結婚できない女(主演:福田萌子)

結婚できない女(主演:福田萌子)

ppasumi


※特定の人を中傷する意図はありません。あくまで分析して、それを僕の中で役立てようと思い立って書いた記事です。


はじめに


 先日完結したばかりの『バチェロレッテ・ジャパン』を観ました。
 普段僕はこういうものは全く観ない(そもそもテレビや映画など映像系コンテンツに疎い)のですが、たまたま知人に勧められて、名前だけは聞いたことある!となったので、少しだけ興味を惹かれたわけです。

 完走した感想(激ウマギャグ)ですが、結構面白かったと思います(小並感)。まだ観てない方は、ぜひ一度御覧になることをオススメします。

 恋愛に興味があるとかないとか、そういうのではないです。"この番組が刺さる層は複数ある"と表現すればいいのかな。老若男女、ロマンチストからシニシスト、ヤリ○ンから童○まで幅広い層にそれぞれの楽しみ方が存在する番組だと思います。

 僕の楽しみ方とともに、バチェロレッテの全体の流れをざっくりとおさらいします。

 前半(17人→5人くらいまで)は、出来レース感が強い。消化試合ですね。
 例えば、こういう会話があります。第二話?か第三話?だったと思います。

男性「萌子さんは完璧な女性だと思う」
萌子「私のどこが完璧だと思ってるの?」
男性「美しさ、綺麗なところ、あとは、えっと……」

 いや、見た目だけやん!と思わずツッコミを入れてしまいました。
 前半で落とされた12人のうち、まともに会話があるのは6人くらいでしたが、その誰もが「いやお前、それは……」と言いたくなるような何かを抱えたヤバい男たちです。バッサバッサとこういう男たちを切り捨てていく萌子さんは、正直見ていて爽快でした。
 でも、こういう男性をフるときも何故か涙を流す萌子さんの気持ちは、正直あんまりよくわからなかったですけどね。自分に酔ってんのかなぁって思いながら観てましたが。
 ともかく、(参加者の男性陣には申し訳ないですが)僕は前半は楽しく視聴できたなー。

 後半は候補者も絞られ、それぞれの男性ともっと深い(いうほど深くないけど)関わりを持つことになっていくのですが、ここが物議を醸している部分になります。
 というのも、男性と関わるにつれて、すなわち男性と真剣な話をしていくにつれて、"萌子節"とでも呼ぶべき、萌子さんの強烈なパーソナリティが顕になってきたからです。

 番組を観た感想として、萌子さんは格下の男にはめっぽう強いが、男の論理レベル/哲学レベルが同等以上になると、途端に萌子節を振り回しすしかなくなるんだなというのを強く感じました。
 そしてこれこそが、萌子さんが結婚できないという結論に至る最も大きな理由です。

1 イイ女・福田萌子

福田萌子はイイ女である


 福田萌子さんの人となりを簡単に説明すると、育ちよし、器量よし、性格よしの三拍子揃った「完璧に近い」女性だと評することができます。
 昔からこうだったのなら、さぞモテたことでしょう。30歳となった今でも、17人の男性から同時に結婚を申し込まれるくらいにはモテますがね。

 順にもう少し詳しく見てみます。まずは育ちから。
 実家は沖縄で土建業?を営む会社。つまり萌子さんは社長令嬢です。恐らく、それなり以上に裕福な生活をしてきたのだと思われます。
 汚い言葉は絶対に使いませんし、習い事等の影響でしょうか、姿勢もよく、常に笑顔を絶やしません。育ちの良い知り合いには僕も数人心当たりがありますが、萌子さんもそれと同じ印象を受けます。

 「ミス・ユニバース・ジャパン」などでの入賞経験があるそうで、器量についても申し分なしです。
 実際、番組内で萌子さんは様々なドレスや衣服を召されるわけですが、どれも普通の日本人女性が着たら「あの子ちょっと気合入れすぎじゃない?」となってしまうような服装を、彼女はサラリと着こなすのです。特にカクテルタイムのドレスなんかは本当に似合っていて、「あ、こういう人に似合うようにドレスは作られてるんやな」としみじみ感じたものです。

