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喜べ新高1。君たちの評定は4 or 5だ。

高校でも今年の入学生から,新しい指導要領(平成30年告知)に基づいて,観点別評価をつけろとのお達しが来ている。新しい指導要領(平成30年告知)では,生徒に「知識・技能」「思考・判断・表現」「主体的に学びに向かう姿勢」の3つを身につけさせろと謳(うた)っている。だから評価も,この3つがどのぐらい身に付いているかという観点で,それぞれ評価せよという建前になる。例えば知識技能A,思考判断表現B,主体性Cといったように。

通知表には「数学ⅢBBC,化学AAB,物理BBB」といった具合に観点別評価が羅列される。小学校や中学校ではすでに実施されていて,特に問題は起きていない(という建前になっている。実際には中学で色々問題が起きているらしいがここでは触れない)。ところが高校では,とっても厄介な事になりそうだ。評定平均値が推薦入試の出願条件に絡んでくるからだ。

現状,多くの高校ではまず10段階評価を決め,それをさらに5段階評定に換算している。評価10・9・8を評定5,7・6を評定4,5・4を評定3,3を評定2,そして赤点の2を評定1に換算する所が多い(評価1は普通つけない)。平均的な生徒の10段階評価は6か5(6多め),5段階評定は4か3(4多め),結果として平均的な生徒の評定平均は,3.8~4.2ぐらいに収まる。

現行の5段階評定

このぐらいの相場観は,大学の入試関係者にも共有されていると思う。人気がある大学の推薦入試なら「出願できるのは平均評定が4.1以上」と強気の条件が設定されている。どうにか人を集めようと,「出願条件は評定平均3.3以上」なんて緩い条件の募集単位もある。多少成績が悪いのに目をつぶるなら3.3~,平均以上の生徒が欲しいなら3.8~,上位層が欲しいなら4.1~といったところだ。

新しい制度でも,結局のところ観点別評価(AAA~CCC)を5段階評定に換算しなければいけない。大学に送る調査書には「数学Ⅲの成績はBBB」ではなく「数学Ⅲの成績は4」と記す。これは現行と変わらない。問題はAAA~CCCをどう換算するかだ。例えばAを3点,Cを1点と読み替えると,AAAは9点,CCCは3点だから,9点から3点の7段階評価から5段階評定への換算表を作る必要がある。現行の10段階→5段階の換算表は流用できない。

AAAを評定5,CCCを評定1(落第)とするのには異論が無いだろうが,普通の生徒の平均的な成績をどこに置くかが決めづらい。うちの県教委は「平均的な生徒には観点別評価BBBをつけて,評定は3(概ね満足できる)にせよ」と主張しているらしい。こうなると換算表は次のような感じになる。

新しい換算表(案1) 平均3.2になっちゃった・・・
注:ABCは3+2+1=6点でBBBと同じと見なしている。他も同じ。

試しに今年の担当科目の成績から観点別評価をこしらえて,さらに5段階に換算してみると,全生徒の評定平均の平均値は3.2になった。全科目そんな調子なら,推薦入試にはごく一部の生徒しか出願できないことになる。これは非常にマズイ。

ならばということで,BBBに評定4をつけて評価のシミュレーションをすると,今度は平均値が4.3。甘いなあ。良い点をつけたほうが生徒は喜ぶけど,あまりにも甘すぎると普段の指導に差し支える。この基準だと中の上より上の生徒は,全員同じ評定になる。やっぱり駄目だこれ。調整の余地,自由度みたいなものは現行のものとそれほど変わらないが,「推薦入試の出願難易度は現状維持でお願いします」という(暗黙の)制約がきつい。

新しい換算表(案2) 甘すぎかなあ(平均4.3)

大学の入試担当はコレをちゃんと把握していて,3年後の入試では出願条件を再考してくれるんだろうか。しないだろうなあ。文科省はこの辺の詳細を詰めたのか,あるいはこれから詰めるつもりなのか。いや,何も考えてないだろうなあ。英語の民間試験のアレとか,記述式問題導入のアレとか,e-ポートフォリオのアレとかから察するに,まともな調整は期待薄だ。

土壇場で話がひっくり返って,正直者がバカを見るのが最近のトレンド。ならばこういう場合の常として,どの学校も安全側に倒して,甘めの換算基準を作るだろう。そうやって甘々の基準にしておけば,状況がどう転んだとしても,推薦入試で生徒と自分たちの首を絞めることが無い。うん,生徒に迷惑かけちゃいけないよね(ニッコリ)。

良かったね新入生諸君。君たちの評定は4と5ばかりだよ。

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