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超重要:2022年労災基準改訂に伴う自賠責事案への諸々の影響と実態報告

今回は、業界の対応的に重要事項でもありますし、そこから派生したレポが何件も寄せられているので、少しボリュームは濃く・多くなります。

本来は有料マガジンではありますが、少し業界に向けての告知も含めますので、前半の無料を少し多めにとって、後半有料部分は実態レポへの回答も含めてで2部構成になります。

①報告されだした労災基準改定に準じた対応

②通知が一部幻となっている?実際の労災改訂の内容を確認してみる

③そもそも保険会社・調査事務所がドヤるように、労災基準=自賠責保険基準なのか?

④このような改訂に伴う対応へは、どのように捉えるべきか?

⑤実例から、今後の対応策を考える
で構成していきます。


①報告されだした労災基準改定に準じた対応

昨年末くらいから、労災絡みに関する相談が来ていました。
最初は九州だったのですが、最近になっては本州からも報告が上がるようになってきました。

<報告その1>
自賠責料金表の中の初検時特別材料費ですが、今までは後療と同様、包帯や固定材料(テーピングなども)を使った際に請求可能でしたが、今日、保険会社担当から去年の12月から頚椎カラーやコルセット、ギプス材や副子しか算定できなくなりました(その他の包帯、テーピングなどはダメ)、その際に施術証明書に使用した頚椎カラーかコルセットかギプスなどを記入して、使った期間も記入して下さい、と電話をもらいました。


<報告その2>
交通事故事案なんですが、保険会社から連絡があり、『近接不可』とのこと。
労災準拠としているはずの自賠責の場合、労災には近接概念がないと聞いていたので、その部分は気にせずにいましたが、ここに来て戸惑っています。

しかも、その近接部位の改訂があったとしても所属会からはなにも知らされていないし、そんな改訂の文書って出ているんですかね?

本当の事かどうかも分からないし、これがなんのことなのか・・・?
いかがでしょうか?


まとめると

1:労災の改訂が2022年の秋にあり、労災準拠の自賠責としては支払いも同様にすると自賠責損害調査事務所からの回答もあるので支払いが出来ないとあった

2:内容に関しての大きなポイントは「初検時特別材料費として包帯・テーピング・サポーター等はNGとなった」「労災にも近接の概念が出来たので同様とした」

3:その改訂にかんする文書が、中々出てこない。知らないし聞いてもいないので真意が分からない

となるかと存じます。

当初、先人を切ったかのように報告が来たのは東京海上日動での報告ですが、その後もJAや三井住友などからも報告が来ており、自賠責保険に関する支払いを統括する、自賠責損害調査事務所からのコメントですので、これは全国に波及すると判断しています。

所属会等からの報告が無いので、保険会社担当の与太と思われている方もおられる様ですが、自賠責損害調査事務所が動いているので、これが新スタンダードになります。


なので、真意を確認するべく諸々を調べて見ました。

結論としては、通達等々はあります。

2022.10.1労災料金改定に関して『2.その他、留意事項 労災保険柔道整復師施術料金算定基準について、今般、柔道整復師の施術料金の算定及び審査の適正を図るため、算定基準の留意事項等に関する既通知、疑義及びこれまでの運用等を踏まえ、令和4年9月21日付け基補発0921第8号によりその取扱いを明確化しています。
※主に近接部位の算定方法や施術録の取扱い等について明確化しており、その内容は、原則、健康保険の取扱いと同様の取扱いとなっておりますので、ご留意下さい。』
とあります。

さて・・・問題はこの「令和4年9月21日付け基補発0921第8号」の存在が、一般化されておらず、なかなか確認出来ないというのが、周知の遅延に至っているということが影響しているのかと思われます。

ただ・・・どうしても、これらの問題に対して労災と自賠責を双方とも俯瞰して総合的に確認・分析・判断出来るソースが少ないのが現状です。

ですので、これらを業界への「正確なモノサシ」として今回の記事スタイルとさせて頂きます。


②通知が一部幻となっている?実際の労災改訂の内容を確認してみる

通知に関しては確かに上記の通達は存在します。
しかしながら諸事情もあるようです。

どうも、上記には8号の他に4号もあり、それは労働局長宛にありました。
そして8号に関しての内容は、公開する事情もあってか、なかなか周知されていないようです。

私は、機会があって閲覧できましたが・・・この場で、それを直接の流布が出来かねますので、かいつまんで上記ポイントを確認します。

<その1:特別材料費>

8号通達において
「4・その他の事項」に特別材料費に関しての設定が(4)とされ「ア:特別材料費の対象になるのは、使用した固定部品が金属副子、合成樹脂副子または副木・厚紙である場合に限ること」とされ、これに関する文言から、包帯・テーピング・サポーター等がNGとなった
として判断されたと思われます。

