silver story 【バリの神様】#21
#21
静かな時間が流れていった。
二人の涙は、二人のそれぞれの心の隙間をふさぐまで止めどなく流れているようだった。
私も彼女らの心にシンクロしてしまい涙が止まらなかった。
長い長い時間を行ったり来たりしたみたいで、この夜は深くて濃いものになっていた。
バリのシヴァ神にお母様は見いだされたのがもしれない。
破壊と再生の神様シヴァに。
今、長い年月を経て本当の心、本当の親子の再生へと導かれているのかもしれない。
揺れる木々、深い闇、虫たちの声、じっとりと流れる風、それらのすべてに神様がいるようで、神々の島と言われるここバリを否応なしに痛感してしまう夜だった。
もしかしたら、この日の出来事は、バリのヒンドゥー教の唯一の神 サン・ヤン・ウィディに私が見いだされて、そして導かれて行われている奇跡。そう、奇跡なのだ。そう思い込まないとあまりにも凄いこの事実を理解出来ない。受け止めきれない。
うごめく闇を見つめながら
このまま朝を迎えてしまうのが恐いくらいだった。
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