 性格に関しても、良いと思います。
 先程も挙げたとおりですが、汚い言葉は決して使いませんし、常に笑顔を絶やしません。いつも前向きで、「ピンチはチャンス!」等の言葉で、自分だけでなく、周りの人まで前を向かせてくれる。

 
まとめると、福田萌子という人間は、皆が憧れる要素を複数持ち合わせた理想的な女性なのです。

 ……表面上はね。

イイ女から飛び出す"萌子節"がヤバすぎる

 話を戻します。
 "萌子節"とは何なのか。
 具体的にコレだ!と言い切ることはできません。詳しくは、本編を観た人間にしか分からないことだとは思いますが…僕の中で印象的な萌子節は、最終回。スタジオに参加者全員集合して反省会的なことをやる回です。

 重大なネタバレになりますが、萌子さんはなんと候補者の中から男性を一人も選ばず、"全員失格"として物語を終えてしまうことになります。

 そもそも"全員選ばない"というルール破りをすることで"私らしさ"を過剰に表現しようとしているのだと僕は考えているのですが、ともかく、これが他の男性陣の怒りを買うことになります。

 そんな男性陣の問いかけに対して、萌子さんは萌子さんなりの考えを語ります。詳しくは自分で確認してくれ。
 ……後で詳しく掘り下げるのですが、このときの萌子さんの言葉の中で特に象徴的なのが、「私の人生は私が決める」という魔法の言葉です。

 萌子さんはそもそも、インスタグラムなどで活躍していらっしゃるモデルさんです。
 偏見が混じってて申し訳ないのですが、インスタグラマーといえば……といった感じで、典型的というか……。これも本編を見れば皆さん感じられると思うのですが、彼女の思考のキーワードとして、「自由」「個性」「成長」などが挙げられます。自己啓発系の本やインフルエンサーと同じですね。

 もっとも、僕はこの考え方を否定するつもりはありません。自由も個性も成長も、人生においてとても大切なことです。
 しかしながら、全体的に見ると、「自分の個性」や「自分の自由」を全面に押し出しすぎているのは否めません。自身の個性や自由の押し付けは、相手の個性や自由を奪うことだということに、萌子さんは無自覚なのです。
 このことは、「寛容のパラドクス」などでも有名なことですね。

 結局、このスタジオ収録での最終回では、男性からの質問には全て「私の人生は私が決める」をはじめとする魔法の言葉で押し通してしまいました。

2.福田萌子は結婚できない


 ところで、萌子さんは最終的に「結婚したいと思える男性は居なかった」という結論を下しています。
 これがルール違反かどうかといったことに関しては僕はどうでも良いと考えていますが……それより気になるのは、「もし萌子さんが誰か一人を選んでいたら?」ということ。ここからはこれをシミュレートしていきたいと思います。
 結論から言うと、全員ダメっぽいです(悲しい)


case1 中国人実業家 黄さん

 黄さんは実業家です。バリバリ働くエリートリーマンですね。

 黄さんの性格ですが、肩書に違わず、典型的なエリートリーマンのそれです。恋人に対する態度は割と淡白な方(仕事と恋愛の切り替えができる)と思われます。
 それなりに情もあるタイプではありますが、最終的にどうしてもダメなときは損切りできる、きっぱりした性格だと見受けられます。

 黄さんと萌子さんが結婚した場合、最終的には、黄さんの方から離婚を切り出すことになると考えられます。理由は、話の通じなさ

 エリートあるあるですが、彼らは話が通じる相手であれば、たとえどんなに自分と違う考えであろうと、それなりに上手にやっていくことができます。つまり、「価値観は違えど、論理さえ共有できればそれで良い」のです。むしろ、異なる価値観を持つものと触れ合うことで、新たな発見を得ることを期待しているのです。

 それに対して、番組内で度々語られますが、基本的に萌子さんは「同じ価値観を共有すること」を重要視するタイプです。そして、最終回で炸裂した萌子節のように、価値観が合わない相手に対しては、強烈な拒否反応を起こしてしまうのです。

 黄さんが「これはこうしたほうが良いと思う」と言っても、萌子さんは「私の人生は私が決めます」と聞く耳を持ちません。
 もしこれが二人だけの問題なら黄さんも我慢はできるでしょう。しかし、子育てや家族としての方針などの話になれば、黄さんにも譲れない部分がいくつも出てきます。

