タルボット

タルボットは、ねこである。
タルボットの毛並みは短くて、黒くてツヤツヤ。

そして、タルボットは本を読むのが大好き。

縁側に腰かけて、メガネをかけて、後ろ足の先を組んで、本を読む。特に好きなのは、詩集。

「こがね色の水面
ぼくらが滑り出す船の下を走る
光る鱗、鱗、鱗」

タルボットは考える。鱗の持ち主の魚は、どんなお味だろう?船から前足をのばしたら、つかめるかしら?

ねえ、タルボット?と話しかけてくるのは、トラオさん。タルボットの名付け親だ。字も教えてくれた。「こんど、お店に出す新しいマフィンの味見をしてくれない?」

タルボットは、マフィンなんか、好きじゃない。でも、トラオさんは、ほかに味見をしてくれるおともだちがいないのだ。かわいそうに。一口だけ、食べてあげる。

「ねこには、あまい」とタルボットは率直に答える。
「そうか、おいしかったなら、よかった」とトラオさんは、前向き。

やれやれ、とタルボットは魚の夢に戻る。

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