<その2:近接部位>

8号通達において
「4・その他の事項」に近接部位に関しての設定が(1)ア~カ明記され、算定できる出来ないが書かれています。

概ねの内容が、ほぼほぼ療養費基準と同じになっており、労災の改訂に際して近接部位の概念が共通事項になった・・・と言うことが明確に採用されたという形になります。


以上の様に、保険会社が「自賠責損害調査事務所からの・・・」というコメント通りに、労災が上記の様な改訂をされ、準拠するということで同様に自賠責保険を統括する自賠責損害調査事務所が判断しています。

この判断は、ある意味で運営上では絶対レベルのですので「なんで保険会社や自賠責損害調査事務所の言うことを聞かなくてはならないじゃ~!」と感情を荒げれば荒げるだけ無駄です。

仮に裁判になっても、司法判断は自賠責損害調査事務所の判断を尊重に近い形で採用します。


抵抗しても民法709条の観点から「じゃあ、その請求するだけの証拠を出せ!」となります。

自由診療ではあっても、無条件に請求出来る訳では無いので、ある一定の目安は必要になります。
その目安を、公的保険を準拠するという、最強レベルのソースで採用しているので個人戦で覆す事は、不可能だと判断します。

まぁ・・・法治国家でありながら、特別に除外をしたいのなら、この国の独裁者になるくらいしか無いので・・・やはり無理ゲーという事になります。

③そもそも保険会社・調査事務所がドヤるように、労災基準=自賠責保険基準なのか?

これに関しては

・交通事故損害賠償の基本は「民法709条」

・民法709条には「相当因果関係の立証責任」があって、請求する場合には相応の根拠説明が必須となる

・これを交通事故用にしたのが自賠法であって、被害者救済のための最低限補償確保が自賠責保険の存在

・ただ料金設定を強制すると独占禁止法に抵触する可能性がある

・なので「手上げ方式の日医基準」「目安料金表」が制定されている


とこれまでも説明してきました。

なのに労災保険がそうだからというのは矛盾しないか?と疑問に思う人もいるかも知れません。

ここに関しては、そもそもが自賠責保険を作る際に、労災をベースに作っているのがあります。
それが証拠に、「後遺症」ではなく「後遺障害による逸失利益」という考え方があります。

これは医学的な根拠は必須ですが、後遺症とは違い労働力の損失を、賠償でもって補填する考え方に準えています。

逆に労災でないと、受傷等から発生する給与の減少や、将来にわたり得るべきだった収入の補填、はては帰宅後の住居の改造や職業介護人等の費用の請求が計算出来なくなるから。

単なる傷病を治す為の保険という健康保険とは、違った立場と補償なのです。
証拠に、健康保険には損失補填の概念が無いですよね?


まぁ細かいこと言うと、労災には慰謝料の概念は無くても自賠責にはあるとか・・・でもやはり、労災ベースにして損害賠償の損失補填として保険の成り立ちをする自賠責であるならば、準拠元の労災の改訂に伴って、同調したことは、何ら不思議はありません。


④このような改訂に伴う対応へは、どのように捉えるべきか?

以前より、勉強会では某保険会社の目安表に添付されていた、部位に関する説明箇所を使用して説明していました。

その会社の目安表には、近接を含めた部位に関する取扱範囲目安が示されており、概ね療養費と同様になっていました。

私としては、それらが明記されている場合は、明確な基準に近いのでその提示から大きな乖離が無い限りは、その点でモメルことは回避出来ると判断。

なので、準じた方が良いと展開してきています。

ただ
「そんなのは自由診療なので、コッチの基準で当然請求する!」
としても、その基準と請求の差を証明する義務が発生します。
そしてその義務の遂行責任は患者さんが背負います。

