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こんにちは。幸坂かゆりと申します。 こちらは更新、案内ページです。このマガジンは2004年頃から同タイトル『ソファーの上でロマンスを』という拙ブログにて書いていた短篇を纏めています。当初、敬愛するアーティスト、大澤誉志幸さんの曲名を小説化して書くという目的を持っていたのですが、あまりにも曲が膨大なのと自分で聴き込んでいないもの、難しいと感じるもの等が多くなり、当時は毎日のように更新していましたが書けないまま放り出した形になってしまいました。 けれど、大澤誉志幸さんのタイト
ひどく臆病だから、あたしはこの先一生ひとりのままで過ごすのかも知れない……。 ゆき子は内向的で、ずっとこんなふうに思いながら過ごしていた。 そんな彼女の気持ちが揺れているのは、この間行われた高校での学園祭の時からだった。ゆき子はため息をついてベッドに転がる。枕をぎゅっと抱きしめて目を瞑った。とあることを迷っていた。 迷いは学園祭のその日、無事終えた打ち上げのダンスパーティーが行われたことがきっかけだった。学園祭とは別なので参加は自由だったが、活発なゆき子の友人に誘
「マイって女を捜しているんだ」 その日突然、大柄な男がバーのドアを乱暴に開けて訊ねて来た。 深夜まで営業している海沿いにあるこの小さなバーには、時折、漁師たちも訪れ、たまに潮に乗って荒くれ者もやって来る。この男もその一人だろう。 「……どんな方ですか?」 若いバーテンダーがグラスを磨きながら切り返す。 「凄く美人でプロポーションが抜群なんだ。長くてツヤツヤした真っすぐな黒髪で」 「今日は黒髪のお客様はいらしていませんね」 バーテンダーは慣れた口ぶりで間髪入れずに答える
「つきあっている人がいるんだ」 彼は彼女に向かってこう言った。好きです、と告げられた返事だ。 「そう、残念だわ」 彼女は淡く微笑んで答えたものの、一瞬だけ意気消沈した面持ちを彼に見せた。彼と彼女は同じ職場にいたが彼女が退職するという今日、会社を出てから外で声をかけられ、彼は突然、上記のような愛の告白を受けたのだ。 彼女を嫌いな訳ではなかった。快活で嘘のない笑顔がきれいで。ただ彼には恋人がいた、と言うだけだ。 「はっきり言ってくれてありがとう。仕事では今まで色々とお世話に
真夜中、彼女に呼び出された。 呼び出しはいつも急だが、虫の知らせなのか、いつも5分程度で出掛けられるようにオレの準備が整っている時に連絡が来る。薄手のジャケットを羽織り、待ち合わせた場所まで車を走らせた。 既に彼女が待っていた。クラクションを軽く鳴らして合図を送るとすぐに助手席に滑り込むように乗り込んできた。 「久し振り。どうした? こんな時間に」 「いいじゃないの、たまには。ドライブしない?」 彼女は長年の女友達だ。シートに落ち着くやいなや、おもむろにバッグから煙
目を覚ますと、一瞬ここがどこか判らなくなった。 国際線の飛行機の中、ナナは周囲を見渡して思い出す。 こうして飛行機に乗っているのにまだ迷いがある。もう空の上だから後悔したって遅いんだけど。ナナはシートを倒してもう少しだけ浅い眠りに入った。目的地まではまだ時間がかかる。 それは突然だった。 土日祝日等とは縁のない仕事をしているナナに五月のゴールデンウィークは頭になかった。いつものように健やかに眠り、朝になり、新聞を取りに郵便受けを見に行くと見た事のない封書がナナ宛