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私の変な不妊治療 5「牧場主と私」

ご覧くださりありがとうございます。

「わかったここは牧場だ!」

初めての採卵手術に向けて、毎日注射を打ちに通院していた頃。何度も尻尻言ってくどいけれども、やっぱり尻に注射をしてもらうことにして本当によかった。マヌケな分だけ楽しくなれます。毎日ペロンペロンと尻を出し、針をさされているうちになんだか頭によぎるようになった一つの風景がありました。

それは豚のお尻にブッスーという擬音つきで注射針が突き立てられている漫画のワンシーンです。(「動物のお医者さん」?)

いつしか私は妄想の中で家畜になり、優しい牧場主さんにワクチンを打ってもらい、元気にまきばへ飛び出してゆく…そんな気分になっていました。

「牧場主さん、今日もありがとうぶひー!」

「いいんだよ…さ、元気にお外で遊んでおいで」

「うん!」

サスペンダーをしてキャップをかぶったぷりぷりの子豚が駆け出してゆきます。見送る人影は赤いオーバーオールに麦わら帽子、片手に熊手。背後にはわらの山…。

妊娠~育児中は頭がボンヤリして身の回りのことしかできなくなる、半径3メートル以外手が出なかった、と子供を持つ友人が言っていました。似たようなことが女性ホルモンを飲んでいる間にもありました。この妄想もそれによるものだと信じたい。

一度、看護師さんではなく院長先生その人に注射を打ってもらった時があります。優しいまなざしに「牧場主さんありがとうございます」と心でつぶやき、口に出しそうになるのをこらえました。