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コロナで寝込んでるときに幻覚を見たのでいくつか紹介します

前置き

9月の半ばにコロナに罹りました。
メインとなった症状は
高熱、頭痛、喉痛という
ひとつひとつ取り上げてみれば
風邪の諸症状なのですが
とにかく質が違っていて
強烈な高熱、強烈な頭痛、強烈な喉痛といった具合。
それはそれはもう強烈な体験でした。
すでに罹患された方、
あなたの気持ちがようやくわかるようになりました。
これは本当にイヤなものですね。
罹らないに越したことはないです本当に。

一方で、ぼくの場合は上の症状に加えて、
幻覚が見えたり聞こえたりすることがありました。
実は子どもの頃から
高熱になると変な映像を見ることは稀にありましたが
さすがに知らないひとの声が聞こえるということはなかったので
幻覚に気づいたときは正直かなり怖かったです。

このままこの狂った世界で生きていくことになったらどうしよう、
元の世界(現実)に帰れなかったらどうしようと
不安に苛まれながらも、
あとで笑い話にでもならないかとおもい
気力のあるときにいくつかメモを取っておきました。
以下はそのメモを見ながら幻覚の記憶を辿った
いくつかの断片的な文章です。

1. 絶対課題出すマン

絶対課題出すマンが出してくる課題の例。何も考えずに指でなぞってるだけで解ける迷路。

迷路のようなものが書かれた白い用紙が目の前にあり、
ぼくがそれを指でテキトーになぞると面白いように解けていく。
子どもでも解けるような難易度で作られた、
精神分析の課題かなとおもいながら
ぼくは黙々とその迷路を解き続けるのだ。

しかし、ふと気づく。
あれ?
いったい誰がこの課題を出したんだ?
(ぼくは今ひとり部屋で横になってるはずだ)
なぜこんな高熱で苦しいときにこんな課題をやってるんだ?

そうして目をあけると、そこには課題も何もない。
じぶんの部屋があるだけだ。

ぼくはこいつを「絶対課題出すマン」と名付けることにした。
こいつはまったくこちらに姿を見せないが
隙あらば何か課題や問題を解かせようとしてくる。
目を閉じるともう課題が始まっていて、
ぼくはなんの疑いもなくそれに取り組み始めているのだ。
まるでアマチュアの作ったゲームみたいに、
起動したらスタート画面も説明も何もなしに
いきなりゲームが始まっていて、
プレイヤーはもうすでにその渦中にいるというわけだ。

課題の内容は迷路だけではなく、かなりの種類があったが、
残念ながらそのほとんどをメモする余裕もなく忘れてしまった。
単純に次から次へと発生するので間に合わないという
物理的な難しさもあったが、
そもそも言語化するのが難しい荒唐無稽で意味不明な課題が多かった。

2. 音符を運ぶペリカン

足りない音符を補給するためにスタンバイする2羽のペリカン。常にこちらにケツを向けている。

これは先に紹介した「絶対課題出すマン」に関連するものだ。
課題にはいろいろなものがあって
そのなかには音楽に関するものも含まれていた。
具体的に言うと、たとえば
いま聴いている曲(ぼくは病床でも音楽を流し続けていた)に
「ド」の音が足りているかどうかをチェックするという課題があった。
この「ドが足りているかどうか」の判断基準は正直不明だ。
ぼくが足りないとおもったらチェックが入り、
ドの音符が補強されることになる。
(ドの音を補強するというのがどういうことなのかも理解する必要はない。当のぼくにもよくわからない)
このドの音の補強作業をするために
かたわらで常に2羽のペリカンがスタンバイしている。
なぜかペリカンは常にこちらに尻を向けており
肩から石で出来たレールを提げている。
まるで古代ローマから脈々と受け継がれてきたかのような
重厚で、年季の入ったレールだ。
ぼくが「ド」の音が足りないとジャッジすると
ペリカンたちはこのレールを据え付けて
そこから「ド」の音を差し入れる……。

書いていて馬鹿らしくなるほど
すべてが荒唐無稽だ。
しかし、こちらに向けられたペリカンの尻がやたらと印象に残っていて
今後も事ある毎に思い出しそうな記憶となった。

3. めざましのお姉さん

これは声のみの登場。
彼女が登場したシチュエーションは具体的に覚えてないが、
はじめてずっと喋ってた頭の中の声を
「これが幻聴か」と認識したので衝撃的だった記憶はある。