くり返しますが・・・患者さんが背負います。

医療従事者の所で揉めて止められるのは、まだ良いのです。
問題は
「貴方がかかった先の所が、損害賠償上において不適切な対応をしたので、他の慰謝料等から差し引きますね」
という事になったら・・・

いや、そういう事もあるので申し上げています。

医療従事者側の「交通事故なんだから・・・こうだろう!」という根拠のない思い込みは危険という事になります。

なので、今回の様に、ある意味エビデンスがある改訂には対応するべきかと思われます。

ただ、多くの案件でもあるように、告知が大々的に行われているわけでもありません。
今回の「特別材料費」「近接部位」が請求してみたら、自賠責損害調査事務所からのリアクションでNGが判明したという事態は珍しく、かつ先に回避することは難しい。

なので、このマガジンで無料エリアを拡大してお伝えしています。
拡散して頂くと、業界にも周知されると思われます。

さて・・・今回の改訂を「改悪だ!厳しくなった!」とコメントする方もおられるかも知れません。

ただ私はそうとも思えないのです。

これまで
「ジバイだって支払いを療養費みたく明確に基準化した方が良い」
という意見も耳にしています。
療養費は支給基準が明確化されていますからね。

対して自賠責に関しては「回避されていない曖昧」が多く存在し、曖昧の中で「認める・認めない」でやってきていました


しかし、私自身は逆に
「医学的根拠を示せば曖昧でも認めるがあった」
として、むしろ曖昧さが残った方が良いと思っていました。

曖昧さを回避して明確化した・・・今回の労災改訂の影響が、それに走った感があります。

それに準拠して、自賠責保険が明確化に追随した・・・そう、明確化したが故に認めないも増えるのです。

しなくて、あえてチャンチャン解決が出来たものを・・・がNGになったという事です。

ですので、無料範囲での説明としては

・確かに、労災は2022年秋の改訂で、療養費と足並みを揃えるようになった

・現時点で、質問を受けて確認されている費用に関しての影響点は「近接」と「特別材料費」

・自賠責保険は、健保ではなく労災を準拠とし、損害賠償用に修正されている公的保険なので、準えての運用に矛盾点が無い

・自由診療を盾にして抗弁しても、ベースとなる労災の改訂があれば司法判断もそちらを参照するので、全くもって意味が無い

・制度改定として、受け入れるべきであり、保険会社サイドは先に周知に積極的では無い(というか、そんなヒマは無い)ので知識での自衛に励んで下さい。

くり返しますが、今回の8号の公開範囲が限定的で、かつその内容を先に知った自賠責損害調査事務所が先陣切って規制に走っています。

保険会社担当も、大々的に情報公開されてでは無かったと思われます
(現時点では、周知は進んでいると思われます)

我々側の業界も、青天の霹靂であったはず。
知った人間だけしか対応出来ることでしかありません。

ここまでは到達できればどなたでも閲覧可能ですので、周囲に拡散頂けますと幸いです。

さて・・・次項からは、マガジンですので購入者だけに閲覧できる、実例になります。



⑤実例から、今後の対応策を考える

以下、実際に頂きました今回に関する事例における私の回答になります。
<質問1>
いきなり近接不可?診断書でも部位は間違っていないのに?労災改訂を保険会社は言ってくるが・・・自賠責は違わないか?

<質問2>
軟性サポーターを出したら労災改訂により認めない?既に出してしまっているのにどうするの?

の2点でご案内します。



<質問1>いきなり近接不可?診断書でも部位は間違っていないのに?労災改訂を保険会社は言ってくるが・・・自賠責は違わないか?


質問内容:東京海上日動より『近接不可』とのことで連絡してきました。
診断書上では
・頭部打撲
・頚椎捻挫
・両肩関節捻挫
・左手打撲

となっており、当院では

・頚部捻挫
・左肩関節捻挫
・右肩関節捻挫
・左中手部打撲

で4部位請求でした。診断書にそった形になります。

ですが保険会社より、近接部位により左右肩関節捻挫のうち、どちらか1方になると言われています。

自賠責は労災準拠とかは聞いたことがありますが、労災には近接概念がないので、その部分は気にせず、とにかく治療が必要な根拠を全力で伝えるつもりです。

しかしながら、所属会含めてどこからも聞いた事は無いし、そもそも労災では無くて自賠責なのでおかしいとは思っています。

杉本回答
→気持ちは分かりますが・・・

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