 本来は、お互いに譲れない場合、二人で話し合ってより良い妥協点を見つけ出していくことになります。論理的かつ生産的な話し合いを求める黄さんに対して、萌子さんもスタンスや気持ちの上では生産的な話し合いを望むのですが……。
 先程引用した最終回での萌子節のように、どこか議論がズレる上に、萌子さんの魔法の言葉が炸裂して、話し合いは平行線に終わってしまうのです。

 ついでに言えば、このとき、萌子さんの「色んな意見を聞くのは大事!」という上っ面だけのリベラルな態度が、黄さんの苛立ちを加速させることになります。
 エリートは矛盾に目ざといものですからね。そういう不満が募りに募った結果、最終的に黄さんは静かに萌子さんを見限ることになるでしょう。


case2 画家 杉田さん

 画家の杉田さん。
 おっとりした性格ですが、尽くすタイプです。番組内では萌子さんのことを女神様のように崇めていました。

 僕の中では、萌子さんと一番うまく行く可能性があるのは彼だと思っていました。とはいえ、うまくいく可能性は薄いと見ていますが。
 上手く行かない原因は、萌子さんのメンタリティや考え方が、芸術家の夫を支えるものではないからです。

 画家に限らず、芸術家というのは総じて調子の波が激しい職業だと思われます。場合によっては数年単位のスランプに陥ることもザラです。
 もう一点、芸術の世界は"正解のない実力主義の世界"であり、コネも才能もない人は、何十年頑張っても一生日の目を見ることはありません。

 萌子さんは、こうした世界に身を置く杉田さんを支えるどころが、むしろ、崖っぷちに立たされた杉田さんを谷の底に突き落とすような行動をしてしまうと考えられます。

 萌子さんの言葉の中で、印象に残っているものがあります。第三話で、萌子さんは参加者の男性たちにキツいトレーニングを課すことになります(最初に彼らにやらせることがトレーニングの時点で結構ヤバいのですが、それはさておきます)が、そのときに男性陣に放った言葉、「苦しいときは成長するとき!」というものです。

 この言葉が萌子さんの成長の秘訣であり、人生における様々な問題解決の核を成している考え方なのでしょう。
 この考え方を否定するつもりはありません。苦しいときこそ成長するときというのは、紛れもない事実です。

 ですが、仮にこれをスランプ状態の杉田さんに放ったらどうなるか?

 普通なら、「大丈夫、貴方ならきっとできるよ」といった純粋な励ましの言葉や、「○○したほうがイイんじゃない?」といったアドバイスによって、人は救われることになります。
 ここで「苦しいときは成長するときだよ!」と声をかけられても、「あくまで私は手助けはしない」「目の前の苦境から逃げるな」「お前はまだまだ成長が必要=劣った存在だ」と言外に責め立てているように捉えられるのです。

 鬱病の人への声かけの仕方で、「頑張ろう」が最悪手だというのが最近は随分と知れ渡ってきましたが、「苦しいときは成長するとき!」もこれと同じ意味合いを持ちます。そもそもこの言葉を投げかけていいような上昇志向の強い人は、世の中にそう多くないわけです。

 こうして頑張ることを義務付けられた杉田さんは、それでも萌子さんへの愛を糧に頑張るのですが、最終的に力尽きてしまいます。
 力尽きた杉田さんに、萌子さんはそれでも尚「苦しいときは成長するときだからシャキっとしなさい!」と言い続けることになるわけですが、恐らく最終的に杉田さんは、自殺するか、あるいは家族が無理やり萌子さんと引き離すことになるでしょう。

 そもそも、萌子さんは画家という職業を正確に捉えているのでしょうか。モデルが体を鍛えるのと画家が絵を書くのとでは、話が全く違います。

 萌子さんは最初に申し上げた通り、育ちも器量もそれなりの頭の良さも兼ね備えた、完璧に近い女性です。当然、努力をすればそれなりの結果が帰ってきたのでしょう。
 モデルという職業も、それに似たような性質があります。気分が乗らなくても、体さえ動かしていればひとまず体型は保つことが出来ますし、美しい身体づくりというのは様々な科学的事実に基づいてやっていくわけですから、モデルという職業は努力をすれば相応の結果が帰ってくる職業であると言えます。

