。
でもHARASHOWさんが、ダメとか無理とか、全部嘘だよって言ってくれてる。外野がなんと言おうと結局、どんな生き方を採用するかはHARASHOWさんの中のヒーローだし、私の中のプリンセスだからね。

原田:嬉しいね。俺はアーティストとして、今何をこの時代に歌うのかって、すごい考えてきたのよ。今も考えてるし、ずっと考えてんだけど。恋だの愛だの、付き合っただの別れただのって歌はこの世にいっぱいあるじゃん。
それを俺が歌っても、しょうがねえなと思ってて。埋もれちゃうじゃない。
だから、あえてこういうヘンテコなスタイルでシンガーソングライターをやってる以上、何をみんなに歌で届けようかってことを、毎回毎回、すごく問う。
そしてやっぱり、普段の延長上でやりたい。DIYでやってるのもそれゆえだし、気取らないで等身大で生きてるっていう、その芸風と整合性を持たせたいから。
歌の世界ってのも特別な非日常じゃなくて、普段の原田翔太って人の延長上にある方がいいな。

リズ:HARASHOWさんがいつも話してる言葉と歌詞は乖離してないよね。全部が必ずどこかに入ってる言葉ばかりだから、もはや歌詞が辞書だなって思ってる。

原田:俺の本「絶対領域」を読んだ後に歌を聞くと、あんまり違和感ないなって思うはず。

リズ:そう、ない!


「ONENESS」のモチーフは自分でありいつかの誰か


リズ:「ONENESS」の歌詞についても聞きたいな。

原田:の楽曲のモチーフはかつての自分だし、いつかの誰かなんだと思ってて。誰にでもきっと絶望的な、すごく絶対的な絶望の日があると思う。
歌詞の中で「誰からも認められずにバカにされ 傷つき泣き崩れても 変われない自分繰り返し諦めかけてた」って、これ俺のことなんだけど。
挫折してつまずいて、もうボロボロでダメだって日がある。
そんな時に自分は誰かにバトンを渡されて救われた。
だから誰にでもある絶望の日に勇気になったらいいな、と思って書いた曲。
命のバトンの連鎖だね。

リズ:その歌詞好き。

原田:「いつも強い君には話せないこともある」ってあるじゃん。ここも好きなんだけど、例えば親に言えないこともあるし、旦那に言えないこともあるし、すごく強い人だから弱音吐けないみたいなのもあると思うし。
そういうある青春の1日みたいな時のことを、振り返ってもらうきっかけになったらいいなと思ってる。

リズ:あるよー!本当にある。私に響いたのは「君は君だ胸張ってぶつかっていけよ」って言葉。やっぱり怖いけど、行くしかないし変われないし、私は私だし。でもそんな時にね、HARASHOWさんみたいに背中を見せてくれる人がいるって勇気になる。

原田:リズが「ONENESS」の歌詞、取り上げてくれて嬉しいな。すごいストレートなんだけど、ストレートがゆえに胸を打つところがあるんだよね、この曲って。

リズ:ストレートな表現だからこそ、聴くたびにいろんな情景が出てくるのね。あの時はこうだったなとか、あの時あの人はこんな風に勇気づけてくれたなぁとか。

原田:ある日の絶望はある日の希望につながってるじゃん。で、その希望は、次の誰かの絶望のための光になりうるんだよね。そんなことが人類の営みなんじゃないかなと。

リズ:営みなんだよね!育みだし。営みだし、循環だし。

原田:実を言うと俺の曲は全部、絶望と希望がモチーフ。歌手になった今の俺の歌が、誰かの絶望に寄り添えたらいいなと思ってて。誰かの絶望が誰かの希望になるし、絶望も希望も全部渾然一体となってるのが、多分人生だと思うから。誰かのどこかの瞬間に、ハマったらいいなと思っていつも曲を作っているところはあるね。

リズ:めちゃめちゃハマってる!私「ONENESS」の楽曲のジャケット、この夕日の雰囲気も好きで。

原田:俺の生まれ育った武蔵野台地を、家の屋上から自分で撮ったんだよ。夕日を背景にして中央総武線の電車が来てるところを狙ってる。自分のアイデンティティと近い場所で撮りたくて。それ自体がONENESSってことだと思うから。

リズ:ここからの風景を見ながら何を考えてたんだろう?

