マガジンのカバー画像

短編 / 掌編

11
エコバッグに詰め込んだアイディアたち
運営しているクリエイター

2024年7月の記事一覧

掌編『ざわざわ』

 僕が初めてあなたに会ったのは雨の日だったね。  僕は仕事の帰りで広い車の中で快適に後部座席に身を沈めていた。そう、結構良い仕事をしていたんですよ。運転手なんてつくくらいのね。 土地の開発の為、森林の整備をする。この日全ての契約が纏まり、天気とは裏腹に心の中は達成感で一杯だった。  あなたはその日、誰かを待つように公園のブランコに揺られていた。 袖のない薄紫色のワンピースを着て黒くて長い髪をアップにして雨風に身を任せていた。洋服が雨に濡れてあなたの肌にしっとり張り付いていた