 それに対して、芸術の領域というのは、それが技術的な問題か感性的な問題かというものはあるにせよ、頑張ったからといって、思い通りの結果が得られるとは限らないわけです。尤も、それは全ての物事に共通することではありますが、少なくとも他の物事と比べれば、成果が得られない確率は高い方でしょう。
 つまり、先程も述べた通り、画家は"正解のない努力"を求められており、それゆえに、努力が必ずしも正解とは限らない職業だということができます。

 萌子さんはこうした実力と努力の相関性の違いをあまり考えずに(自分の意見をゴリ押す人が、他人の立場に立てるとは考えにくいです)、「頑張れば成長できるんだからもっと頑張りなさい!」と激を飛ばすわけです。
 昭和のような価値観で、感性を育てることはできません。残るのは、萌子さんに対して萎縮しきった哀れなスランプの陰キャ画家です。合掌。


case3 歌手 ローズさん

 歌手のローズさん。
 情熱的なタイプで、相手への気持ちをハッキリと伝え、好きな相手にはとことん尽くします。
 最終回で、他の男性陣が萌子さんに不満タラタラな中で、ローズさん本人も納得はできてない印象ですが、それでも萌子さんへの一定の理解を示している。大切な人を第一に考え、できる限り守ろうとする。彼はそういうメンタリティの持ち主です。

 そんなローズさんとの結婚生活ですが、一定期間までは順調にいくと考えることができます。
 しかし、風船に空気を入れ続けるだけならいつか爆発してしまうように、バチェロレッテ内で垣間見えた萌子さんのパーソナリティでは、いずれ破局してしまうと考えられます。

 萌子さんは自分の趣味を他人と共有したがる傾向があるように思われます。本編でも、様々な男性が、萌子さんの趣味に付き合わされています(これは悪い言い方ですが……)。これに相手が応えてくれることを萌子さんは「互いの相性が良い」と表現していて、それは違うんじゃね?と思ったりもしたのですが……。

 ともかく、ローズさんは萌子さんの様々な要求や思想に対して、可能な限り同調したり、理解を示すわけです。
 そうすると萌子さんは「彼は私とわかり合っている!」となるわけです。気分の良くなった萌子さんは、「もっと私を分かってもらおう!」となり、ますます価値観や嗜好をローズさんに押し付けます。

 先程申し上げた通りこれは風船のようなもので、ローズさんの見えない不満はどんどんと膨らみ、やがて爆発します。二人は喧嘩をしてしまい、ひとたび価値観にまつわる喧嘩をしてしまうと、「彼は私とは分かり合えないのだな」と萌子さんの中で全てが終わってしまうのです。

 ある時、ローズさんが「それは違うんじゃない?」と萌子さんに反論をします。ローズさんは常に萌子さんの幸せを第一に考えるタイプですから、この発言は純粋な善意です。萌子さんのためを想ってこそ出てきた反対意見です。
 それに対して、ローズさんをイエスマンだと認識している萌子さんは、「どうして分かってくれないの!?」と逆ギレに近い激情を(実際にそれが噴出するかは分かりませんが)持つことになる。最終回で男性陣に反論をしているようなちょっと怖い表情で、「私のことは私に決めさせて!」と言うわけです。

 ローズさんは萌子さんのためを想って、譲れないところは譲らないでしょう。一方で萌子さんも、「私には私の考えがある。私の人生は私が決める」という魔法の論理でもって一歩も譲らない。
 そうしてお互い一歩も引かないと、やがてローズさんは今まで抑えてきた様々な不満もこぼしていくことになる。萌子さんはローズさんと心の底から分かり合えていなかったことにショックを受け、「そんなに私と合わないのなら別れよっか?」と、我慢を重ねてきた人間に絶対に言ってはいけない言葉を言ってしまうわけです。

3.結局、彼女はどうすればいいのか

 というわけで、奇しくもバチェロレッテ内で勝ち残った男性3名がそれぞれ典型的な男性だったので、上で代表的な3タイプの男性を取り上げてみましたが……。
 僕の感じた、萌子さんを始めとする4名の人間像では、結論としていずれの男性とも上手な結婚生活を送ることは難しそうです。

 では最後に、一体どうすれば結婚できない女:福田萌子は幸せな結婚ができるのか?ということを考えていこうと思います。

 方向性は2つ。自分か相手か、どちらかが変われば良い。すなわち、

 ・理想的な男性を見つけること
 ・萌子さんが変わること

の2つが解決策だと言えます。

萌子さんにとっての"理想の男性"とは?


