見出し画像

サイロとスラブ

◆サイロとスラブ

サイロという言葉は比較的知られています。サイロは、窓のない円筒型の穀物倉庫のことで、組織においては、縦割り型組織の弊害としてよく言われるものです。例えば製造部門と営業部門、医師と看護師など、異なる部門の人たちが分断されている状況を示す言葉です。

では、スラブという言葉をご存知でしょうか。言葉としては、厚板のことですが、これも組織の問題の比喩として稀に使われます。これは誰もがよく知っている階層間の壁のことです。いわば、横割り組織の問題です。

例えば、役員とマネジャーの間にはスラブがある企業が多いですし、マネジャーと一般社員の間にもスラブがある企業が多いのが現実です。

ところが、企業の役員でサイロを問題にしている人はたくさんいますが、スラブを問題だと思っている人は少数派です。これはサイロは問題だと口に出していう人がたくさんいますが、スラブが問題だとは言えないことが原因だと思われます。

一般的に考えて、一つ下の階層からは時々、壁(スラブ)があるという意見が出てきますが、二つ以上下の階層からそういう意見が出てくることはまずありません。


◆スラブに対する対処

スラブがあることを意識している企業はそれなりに対処していると思われます。例えば、よく取られている対処に社内会議のオープン化があります。日本のある大手メーカーで、会議に通りがかった社員は誰でも飛び入り参加できるという仕組みを作っています。海外に目を移せば、現場の会議に役員用の席を常に作ってあり、どの部門の役員が参加してもいいという仕組みを作っている企業があるそうです。これなら、スラブだけではなく、サイロの解消にもなるわけです。

もっともサイロが悪いことかというとそうは言えない側面があります。専門性を高めるためには、サイロは必要な側面があります。最近よく企業全体でオープンイノベーションを目指しているから、サイロはダメだという企業がありますが、そのような企業でイノベーションが生まれない理由は専門性がないからだという話を聞いたことがあります。


◆プロジェクトで解決すること

この問題を解決するのが、プロジェクトです。プロジェクトはサイロのない組織を母体としているわけではありません。むしろ、サイロがある組織を前提にして、継ぎ目のない組織をつくるのではなく、ちょうどよい継ぎ目のある組織を創ろうとする取組です。

例えば、日本の自動車メーカをみると、新車を開発するのに、プロダクトマネジャーを決め、技術から製造、マーケティング、営業など、あらゆる部門がプロジェクトを形成し、見事に機能しています。欧米には出来なかったやり方です。

長期のプロジェクトに固定的に人材を取られたくないと考えている組織もあります。そのような場合、プロジェクトメンバーとして組織がエントリーし、担当業務は手が空いている人が行うという形をとっているケースもあります。これはプロジェクトマネジメント的には問題ですが、プロジェクト化の目的がサイロ化を防ぐことだと考えれば、一つのやり方です。

このように、サイロ化を防ぐには必ずしも、組織をオープンにする必要はありません。


◆プロジェクトでも解決しない

ところがプロジェクトでも解決しない問題がスラブです。プロジェクトではむしろ、スラブが強くなるように感じることも少なくありません。組織にとってより本質的な問題は、サイロではなく、スラブであると考えられるケースも少なくありません。

高度成長期にいわゆる現場主義だった時代には、日本企業にはスラブはあまり目立ちませんでした。企業そのものが小さかったですし、現場が動けなくては自社のビジネスが回らないからです。ところが、企業が成長し、大きくなるとスラブが出てきました。

ということで、サイロやスラブが縦割り組織、横割り組織の問題だということで、それぞれ、組織開発として企業ごとに自社に適していると思われる問題解決をしているわけですが、この問題の本質的な解決策はどのようなものでしょうか?


この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?