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【瓦版】アラフォーのギャル男と日本一を目指そうか

すべてのことに疲れてしまった私は、アラフォーのギャル男達と富士山を見に行くことになった。青く光る車のライト。重低音が響く車内。きつい香水は苦手なのに。ライオンが吠えてる瞬間をギュッと固めたごつい指輪がハンドルにカチカチ当たる。

携帯には通知マークがたくさんあるが、それをひとつひとつ返すのも億劫なくらい疲れていた。血がたりてない。生理中というのもある。なんで人生というのはシンプルにいかないんだろうか。「ここ、まっすぐいってください。なんとかなります」というくらい、選択肢のない日々が欲しい。

ギャル男は言う。

「これから、俺の仲間がどんどん合流していくからよろしく」と。

車は6人乗り。何人くるんだろう。Twitterを見ながら「へーい」と返事をした。

羽田空港。カバンにグリッターの装飾がまぶしいギャル男2が手をふっていた。ストロングゼロを片手に、目の焦点があってない。ギャル男2の名前はアキヒコ。「おつかれ〜。ウィ〜」と拳を肩にぶつけてきたが避けた。

今、私はひどく疲れていて、ギャル男が1人から2人に増えようが急に明るくはなれないのである。とりあえずギャル男2のアキヒコの口が臭すぎるので、車内の窓2つを開け大喚起をした。

風がビュンビュン気持ちいい。目が乾燥していって、涙がでる、さぁもっと出ろ。

「俺たちは、これから日本一を見にいきます」

ギャル男1のシュンは、たのしそうに言った。

「こんなクソ雨の中、いくんすか?」私は嫌なことを言う女だ。だけど、我々の車の横を通っているチワワがびしょ濡れでこちこち震えている天気の中、なぜ日本一を目指すのか。

「いくよ。見にいくことに意味があるんだから。楽しくなる、俺たちなら」

意味って、どの段階からつくんだろう。そして名言っぽいことを言った後に、じゃがりこをまとめて3本食わないでほしい。

高速に乗る。今日の宿は山梨のでっかい家という情報をもらい、なんとなく2万円持ってきてと言われていたのでギャル男1のシュンに渡した。

前払い、日本一の旅。これで私はむつかしいことを一切考えず彼らの後をヒョコヒョコついていけばいいんだね。マッサージ屋と同じスタイルで助かる。身を預けて、信じよう。

「あかん。出てる。」

「何がよ?」

「ストロングゼロがきいてきてるねん。」

車の窓を全員が全開にした。

なんて日だろう。でもウンがついた、と思い込んで、山梨に行こうか。


私たちは日本一を目指す前にサービスエリアへ向かった。旅の途中に、困難はつきもの。尻についたものを早く落とせ、アキヒコ。

10分後、彼はズボンびしょぬれ丸として帰ってきてくれた。

「局所的に洗いたかったんやけど、だんだん本気洗いしちゃって、全部洗った結果のコレやねん。」

結果を出すのは素晴らしい、先を急ごう。席に乗り込む前にコロナ対策で車に積んでいたアルコールスプレーを全身にかけられる。当たり前だ。

高速のおかげで、どんどん目的地に近くなる、どんどん心おどる。

globeメドレー、びしょ濡れのギャル男が1番歌っている。

山梨についたらしい。ほんとうに?本当だ。富士山ナンバーがドッと増えて、「いいね〜」と大きい声が出てしまった。ああ、元気になってきている自分が不思議だ。

「みんな、右、見てみ!」

富士山だ。雲がもっこりと山頂をかぶさり、紳士に見える。あっさり日本一についてしまったので、スゲ〜という気持ちもそこまで起きない。まだギャル男2は全体的に濡れている。一番感動してるからよかった。

車を降り、みんなで伸びをする。

「20代ってこんなにつらいの?先輩たち、40代でしょ?どうなるのこれから」とギャル男2人に聞いてみた。

「つらいよ、ずっとつらい。も〜つらすぎて普通20代で辞めるべきギャル男やめれてないからね。自分でもまともになりたいのに、つらすぎてやめられない。」

ギャル男卒業できてないのって、人生つらすぎるからなんだ。

「俺なんか毎日漏らしてるからね」

こうはなるまいと強く思った。

ストゼロの缶をぐしゃりと潰し、次のストゼロへ手が伸びるギャル男2アキヒコ。人生はつづく。ギャル男になったとしても。
みんな、本当は日本一にそこまで興味がなかったことをごまかすように、急いで今日の宿に向かった。

そこではギャル男の高校時代の友達が待っていてくれた。

「はじめまして。」

「オッケー!高円寺に住んでそうな顔してんね。いいじゃん君。東高円寺あたりでスナックやったら行くよ。」

「あざすです。高円寺じゃダメなんすか?」

「高円寺はダメ。東高円寺がいい。丸の内線なら品を保てる。」


分かりました、次回は東高円寺で会いましょうと約束した。


BBQが始まったのと同時に、半裸になるギャル男2のアキヒコ。風下に追いやる我々。

「熱いのにうれしいよ」という彼はかわいい。

うちわで全力にあおぎ、火を強くする。

たくさんの豪華な具材より、ギャル男が焼けて欲しい。そうするためにここにきた気さえする。

「中まで火が通ったからお風呂に入ってきます。」と立ち上がって消えるアキヒコ。


彼がいないあいだ、恋愛相談なんかを他のギャル男たちにした。

「どんな人がタイプなの?」

「いやー仕事だいすきな人ですかね」

「なんで?」

「だってみんないやがる仕事を好きとかわざわざ言うなんて変態に決まってるし最高じゃないですか〜」

「おまえバカだな〜」

いいちこを割らずに飲むムードで、バカさが増してきて最高潮。

数十分後、風呂から上がり酔いが進んだアキヒコ戻ってきて森に向かって叫ぶ。

「ぼくの先祖、三代前までちんちん大きかったらしいのに、なぜですかー!なぜ子孫の僕は…なぜですか。遺伝はぜったいじゃないんですか!」


虚しく木に吸収された意見はこだまもしない。

「ちんちん大きくてもだめなやつはだめですよ。大丈夫だよ。」

「お前に何が分かるんや!」

怒られたので、反省をした。わかってるふりをして励ましてはいけない。三代前で打ち切られた、彼の気持ちに合わせよう。分からない、いや分からなくていい、ブラックタイガーうまいな。お代わりありますか?

アキヒコは酔いすぎて完全なる生命体になってしまい、木を抱きしめ寝はじめた。安心だ。朝までそうしててくれ。

わたしと15歳ほど離れている彼らがこんなに大酒を飲み、悩みを吐き、年下に呆れられるまでをセットでやりきる姿は非常に勇気づけられた。もうここには誰も日本一の富士山を見たことを覚えてる人なんかいない。日本一が霞む夜、かなりいいかもしれない。

立派な人になんかならなくていい、かな。

毎日、瓦版のように世の中で起きたかもしれない、いや起きてないかもしれない個人的大事件を軽く書き連ねていきます。世の中、苦しいニュースばかりで耐えられないので自分で書くことにしました(動物が産まれたニュースばかり希望)。完全見切り発車小説、としとこう。瓦版があった当時、2〜3文で売られていたようなので、今回から書いていく瓦版も100円にしたいです。これを最後まで読んで気に入ったら100円サポートしてください。記事のオススメボタンも押してもらえると飛んで喜びます(^^)やった〜。

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思いっきり次の執筆をたのしみます