見出し画像

Coffee story

通りに面したそこは、上から下まで大きなガラスで作られているので午前中は、キラキラとしていて眩しいくらいだ。半分シールドを降ろさないと晴れた日は、焼けこげるほど暑くなる。結構大通りに面しているのに、お客もちらほらでかなりゆったりできる場所。わたしが働いている喫茶店で、名前は『カフェRe-Q』。

歩道橋を渡り切った所から入れるショッピングモールの入り口にあり、素通りする客も多いが、月曜日のランチはけっこう忙しくてそれなりに常連も付いていた。
月曜日がなぜ忙しいかというと、土日に学校や会社が休みな家族の世話に疲れた主婦が、命の洗濯(笑)をしにやって来るからだった。

洗濯掃除と毎日の当たり前のルーティンに加え旦那と子供たちの 「ママ、ごはんまだ?お腹すいた。」攻撃にずっとあって過ごす2日間はかなりきついものがある。

一人だけなら朝昼一緒で良くて、なんならカップ麺だけでも良いわけだからその2日間の仕事量はかなりのものだ。
月曜日にみんながいなくなり、やっとゆっくりいつもの自分ペースに戻れる儀式、2日間のダメージに対するご褒美として、この『カフェRe-Q』にランチをしにくる。そんな主婦たちで席が埋まるのだった。たぶん彼女たちはナントカ会と名前をつけてその時間を楽しんでいる。子供たちの下校の時間までの間に彼女たちは命の洗濯(笑)をやっているのだ。彼女たちの口コミかだんだんと参加する人数が増えてきているようだった。

わたしが働いているのは、だいたい月曜日からの6日間で朝の開店からバイトの学生と交代する4時までの間で一人でやっている。たまにオーナーがやってきて、在庫管理や業者対応をしているが大抵は一人でこなしている楽な職場だ。

オーナーは、とても優しくて会えば絶対「あ、いい人だ。」と誰でもわかるくらいの人だった。
勤務条件もゆるくて、大して高くお給料をあげられないからということで、いつでもなんでも飲んで良くそして昼のまかない付き。
特にオーナー特製のカレーが絶品でバイト仲間で流行りだした焼きカレーは店のメニューになったくらいだ。グラタン皿にいれたカレーの上にウインナーとブロッコリーを壁を作るように端に丸く並べて空いた真ん中に卵を落としその上からとろけるチーズをたくさんのせる。1度レンジで温めてからオーブントースターで焼く。チーズが少し焦げて卵が半透明になる感じで取り出す。
なんでも横浜の海軍カレーのレシピらしくルーは、聞いたことのないメーカーのカレールーだった。
そのレシピは、誰でも作れるように、厨房の壁に大きく貼り付けてあって新人のバイトに先輩がつきっきりで教えて代々作らせていくのだった。

普通のカレーにはまずない、昆布茶や、醤油まで隠し味に入っていた。いつかメモって家でも作ろうと思うがなかなか実現していない。
月曜日のママさんたちの集まりに定番の焼きカレーセット。ドリンク付きで750円。
だから月曜日は、カレーの減りが早かった。

わたしはこのカレー作りがわりと気に入っていていつも冷蔵庫の中のストックを気にしては、カレー作りを率先してやっていた。

有線から流れるビートルズナンバーを聞きながら、キラキラした店の中を横顔で感じながら開店の作業を始めていた。

今日もわたしの『カフェRe-Q』の1日が始まる。朝一番に入れたコーヒーマシーンから漂うコーヒーの香りを思いっきり吸い込んで、カフェモードにチャージをして。

#小説 #カフェ小説 #喫茶店

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?