原田:晴れてると富士山が見えるんだよ。この辺、背の低い家が多い住宅街で。街全体がサブカルとか、カウンターカルチャーの人たちが住んでる土地だったから、東京なんだけど東京のメインストリーム的な価値観から離れた場所。そういう中で育んでもらって。それがHARASHOWを産んだんだろうなと思うよ。

生まれてきて、生かされている奇跡


リズ:私が聞きたいのは、ビジネス的なことや、Howtoじゃなく、そもそもの生き様。だからあえて今日はスライドも用意しなかった。
自己紹介もHARASHOWさんって何をしてる人で、こういう資格を持っていて、とかいうことじゃなくて。そういうのを全部取っ払ったトークをしたくて。

原田:リズらしいね。でもそれ、すごくありがたい。ご存知の通り、いろんな人とライブ配信やらせていただいてるけど、割と同じことを話してからになっちゃうんだよね。
そこを超えて踏み込んだところを、リズはやりたかったんだろうなと思ってて。これは非常にありがたい機会だね。

リズ:ありがとう。私の誕生日である今日この日、私の知らないHARASHOWさんのプロフィール、命の輝きとか、生まれてきたこと、本当にパーソナルな部分の生い立ち、生き様、どういう風に世界を見てるのかっていうのを聞きたいな。
生まれはどこ?

原田:生まれは東京都の武蔵野市。武蔵境という駅にある日本赤十字病院。実は俺、生まれた時死にかけてた。3220gだったから、未熟児じゃなく、普通ではあったんだけど。結核反応で陽性が出て、そのままICUにぶち込まれて隔離されてた。そのエピソードがあったせいか、ちっちゃい頃から生かされてるんだろうなって感覚は持ってたね。
武蔵野市で生まれて、隣にある中央線の三鷹駅ってところで育ったよ。

リズ:三鷹市ってどんな場所?

原田:いい質問するね。リズの掘り方は好きだな、なんか。
これは俗説なんだけど、三鷹は将軍家の鷹狩り場だったっていわれてる。
今の中央線の西側、新宿より西って昔は何もない平地だったのね。武蔵野台地っていうぐらい、草原とか雑木林みたいなとこだった。だから鷹狩り場に三つお宿があって三鷹っていうらしい。
 そもそも、我が家のルーツは、今でいう大手町の辺り。昔は神田連雀町、という名称だったんだけどね。その前は千葉の、確か船橋市で一番最初の開業歯科医だった。おばあちゃんのお父さんの代で、それがうまいこと発展したらしく、大手町に歯科医院を構えたんだよ。
 それが関東大震災と東京大空襲で、さすがに再起できなくなって。その神田連雀町の民がまるっと移住してきたのが、三鷹の上連雀、下連雀っていう地域。うちはその由来通りに上連雀ってとこにお家があって。神田連雀町から移ってきた民だったってことだね。
 今の三鷹は、多摩武蔵野地区といって、都心や下町とはちょっと違う文化。東京のローカルの一つなんだよね。だから俺は東京出身とはいえ、結構な田舎東京シティボーイ。
 それとジブリの森があるところなんだよ。文化人が多くて、作家、漫画家、小説家、演劇の人、ミュージシャンとかいう属性の人が割と多いと思う。アニメの会社もいっぱいあるしね。

リズ:全国のみなさんは距離感がわからないかなと思うんだけど、だいたい東京の都心に出るまで電車でどのぐらい?

原田:三鷹駅は特別快速が止まるんで、それに乗っちゃうと12,3分で新宿駅まで行けるんだよね。東京の地図を開いたら本当にど真ん中が三鷹。だから都心へのアクセス、副都心へのアクセスはいいんだよ。駅で言うと、三鷹、吉祥寺、西荻窪、荻窪、阿佐ヶ谷、高円寺、中野、新宿で、8駅ってこと。

リズ:じゃあ都会とはちょっと違って文化自体も変わるけれども、距離としては近い?

原田:距離で言うと新宿まで12,3キロなんだよ。チャリだと1時間ぐらいで新宿まで行けるね。

リズ:自電車で?すごいすごい!そんなにアクティブなの?