「○○に合うように1番、2番、3番をかわいくアレンジしてもらいました〜」
「まずは1番から見ていきましょう」
というようなことをひたすらに喋っている。
これは前後の脈絡とか喋ってることに意味などは特になく
おそらく過去にテレビのニュース番組などで耳にした
大量のフレーズの断片を高速でつなぎあわせているのだとおもう。

「めざましのお姉さん」と名付けたのは
寝ているところを起こしてくれるという意味ではなく、
いかにも朝のめざましテレビで意味のない情報を垂れ流し続ける
量産型女子アナっぽかったからである。

4. 三角くん

三角くん。幻覚と気づくまでかなり時間が掛かったほど常に当たり前にぼくの傍にいてくれた。

スーパーマリオブラザーズ3のような配色のゴルフ場を
直角三角形に切り取って、アラレちゃんのキャラのような手足を生やした、
そんな出で立ち。

三角くんとは、ぼくの枕元のティッシュ箱に手足が生えた存在だ。
彼の仕事は、ぼくが喉に引っかかったツバ(痰?)を吐き出すときに
旗を持った手を振ってアピールすること。
目を閉じているときは三角形の平たい形をしているが、
目をあけてそこへ目を向けるとそれはただのティッシュ箱。
まったく違う姿なのに、ぼくはそのティッシュ箱と三角くんを
同じものとして同一視して疑わなかった。

あまりに自然に存在していたため、
他の幻覚に比べてその存在が現実でないことに気づくのに
かなり時間が掛かった。
非常にコミカルで愛着が持てたが、
残念ながら熱が引いてからは全くその姿を見ることはなくなった。
高熱を出すのはもう勘弁願いたいところなのだが
三角くんとまた会えることはないだろうかと
少しさびしく思いもする。

5. 指先のギャング

指先のギャング。とにかく高音でよく喋る。いちばん気が狂いそうになった幻覚。

人差し指、中指、薬指に割り当てられた(正確には違う気がするのだが、ぼくの頭はそう認識していた)ギャング三人衆。

彼らは常にゲームに興じている。
ぼくが小学生の頃に学校で流行っていた「バトル鉛筆」というゲームに近い気がする。
何と戦ってるはずもないのだが、
ターン制で「正面」・「側面」・「上面」を順繰りにまわりながら
(この3つの分類もよくわからないのだが、とにかくそういうことになっていた)
このテーブルゲームのようなものを進行させている。
毎回サイコロかルーレットのようなものをまわして
出目に応じてゲームを有利にしたり不利にする何かの効果を得て
一喜一憂する。それを延々と繰り返す。
そしてずーっと喋っている。
寝たいのに無視してそれぞれの効果について
律儀に読み上げたり演出したりするのだ。
何度も繰り返し遊んでいるからなのだろうが
何を言っているかはさっぱりわからないのだが
すでに彼らのなかで定番のギャグがあるようで、
内輪ネタのように笑うノリも見られた。
頻繁に眠りを妨げられて、
コロナ療養中、最も気が狂いそうになる幻覚だった。

おわりに

聞いた話によると
コロナに罹って幻覚を見たというひとは
少ないながらも存在するらしく
見るものもひとによって様々のようです。

実際に幻覚というものを体験すると
直接ひとと話せないということもあって
どれが現実でどれが幻覚なのか判断できないのが
何よりも怖ろしいことでした。
ぼくは普段ヒト嫌いで、
他人と話すのを煩わしいとおもいがちな人間なのですが
この幻覚に苦しんでいたときは
とにかくひとと話したい、他者との繋がりを感じたいと
切実に思いました。
そんなことは初めてでした。

しかし、こうしてメモを通して振り返ってみると
コミカルなものが多くて意外でした。
幻覚そのものは本当に連日大量に見ていましたが
そのほとんどが荒唐無稽、意味不明で言語化するのが難しく
記憶からどんどん消えてしまいました。
今ではメモに残しておいたもの以外
ほとんど思い出すことができません。

なのでここで紹介したものは
ほんとうにごくごく一部に過ぎませんし
限りなく個人的なものなので
「わざわざ公開するような内容か?」と
投稿をためらう気持ちも若干あったのですが、
ぼくと同じような体験をされた方にとって
何かうれしい繋がりを感じてもらえたり、
もしまだ幻覚を見たことがないひとが
この記事を読んだことで
実際に幻覚を体験したときに
多少恐怖心が減ったりだとか、
そういうことで役に立てることもあるかもしれないなと思い
noteで公開することにしました。

もし何かおもうこと、気づいたこと、
面白いとおもったことなどありましたら、
コメントで教えてくださると嬉しいです。

以上、にらたでした。


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