東大英語解法概論ー太流に基づいてー

 こんにちは。ポジハメです。今回はぜんこう君とタッグを組んだ記事となります。自分が太流の、彼が宮崎流の東大英語の解法を記事にするという企画です。是非、英文精読へのアプローチを手元に用意して頂ければと思います。

1A,要約問題

 パラグラフリーディングと同じような要領で、ツヨイ文(筆者の主張が強く表れている部分や対比され大きく取り上げられている部分)とヨワイ文(具体例などのサポート)を選別するところから入ります。この際、前の文(複数の文に跨る場合もある)の具体例や細かい説明を、指示語等でまとめたり、完全に包含したうえで新たな内容を付け足している文が存在する場合、前者をヨワイ文、後者をツヨイ文として扱います。ザックリ言うと、特にディスコースマーカーが明記されていなくても、表現リレーによる受け継ぎで前までの文章の内容がまとめられている場合(多くの場合、thisやtheseなどの指示語が使われます)、論理的帰結や具体と抽象の関係があるとみなします。より一般的に言うと、「一文と一文の間にはディスコースマーカーがある。無ければ、潜在しているだけで意味的には論理関係がある。」と言う事です。ちょっとわかりにくいかもしれませんね。以下の例を見て下さい。

まずは先ほどの表現リレーによるまとめからです。

①Zenkou writes articles about university entrance exams.
②Pozihame also does.
③These students of UT are interested in university entrance exams.

ZenkouとPozihameがThese students に受け継がれ、すなわち、文のsubject(主語、話題)が受け継がれて説明が展開され、③が①と②の内容をまとめたものになっているのがわかるでしょうか。つまり、③の前には、まとめのディスコースマーカーである"Thus"や、言い換えのマーカーである"In other words"が潜在していると考えられます。よって、①②はヨワイ文、③はツヨイ文となります。

別の例を見てみましょう。

①Some students of UT are interested in university entrance exams.
②Zenkou writes articles about them.
③Pozihame also does.

先ほどの例をいじっただけなので、関係自体はわかりやすかったと思います。こちらは①に対し、②③がその具体例となっています。つまり、②③の前には、具体例を示すマーカーである"For example"が潜在していると考えられます。先ほどと同様に①がツヨイ文、②③がヨワイ文となります。

以上のように、一文一文の間にディスコースマーカーが明記されていなくても、知っているディスコースマーカーの論理関係に帰着させて考えるという意識を持ってください。ディスコースマーカーの存在は具体と抽象の関係で特に起こりやすいです。

ツヨイ文とヨワイ文を選別したら、パラグラフごとにツヨイ文の内容を頭の中でざっとまとめてみましょう。それが出来たら、パラグラフの内容同士の論理関係を、文同士の関係と同じ要領で考え、最終的なまとめとして解答を完成させます。この際、パラグラフ全体が具体例と言う場合もありますので、そういったパラグラフの内容はカットして大丈夫です。パラグラフ全体が具体例という事は、それによってサポートされる主張が他のパラグラフにきちんと入っているはずです。

1B,段落整序・脱文補充問題

 次に東大英語で4Aと厄介さのトップを争うであろう1Bです。この問題で使う知識・技術は、一つには論理展開の典型パターンの知識、そして二つ目に表現リレーの技術です。前者はあくまで「テーマの提示があったらその説明が後に来る」、「譲歩があったら逆説が来る」と言うような、要約問題で使う知識と同じようなものと考えて頂ければ大丈夫です。多くの人が使いこなせていないのは後者の表現リレーの技術かなと思います。この記事では後者に重点を置いて説明します。

問題を解く際、まずは選択肢を含め、文章を通しで読むことから入ります。この際、ツヨイ文とヨワイ文をざっと選別し、どのような論理展開で説明がなされているのかを把握しておきます。場合によっては論理展開の典型パターンから選択肢が絞れる場合もあります。ただ、大体はそれだけでは無理です。そこで表現リレーで文の内容をつないでいくことで答えを出します。英文精読へのアプローチに書いてある通り、表現リレーは平行型かジグザグ型、もしくはその混合型ですから、段落整序であれば段落の最後の方と最初の方、脱分補充であれば空欄の前の部分と後の部分、そして選択肢の文の前半部と後半部を確認し、表現リレーが上手く成立するように解答を当てはめていくのが基本となります。このミクロの視点がまず必要です。