原田:どこ行くんでも自転車に乗ってるよ。タクシーとか乗らないんで。今日もセミナーが恵比寿だったんで自転車で登場したら笑われたよね。俺は大学が早稲田で、三鷹から早稲田まで毎日自転車で通ってた。だからちょうど1時間ぐらいっていう記憶があって。

リズ:すごい!じゃあもう本当に昔から自転車ボーイっていうことね。

原田:そう、自転車がブームになる前からね。


家庭の中で見てきた人と人との化学反応


リズ:今回は、さらに奥のところをもっと知りたい。命の数だけ歴史があるっていうのはすごい重い言葉なんだなって思ってて。重いし、ポップだし、ある意味で楽しいから、もっと掘っていくね。

原田:いやー、すごいね。そこに触れてそんだけ掘ろうとしてくれるのが、なかなか他の人はやらないところで。すごくいい企画だと思う。

リズ:そうなんだ!ありがとう。もうそれしか私は興味がないんだってことに気がついたの。HARASHOWさんという人を誰かに紹介するとき、そこがやっぱり私が最も伝えたいところだから。

原田:すごい奇遇なんだけど、俺、写真撮影の仕事のとき、一人ひとりにそれ、やるんだよ。命の輝きインタビュー。どこで生まれてどんな子だったのか、から話を聞く。そうじゃないと絶対に今がわからないから撮れないんだよね。だから、これが好きってのは、すごくよくわかる。

リズ:そう、めちゃめちゃ大事なの。ご家族のこととか、どんな風に両親のことを見てたのかとか。お母さんは優しい感じ?それとも、元気のいいお母さんなのかな。

原田:うちの母親は、かなり激情ドッカンな人だったね。だからすごくいい人なんだけど、良くも悪くも熱量があるからドカーンになるともう、ドカンがすごい。俺はやっぱりその被害者だったし、でもそのおかげで俺の中にもパッションが宿ったんだろうなとは思うよね。

リズ:うちの母も似てる。私もきっとあの熱さがあったから、私の中の熱さが、ずっと燃え続けられる。

原田:母親が分かりやすく炎的な赤色だとすると、父親は静かなる闘志型で、結構対照的な両親だったのかな。

リズ:うちは実家が飲食店をしていたから、父のお店の中でいろんなことが生まれるっていうのを目の当たりにしてきて。人と人とがつながって面白い化学反応が起こるのを見るのが、すごく好き。ハラショーさんもそういうところがあるのかな?

原田:めちゃくちゃある!だからリズとちょっと似てるんだよ。うちの母の家って商家で、いろんな人たちが出入りしてた。街で2番目、お寺の次に古い家で、代々商店街の商工会長なの。お祭りごととかも、全部うちのおじいちゃんが主宰する感じだった。 それに、田舎の三男みたいな人とかが、丁稚奉公的に下宿していて。多い時は10人ぐらいいたみたいなんだけどね。超拡大家族だった。
 俺自身の家も、いつも知らない人が一緒に食卓に座って飯食ってた。お前さ、誰の何?っていうとこから会話が始まって、僕は弟さんの友達のナントカですとか言うの。そんな環境の中で、自然と人との摩擦をすごく経験してきたんだろうな。
 でもそこでたじろがない。誰が来ても自分の中で大丈夫だし。だってさ、起きたら知らないやつが隣で寝てるから。寝る場所なかったんでお隣失礼しました、とか言われて、誰だお前は?ってなる。さらに自分の部屋に戻ったら戻ったで誰かがいる。クラブハウス的なごちゃごちゃな感じだった。
 だからいつも、コラボというか意見の交換や、ブレスト的な会話もあって、すごい化学反応が起こって。人と人との摩擦で生まれるエネルギーとか、パワーみたいなものを間近で体験する。そこで得たインスピレーションとかって、全て俺の中に注ぎ込まれているって、今でも感じるのね。
 だから人をつなぐのが好きだし、人が滞留起こして摩擦して、生み出すものを見てくのが、すごい好きなんだよね。だからコミュニティ運営も、好きなんだと思う。そこにすごくドラマがあるのを知ってるから。

リズ:それを言うなら、うちの母はおじいちゃんと住んでたんだけど、着物を作ってる人で。お弟子さんが何十人も一緒に住んでたっていうの。私のDNAにも、そういった要素が受け継がれてるんじゃないかな。