 さて、この項は今までよりも僕の推測などが多く含まれていますから、あまり鵜呑みにしないで頂きたい。さりとて、そこまで的はずれな論を言っているつもりもありませんが……。

・萌子さんに直接的な反論をしない人

 まずはこれです。
 先程から何回か触れていることですが、萌子さんは自分と異なる考え方を極端に嫌っているように見受けられます。お互い人間ですから、誰しも意見の相違は起こるものなのですが、実際に意見が食い違ったときの対応力が極めて低い。

 「私はこう思う!」という萌子さんの強い意見に、「まぁそういうのもあるよな」というスタンスで臨み続けられる人が、萌子さんにとっての"安心できる人"というわけです。


・それなりに論理的に正しい人

 とはいえ本当に何も考えずに萌子さんの論理や価値観をすべてを受け入れてしまう人、すなわち、男性が論理的に弱いのもそれはそれで問題です。

 というのも、バチェロレッテ前半で雑兵のごとく切り捨てられた男性陣は、みなさん"論理的に成熟していない愛を萌子さんにぶつけていた"という点が共通しているからです。

 前半で萌子さんと1対1の会話をしているシーンでは、萌子さんの「どうして?」「どこが?」という質問攻めに男性が負けてしまうシーンが多く見られました。実際、前半で落とされた男性については、少々酷ではありますが「この程度で愛を語るなよ」と思ってしまう部分はありましたので……。
 なんにせよ、ある程度の論理で武装してから萌子さんに愛の告白をする必要があるのです。


・論理的に正しすぎない人

 しかしながら、これが難しいところで、男性の頭が良すぎるのもそれはそれで問題なのです。

 萌子さんが最後、杉田さんや黄さんを選ばなかった理由ですが、僕は「彼らが萌子さんより論理的/哲学的に優れていたから」だと考えています。

 萌子さんは、自分より論理的に安定した存在によって、自分の世界=自分の個性が破壊されてしまうことを恐れています。彼女が反対意見を過度に排除する傾向にあるのも、自分の世界を破壊しうる存在が許せないからなのです。

 萌子さんはそれなりに頭の良い方で、一手先が見える人です。彼女が読みうる一手先の中で最善と思われる手こそが、彼女の中での正解になります。

 一方で、"急がば回れ"ということわざなどが示唆するように、思考の範囲をもっと先の手まで広げれば、一手先における最善手が、必ずしも"真の最善手"とは限らないということがあります。
 例えば黄さんは、恐らく数手先まで読める人なのです。
 あるいは杉田さんは、(勿論、杉田さんも相当に論理的強者ですが)その独自の感性により、真の最善手を一撃で掴みうる人です。

 萌子さんは彼らと深く関係を持つ中で、"自分の考えではこれが最善のはずなのに、どうやら彼らはもっと先にある真の最善手が見えている"のだと気付いてしまったのでしょう。
 例えば、「苦しいときは成長のチャンス!」は中長期的なスパン=一手先の未来では正しいかもしれませんが、超長期的スパン=もっと先の未来では、方向転換したほうがより大きな利益を生み出すことがあり得る。

 詳しくは後述しますが、今まで勝ち続けてきた彼女にとって、自分の思考の先を行く彼らは許しがたいのです。
 それに、論理的に正しすぎると、萌子さんが取り付くシマがなくなってしまう。萌子さんにご高説をさせるだけの余地を見出すという側面からも、論理的に強すぎるというのは問題なのです。


・こんな人間いるの? / 元カレの性格を考える

 さて、こんな人間が居るのかどうかという話ですが、結論から言えば居ないでしょう。

 なぜなら、「全肯定すること」と「論理面で強いこと」が矛盾するからです。論理的に正しい人間なら、「これおかしくね?」という点に気付けてしまいますからね。

 じゃああれだけ萌子さんが熱弁してた元カレは何なんだよという話なのですが、元カレさんは「論理レベルをあえて落としていた」と考えられます。

 萌子さんと付き合う男性は、萌子さんに本当にぴったりの論理レベルの人間でないといけない。それより弱ければフルボッコにされますし、強ければ離れてしまう。
 しかし、萌子さんもなかなかの論理的強者です。ということは、相手も同じくらいの論理的強者。すると、「私のことは私で決める」などという魔法の言葉に反発されてしまう。当然それでは、萌子さんとの関係は長続きしません。