ただ、ここで一つ注意して頂きたいのは、「表現リレーは対比によっても起こりうる」という事です。対比は、簡単に言えば異なったもの動詞を並べる事でお互いを際立たせる修辞技法ですが、対比を作るからには、「比較のための共通の尺度が使用できる」と言う意味で「大まかに見れば同じ枠に収まる/同じ土俵に載せられる」必要があります。次の例を見て下さい。

①中学受験をする人は少ない。
②一方で、大学受験をする人は多い。

これが対比になっている事は分かると思います。ただ、今説明した通り、対比だからと言って何から何まで違うわけではありません。この①と②では「中学受験をする人」と「大学受験をする人」が「人数」と言う「共通の尺度」で対比されています。つまり、前者も後者も「受験をする人」と言う大まかな意味では同じ枠/ジャンルに収まります。「人」だからこそ「人数」と言う共通の尺度が導入できるわけです。更に言うと、日本語の文章ではありますが、これは「中学受験をする人」→「大学受験をする人」と言う表現リレーが起こっていると考えます。表現リレーとは言いつつも、完全な同値関係にある表現だけでなく、対比表現でも成り立つという事は留意しておいてください。(頻度は極めて低いですが、太先生の東大英語にも対比による表現リレーは出てきます。)

最後に、脱文補充で空欄が段落の冒頭にある場合、そして段落整序の場合、マクロ視点の表現リレーを使う必要が出てくる場合があります。全部が全部「前のパラグラフの後半=次のパラグラフの前半」と言うリレーではなく、「前のパラグラフの前半=次のパラグラフの前半」、「前のパラグラフの後半=次のパラグラフの後半」と言うような、パラグラフ間での平行型表現リレーが起こっている事があります。このような場合、段落の最初と最後のあたりの文の表現リレーだけを考えてしまうと上手くいかない場合があるので、ミクロ視点で成立しなくても、マクロ視点だとリレーが成立している場合もあるという認識を持ってください。一つ例を示します。数字は段落番号だと思ってください。

①東大英語の解法にはどのような流派があるのだろうか。
②例えばぜんこうは宮崎尊の教え子である。英語の"カン"を重視し、英語を英語としてネイティブの感覚で読むスタイルを使っていた。
③ポジハメは一方、太教教徒である。徹底的に理詰めで本文の内容を追い、理論的、客観的にに解答を作り上げるスタイルの使い手であった。

②段落の第2文と③段落の第1文だけ見てしまうと上手く表現リレーが取れない事に気づいたでしょうか。自分やぜんこう君、そして太先生や宮崎先生のスタイルを知っている人はその部分だけでも何となくわかるかもしれませんが、実際の入試では自分がそこまで良く知っている話題が上手く出てくれることなんてほぼありません。ここで注目して頂きたいのは「ぜんこう」→「ポジハメ」と、パラグラフの冒頭部分同士で表現リレーが成立している事です。そして②段落と③段落は、①段落の無いように対する説明として列挙されており、かつ対比関係にあります。厳密に説明すると、②段落に対し③段落で「別種の追加」がなされ、結果として、②段落と③段落が対比関係を形成しています。並列関係と言うのは、結局のところ、前の部分と同値関係にあるか対比関係にあるかの二つに帰着されるのは、英文精読へのアプローチPARTⅢ 読解総合の部分の初めの説明にもある通りです。このように、ミクロだけで上手く繋がりが見えない場合、段落と言うマクロ視点でのリレーに着目してください。

4B,和訳問題

 マクロ視点がメインだった要約、ミクロとマクロの両方が要求される段落整序に対し、ミクロ視点がメインの問題となります。基本は勿論一文一文の構文把握と、名詞構文や無生物主語などの日本語訳の作り方の技術ですが、ここに表現リレーを加えることで文脈に沿った訳文が作りやすくなります。これに関しては自分がここで説明するより英文精読へのアプローチを読んでいただければと思います。

まとめ

 以上が太先生の読み方・解き方・考え方の概論となります。実際の東進の東大英語であれば、これより沢山の構文や情報構造の知識を土台から徹底的に固めた上で、豊富な問題演習が出来るので、可能であれば是非東進で太先生の講座を受講してみてください。繰り返しになりますが、これはあくまで概論です。太先生のスタイルの核となる部分と、その中で特に注意しておいて頂きたい事項の補足でしかありません。この記事を読むだけで満足せず、必ずここからステップアップして技術を吸収して行って下さい。

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