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期間限定の記録

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小さなこどもたちが教えてくれること。できれば忘れたくないから。 育メンのふりして過ごすささやかな時間の記録
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ステイマンの賞味期限(子育ての話)

夜な夜な現れては、家に散らかるオモチャを捨てる”清潔の怪人ステイマン”。 「オモチャ片付けんと正義のヒーロー ステイマンが来るよ」と言うと、子供たちは「ヒーローじゃないし」とか「どうせ おとうじゃろ」とかくちごたえしながらも、玩具をちゃんと片付けていた。 なんといいアイデアを思いついたものだと自画自賛していた……が、時が経つにつれ、ステイマンの存在意義は怪しくなった。 彼らが片付けていなくても、先週の誕生日に買ったロボットをゴミ箱に捨てることなんてステイマンには出来ない

ひとつのことばがせかいをかえた

三歳になった息子。覚えたての言葉はぎこちなくてどことなく暖かい。 窓の向こう。消えていったサイレン。 消防車のミニカーに夢中だった彼は本物のそれが近くにいたことに気づけなくて一生懸命教えてくれた。 「僕も聞こえたかった」 聞きたくても聞けない音があることを知っているみたいだ。 能動と受動。積極だけど受身。自発と他発。望むけど偶然待ち。 そんな言葉があってもいい。 国語のテストでどうかマルをつけてあげてください。 レジで駐車券を車内に忘れたことに気づいた。 疲労もそこそこあ

あなたのつむぎかた。ぼくとつながるもの。

それは日本語でなくていい。なんなら言葉でなくてもいい。 擬音でも手を叩く音でもうめき声でもいい。 落書きでも身振り手振りでも怒った顔でもいい。 僕の知らない誰かに恋をして、胸を右手でぎゅっと掴まれる感覚だったら、きっと言葉だけじゃ足りなくなるから音にのせて歌えばいいよ。 遠くに見える山は青くていい。みんなが言うように緑じゃなくていい。 夏を迎える日の夕暮れどきの不機嫌そうな曇り空は、あなたのいうようにエメラルドグリーンだ。 あなたと僕をつなぐもの。 あなたの想いや感

かわいい時間の愛おしさ

ちょっと苛立った日にふっと力の抜けた まだ幼い娘と息子の言い間違いと聞き間違い。 * 僕:お母さん。鼻詰まっているからしんどそうだね。 娘:いきでくちしたらいいんよ。 口で息ね。想像すらできない言いまつがい。 * 息子:おやつ食べたい。 僕:気のせいだよ。 息子:きのうのせいじゃない。きょう食べたいの。 昨日のせいって思ったのね。時間に関する言葉の理解が最近増えてきた。だけど、将来は全て「明日」だし、過去は全て「昨日」。それでも時間が進んでいる感覚がちゃんと

その感覚のままでいて

洗面所で顔を洗っていると三歳の息子が歌いながら後ろを通っていった。 「きみの おっぱいは せかいいちー」 かわいらしい声でなんとも大胆に。 「なにその歌?」 「すぴっちゅ」 嫁に確認すると、最近その歌詞が入っているアルバムを部屋で流していたらしい。 アルバムだから、何曲もあるじゃん。しかも曲の中にいろんなフレーズあるじゃん。まあ、いいや。 いや、ちょっと待てよ。 おしゃべり大好きな彼は、家でのことを保育所の先生によく話しているらしい。 もし彼が何気なくこれを