 萌子さんの元カレは、恐らく本来は彼女より遥かに論理的高みにいる人間です。それがあえて論理レベルを落とすことで、萌子さんのご機嫌を上手に取っていたのです。
 さながら社会人の彼氏持ちの女子大生が「彼と一緒にいると成長できる!」と錯覚しているようなものです。彼らは貴女にレベルを合わせているだけで、心の底で貴女のことをどう考えているかは、同じ論理レベルにない貴女には分からない。
 そういう論理的高みにいる人達は、論理レベルを合わせるのに疲れてしまったら、ある日突然「君は悪くない。悪いのは全て僕だ」という反論の余地のない言葉でもって別れを告げることになるのです。全ては彼らの掌の上のこと。

 というわけで、萌子さんが幸せに結婚するには、「本来とても強いが、萌子さんに合わせてくれるような男性」しか居ないということになりました。
 しかし、男性側に一方的に見下されながらの結婚など、仮初の幸せもいいところです。本当の幸せと呼ぶことは到底出来ません。

 つまり結局のところ、萌子さんが今の性格や問題解決方法を改めるしかないのです。


福田萌子はどう変わるべきか


 それでは、福田萌子さんはどのように変わればよいのか。端的に言えば、相手の意見を(表面上の話ではなく、行動や言論の次元で)受け入れられるように務めるのが大切です。
 もう少し具体的に言えば、「自分は自分だから」という反則ワードの使用を控えろということです。

 「自分は自分だから」――これは本当に魔法のことばです。これさえあれば難しいことを考える必要は一切なく、相手と意見をすり合わせる手間を取ることもない。
 今まではこの魔法の言葉で押し通すことができてしまったのでしょう。実際、彼女に認められたい/利用したい人間からすれば、「自分は自分だから」という言葉なんて可愛いものです。萌子さんを認めているフリさえしていれば、萌子さんは気分よく要求に乗ってくれるわけですから。

 しかし、それはあくまで"そこまで重要ではない問題"や"そもそも多様性が許される/望まれる事柄"に関してのみの話です。「私は私だから」に引き下がった相手は、決して萌子さんの意見を認めたわけではない。これ以上の議論は無駄だと思って手を引いたに過ぎません。
 結婚・子育てなどの人生における極めて重大な決定を、「自分は自分だから」でゴリ押すことはできません。ことに萌子さんが認めるようなイイ男であれば尚更のこと。流石に相手も「ちょっとまってよ」となります。

 意見がぶつかるのは当たり前という前提のもと、「自分は自分だから」という雑な論理ではなく、「じゃあこれは譲れないけど、ここはこうしましょう」と上手に妥協する技術が必要なのです。『貴方の考えはわかるけど、』などという、理解を示した風でその実自分の意見をごり押すための枕詞は、人生に関わる重大な意思決定の場面では使ってはいけないのです。

 何も全てを受け入れろと言っているわけではありません。受け入れる必要はありませんが、相手の意見や主張を理解するべきだと言っています。

 萌子さんが勘違いしていることして、たびたび出てくるのが「相性の良さ」というキーワードです。

 萌子さんはこの言葉を、「自分とどれだけ考え方や感性が似ているか」という意味で捉えているようですが…。
 極端な場合、つまり、自分と100%一致する感性の人間を想定すれば分かることなのですが、これは「単に自分に似ただけ」の人間です。

 思うに、「相性が良い」というのは、一緒に居て毎日がほんの少し楽しくなったりとか、幸せになったりとか、お互いにそういう風にし合える間柄のことを言うのだと思います。
 黄さんとの結婚生活のシミュレートのあたりで少し触れましたが、そういう相手の条件は、「論理を共有し、異なる価値観を持つ者」です。