原田:一族の血筋ってのは絶対ある。そういうミームはね、わかんないけど自分に受け継がれてるよ。俺も最近、40手前になって、日々感じる。なんかすごく親みたいだなと思うし、じいちゃん、ばあちゃんみたいだなって思う。同じようなものを持ってるなって。

リズ:そう、あらがえない!だからあらがうのをやめた。

原田:俺たち、すごく共通点があるよね。


ライブ「ONENESS」のロゴに秘めた原体験


リズ:「ONENESS」のライブロゴって、丸い輪っかがついてるよね。

原田:あのワンネスサークルは、全部の色を使ってる。レインボーというか、プリズムというか。全ての色や形に良さがあることを表現してて。一人ひとりの良さをそれぞれが知ってくれれば、普段手を繋いでないとことも繋がれるんじゃないのかな、って思いがあって。

リズ:よく「丸くしたい」って、話してくれてるけど、どうしてそう思うようになったの?

原田:子どもの頃の原体験に、その礎はあったんじゃないかな。俺、元々小学校中学年ぐらいまで友達の輪の外にいたんだよ。いつもぼっちでいて、輪の外から眺めてた。なんとかキャラ変して輪の中の人になって、結局学校の中心的な人になってったんだけど。
 元々外側にいたから、スクールカーストの上も下も行き来できて、自由自在なところがあって、いろんな人とつるんでた。リア充組ともつるめば、暗い感じの人たちともつるむ。そういう体験から、それぞれの色と命に良さがあるなって、気づいたのね。
 日本人ってやっぱ、壁作って仲良しグループの中で付き合っちゃうよね。ちっちゃい頃は特に。でも俺はその枠の外にいたからこそ、いろんな人たちと握手した方が楽しいぞ、っていうのを何となく体得してたんじゃないかな。

リズ:その体得の仕方って、当時は苦しかったのか、楽しかったのか、どんな風に感じてたんだろう?

原田:やっぱりそれはね、言語化すると、絶望的疎外感。どっちかっていうと、みんなと仲良くできるんだけど、どこにいても本当の自分の居場所だと感じられなかった。どこに行ってもそこの一部を担ってる。でも、逆にどこにも居場所がないなって、自分の中にずっと感じていたのはすごくデカくて。
 今でもそう。いろんな人と知り合うけど、業界の人と群れないし、誰か特定の人と超長い付き合いとかあんまなくて。
 だけど壁がないから自由に行き来できる良さを手に入れたっていうのはあるかもしれないよね。だからこそ、それ自体が良い悪いとかっていう判断から離れるのは早かったんじゃないかな。

リズ:少年時代は孤独だった?

原田:だいぶ孤独だったと思う。寂しかったし、すごい渇望感はあったよね。だから自分を光らせる、自分を燃やす、見てくれ!って、存在を示すことに執着心を燃やしたのかもしれない。
 これもあんま話したことないんだけど、中学校の頃、芸能活動をやってた時期があって。輪の外にずっといたからこそ、自分が真ん中に立つことで誰かと繋がる良さを知っちゃったから。もっと強く生きたいと思って。

リズ:芸能活動してる時の気持ちはどうだった?

原田:それが俺の役割だ、ぐらいに思ってた。自分もかつて 一人ぼっちだったから誰かに光を照らすんだって。アイドルとか歌手とかに光が当てられたことによって自分も救われる経験って、あるじゃない。そんなきっかけを俺も渡せたらいいなって、幼心に思ってたね。12,3歳ぐらいだったけど。

リズ:めっちゃ早熟だし、もともとすごい賢すぎたのかな。その頃ってあんまり考えない時期じゃない?好きな子がどうとか、学校のテストいやだーくらいで。

原田:そういう意味では、こじれてたのかもしれないし、難しい子だったのかもしれない。どっちかっていうと、よく考え事してるような子だったな。



Xジェンダー宣言。性を統合して生きること


リズ:私は男性とか女性、ではなく、自分は自分として生きていける人が、すごく増えていってほしいなって思っていて。私自身、プリンセスですって言っておきながら、中身おっさんだよとも言ってるけど、それって笑いをとってるんじゃなくて、本当にこの自分の中に男性性がものすごくあって。そんな私は、こういう時にはこういう風に感じるんだよっていう話を、HARASHOWさんのおかげで、もっとちゃんとしていこうと思えたの。

