バンコク6
5日目の朝、孫正義さんがオフィスで事務仕事をしながら、ぼくが通りすぎる時に、白井くん、わかるよ、40代はね、この辺にくるんだよね、と背中のみぞおち辺りをさすって、ニコニコしながら、目線は机の作業をしつづけている。背後には書籍の棚があり、部屋全体が真っ白で、蛍光灯のあかりもホワイトすぎるくらい煌々と真っ白く光って影がない。ぼくは通りすぎてから地球をめくるように洞窟のなかに入ると、むこうの山から煙がもうもうとあがり、火山が噴火をはじめ、焼けた巨石がひとつずつ、こちらにバウンドしながら飛んでくる。それでも机を離れずニコニコしている孫さんに「孫さん噴火してるからこっちにきてください!」と声をかけても、しばらく仕事をやめなかったが、繰り返し声をかけると、噴火の方向を一瞥して、巨石がおおきく跳ねながら、目の前を飛んでいくのをみて、流石に危機を感じたようで、走って、地球をめくったなかに来たので、ぼくは地球を掛布団のように掛けて、身を隠した。
布団のなかから、みんなの様子をみていると、みんなどんどん激しくなる噴火に、この場にいては危険だと察し、どんどん雪崩のように、高速の高架の下を逃げだした。その間も、巨石は火を噴きながらバウンドして、ひとつずつ飛んでくる。
けっこうギリギリに飛んでくるのを、みなさん以外と立ち止まったりしながら避けて、ぼくと孫さんも結構真剣に、しかし避けられない感じもなく、かわしていく。まだ被害はないようだ。すると、金髪の若い男女のカップルの男の子のほうが、その飛んできた火を噴く巨石を素手でキャッチして、みんなが「え!」と唖然とするなか、巨石にこびりついてる3、4個の牡蠣が、ちょうど美味しい感じで焼き牡蠣になっているのをむさぼり食いだした。あ〜牡蠣が食べたかったんだ、という所で目が醒める。
昨夜の恒例テラスチルで話した、明日のザックさんのオススメは、バンコク美術館とジムトンプソンだったが、美術館が休館だったので、ジムトンプソン一択にきまる。
バンコクでは基本ノープランと決めているので、のんびり3人でセレンディピティに散歩。
ノープランにすると、たちまち子どものような、学生のような気分になる。
予定を決めるのが億劫なまま、全人生をすすんできたが、心配しなければ案外、すべては実は、結局だいじょうぶだ。
さっきの夢のように、あのくらい大胆な展開が楽しくてしょうがない。
それが宇宙の真実だよと、25歳からの3年間ほどで、意識に焼きつけられた。
そう生きないと死ぬよ!と言われたようなものだったし、実際、地球人は瞬間瞬間、バイブスが死ぬほうを選びがちだ。
結局どうあがいても人は死なないのだから、バイブスが死なないほうを選んだほうがいいに決まっている。
と言い切れるほど、バイブスが楽しいことは、楽しい。
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