 お互いに考えていることは違うけれど、相手がなぜそう考えているのかは理解できる。そういう相手の気持ちや考えを知って、「なるほど」「そういう考え方もあるのか」と思う。それを積み重ねることで、自分とは明らかに異なる他者としての相手を理解していく。
 そういう間柄だからこそ、例えば相手を想って選んだプレゼントが、自分の感性にマッチしつつも相手の色が含まれていて、それが嬉しいのです。
 つまり、価値観が違っても相手と論理さえ共有できていれば、「自分とは違うけどそれもイイね!」という加点方式の間柄になるわけです。

 もし自分と全く同じ価値観と論理を持った人が相手だったら、例えば少し気遣いされても「これは当たり前のことだよな」となってしまう。あるいはプレゼントをもらうにしても、普通に欲しかったものを普通にプレゼントされて終わってしまう。こんなにつまらないことはないでしょう。価値観の似た者同士では新しい発見はないのです。
 そして、ほんの少しでも自分の考えと違うことをされたときに、それがとても目につくことになる。すなわち、価値観の似たもの同士だと減点方式の間柄になってしまう。当然、互いの評価は最終的にはマイナスになり、二人は別れてしまうことになる。

 今の萌子さんは、萌子→他者においては「価値観が似ているか」という判断が真っ先に来るがゆえに、他者→萌子については一番最初に憧れなどの非理解な感情があるせいで、減点評価の間柄になりがちだと考えられます。

 他者からの評価方式はすぐには変えられませんが、他者の評価方式は今すぐにでも変えられます。萌子さんは相手と"加点評価の間柄"になれるような関係性の築き方を学んでいくべきです。
 そのスタート地点として、まずは相手を真に理解し、互いに譲れない問題で上手に妥協し合うことを覚えるべきなのです。

 萌子さんのような人間を評価するときに僕がよく使う言葉で"雑に勝ってきた人"というものがあります。
 特に知恵を巡らせることもなく、自分の家柄や才能(努力)、ルックス、語気の強さなどで今まで何とかできてしまった人だということです。彼ら/彼女らは、とにかく妥協することが下手です。

 しかしながら、人は誰しも成長するものです。30歳にもなれば、逆に回りの人間が"雑に負けて"くれなくなる。そうなったときに、「何で私の思い通りにならないの!?」と癇癪を起こすのではなく、「私の努力不足だ!もっと頑張ろう!」とさらなる努力を重ねるでもなく、「どうして彼はそう考えているのか?」と相手の立場に立って考えることが大切なのです。目の前の問題は、貴女一人の能力/思考で解決できる規模を超えているのだと気付くべきです。

 大事なことだからこそ、人は誰しも譲れない。しかしそこでお互いが10:0の成果を引き出そうとすれば、戦争が始まってしまう。上手に要求を通すような努力と、相手を真に納得させる思考/伝え方を身につける必要があるわけです。



 おわりに


 何だかんだで、色々と考えさせられる作品だな~と思っています。こうしてnoteに書かないと気が済まない程度には、感情/考察の余地が多い番組でした。

 冒頭でも喋ったとおり、バチェロレッテは様々な楽しみ方がある作品です。
 おとぎ話のような恋愛が好きな方は、こうしてド派手な舞台が整っているだけで胸がアツくなるのでしょう。僕は舞台の割に登場人物が普通すぎて、逆にちょっと違和感を覚えましたが。

 あるいは僕のように、登場人物に冷ややかな論を浴びせることによって、悦に浸るような楽しみ方があったりもします。あんまり褒められたものじゃないのは分かってますがね。楽しいじゃん、悪口……。

 女性であれば純粋に"萌子さんカッコいい!"となる方も多いでしょうし(実際、とてもかっこいい女性だと思います)、男性であれば"こんな女と結婚してぇ~"となるかもしれません。
 僕は福田萌子さんにまつわる問題点を指摘・考察したつもりですが、"福田萌子さんがイイ女である"ということは間違いないということは改めて、繰り返してお伝えしたい。(少なくとも、番組内で見えた範囲において)彼女は結婚に向いていなかっただけなのです。

 僕もそろそろ結婚について真剣に考える歳ですし、ホントに色々と考えさせられる内容だったな~。
 福田萌子さんの問題点の考察なんかは、男の側にも応用が効く話でしょう。というかむしろ、意見の押し付けや唯我独尊は一般的に男性の方がその傾向が強いくらいですし……。
 これを機に、自分の女性との関わり方を今一度しっかり考えたいものですね。

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