原田:ちゃんと言語化していこうってことだよね。自分の中の男性性を治めた上で、女性性を発揮するのと、片方によっちゃってんのって全然話は違う。男もそうで、自分の中に女もいることを自覚して、そこを治めた上で男性をやった時に、本当の意味で男らしさが出るんだと思う。逆に女らしさもそうなんだと思うんだよね。

リズ:ちょっと前までは自分の中の女性性がすごく多すぎたんだけれど、この男性性もちゃんと認めてあげることを増やしていったら、すごい満足感が生まれてるよ。

原田:ちゃんと統合できてきてるんじゃないかな。

リズ:HARASHOWさんは、いつぐらいに自分の中の統合ができた?

原田:自覚できたのは昨年なんだよね。だから昨年、Xジェンダー宣言をしたんだよ。それまで、ずっとオカマだったんだよね。でも別に俺はゲイじゃないのね。男好きとかじゃない。

リズ:性的対象は女性でしょ。私も性的対象は男性。

原田:完全に女好きだけど、中身オカマなんだよね。昔から女の子みたいなものが好きだし、香水とかも俺、女物しかつけたことなかったの。シャネルのココマドモアゼルとかつけてたからね。

リズ:私は男物の香水しか使わないの。ブルガリのアクア。

原田:語ると長く なっちゃうんだけど、なんでも女物が好きだった。シャンプーもそうだし、少女漫画も好きだったし、お母さんのブラジャーつけて遊んでたし、女になりたいなと思った時もあったし。ビジュアル系のバンドやってたのも化粧できるから。16歳の時、アメリカの女装コンテストで優勝したこともあったな。
 振り返ってみると、いろいろなことがそうだったから、潜在意識レベルで女になりたい自分がいるんだろうなって思う。それを説明するいい言葉がわかんなかったんだけど、Xジェンダーって言葉に出会って、俺このトランスジェンダーってやつだっていう風にわかったよね。

リズ:じゃあ私もその名称になるのかもしれないね。

原田:だと思うよ。多くのXジェンダーの子たちは結局、女の子は男の人と結婚して子ども産む人多いし、男もしかりなんだけど。でもその両性の中で生きづらさをずっと感じてた人って多いみたい。

リズ:私、高校の時になんで女なんだろうってすごく不思議だったな。女性性を否定するわけではなく、なんでだろうって不思議でしょうがなくて。女子校に行ってて、可愛い子、大好きだけど、でも性的対象は男性だし。なんだろこれ、すごい生きづらいんだけど、みたいな。

原田:そうなんだよね。すごい分かるわよ。だからさあ、自分の中の男女すら別れちゃってるせいで分離が進んじゃう人って多いと思う。別れすぎだから中性を目指した方が男も女も幸せになれるんじゃないかな。
 でも人によっては根っから男100%みたいな人もいるから、それはそれでまた別だと思うのね。あいの子さんたちは、自分の中の異性みたいなものを許容して、認めて、統合していくと、自分の内側で仲良くしていけるんだと思うんだよね。

リズ:それこそHARASHOWさんの歌詞を聴いたり、読んだりしてる中で、私が光になれるのかもしれないってすごく思えた。真っ白か真っ黒か、じゃなくって灰色だし。それこそ虹色なんだよね。色んな色がマーブル状になってることもあるし、オーロラみたいになってることもあるし。どんな形であっても命ってめっちゃ綺麗だよね。

原田:本当にそうだね。全てが尊いなと思う。

リズ:いつまでも、5時間でも6時間でも喋っていたいけど、そろそろお時間が。今日は普段とはちょっと違うHARASHOWさんのバックグラウンドを聞かせてもらえました。今日この時間を作っていただけて、めちゃめちゃ嬉しかった。

原田:リズみたいに表に立つのは怖いよ。でもその役割を担える人っていうのは、いるんだよね。だから自分がそうだって自覚できてるなら、思いっきりやってほしいな。

リズ:今日はお誕生日に、なんだかとても良いスタートになった。本当にありがとう。

原田:よい一年にしてね。ありがとう。



この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?