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Silver Story #62

「サヤ、オキテクダサイ。モウスグツキマス。」

体を揺さぶられて目が覚めた。
私あれから熟睡していたんだ。
最後に、目が覚めたら日本でって祈ったのが良かったのかな。(笑)

サリナちゃんも起きて私の顔を見て笑っていた。
やっと日本に帰って来たんだ。
なんだか何年も日本を離れていた感じがするのは、この空気なのか湿度なのか、あのまとわりつくジメッとしたものがないというのは、時の長ささえも勘違いするくらい環境の違いを感じさせるものだったんだとつくづく思った。

飛行機は、無事空港に着きシートベルトを外すサインが出たので、お決まりの、荷物を降ろし通路に出るタイミングを見計らって脱出する行動に移った。
サリナちゃんも必死になって私の後に続いて来た。

飛行機が初めての彼女は、どんなふうに感じたのだろう。
本当のおじいちゃんと会うということは理解しているのだろうか?
ユキさんがどのように彼女に話しているのかわからないので、あえて私からは何も聞かないでいた。ただ、初めての日本を楽しいものにしてあげたいと思い昨日から修学旅行の計画のように、ネットでいろいろ連れて行くところを検索してプランニングしていたのだ。

ユキさんは、早く光一さんに
お父さんに会いたいのかもしれないが、まずは日本を楽しんでもらいたいから少しの間我慢してもらう。

「ユキさん。まずは、ホテルに行きましょう。荷物を置いてそれから連れて行きたいところがありますから。いいですか?」

「ハイ。ワカリマシタ。ココガ
パパノイル ニホンナノデスネ。モウスグ パパニ アエルノデスネ。」

「そうですよ。ただ会うのはもう少し後になります。いいですか?」

「ハイ。ワカリマシタ。ニモツヲオキニ ホテル イキマショウ。」

ユキさんがすぐにサリナちゃんに説明したのでサリナちゃんは、ニコニコしながら私の手を握ってきた。

彼女にとっても、特別の時間が始まるから私は、いろんな願いを込めてギュッとその手を握りしめていた。

ホテルまでタクシーに乗って2人をチェックインさせ、とりあえず日本食を食べに行くことにした。

私もずいぶん考えてサリナちゃんが、食べやすいようにお蕎麦屋さんに連れて行くことにした。
麺類ならフォーと同じ感覚で食べやすいと思ったからだ。

立ち食い蕎麦の「富士そば」
自販機で券を買ったり あっという間に出てきたりするのでそれはそれで日本の文化だと思いそこにした。富士そばは、私の中では自慢できるお店なのだ。

初めての日本食で初めてだらけの体験でサリナちゃんはずっとニコニコして飛び回っていた。
あの日の夜の踊りのように軽やかに踊っていた。違うのはその笑顔がイキイキとしているところだ。

ユキさんも、お蕎麦は気に入ったらしく、やはり日本人のDNAがいくらか入っているからだろうか、蕎麦屋は正解だったようだ。

その後、浅草や渋谷、明治神宮など外国の人が訪れる名所に連れて行き、日本を味わってもらった。

さあ、これからが本番なのだ。

私は観光させながらどうやって
光一さんとの再会を演出しようかといろいろ考えを巡らせながら過ごしていた。

「ユキさん。そろそろ行きましょうか?大丈夫ですか?」

「ハイ。サヤ、ダイジヨウブ。タダ ママ二デンワデキマスカ?」

そうだ!私としたことが、お母様に、無事着いたことを報告していなかった。

「そうでしたね。大事なことを忘れていましたね。私の携帯からかけることができますよ。」

私はお母様の番号を押して彼女に渡し少し離れたところにサリナちゃんと遊ぶことにした。

二人でゆっくり話してもらいたかったからだ。お母様がどんな願いで二人をココへ行かせたか考えただけで胸が熱くなってきた。

#小説 #バリの話 #あるカメラマンの話

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