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日曜興奮更新

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毎週日曜日に更新します。こちらの更新を元に「全部を賭けない恋がはじまれば」というタイトルで書籍化しました💋
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2022年1月の記事一覧

【日曜興奮更新】だから書くことにした

さきほど手紙を書いてみた。 よく自分で読んでみると、人に読ませるものではないと思った。ましてや、好きな男に読ませるというのなら素晴らしく心揺さぶるものを書いてみたいものである。 深夜に書いたものが翌朝恥ずかしくなると、色んな人から聞いていたので念のため、ニ晩寝かせてみたのだ。よりダメになった。これはカレーではなかった。 その文から匂い立つものは、ただの好きをぶつけただけで発展がない。 初めて長い文を書いてみようと思ったきっかけは、26歳の頃に出会ったキャッチの男だった

【日曜興奮更新】保険

家から歩いて5分のところに自然豊かな公園がある。 この街に住み始めてから、その存在を知ってはいたがしばらくは行く気になれなかった。俗っぽいことに忙しいと自然に触れ合おうなんて思わない。 最近の心の話をするとこうだ。恋愛というかセックスに振り回されるのに疲れて、人間のやるべきことはもっと他にあるんじゃないかと思っていたところだった。 なんのためのアクセサリー。なんのための着飾りと洗面台に並ぶ香水の瓶たち。 ジャージを簡単に着て、公園の入り口を通過した。 人はまばらに歩

【日曜興奮更新】夜のコール

池袋は夜になると、ぐっと寂しくなる。スプリングがおかしく沈むベットに身を任せ、天井を斜めに見つめる時間が永久に思えた。 さっき喧嘩して、彼は帰ってしまった。私も池袋から田舎に帰るかどうか迷った。 宮殿みたいなラブホテルのバスタブで、余計なことをなぜ言った。繋ぎ止めたい、でも追いかけさせたい、この両立って難しいだろう。 2回目のシャンプーの泡立てを確認し、その隙に栓を抜きながら上がって服を着た。 1時間前、意気揚々と現れた私たちを、ラブホテルの窓口にいたおばあちゃんは微

【日曜興奮更新】新年一発

正月が始まって、終わった。 新年の挨拶、電話を繋げた先から女の声がした。 こっちはさっき買った1000円のシャンパンを握っている。乾杯をしたかった。2人だけの世界があると思った。そんなものはこの空想が出来る脳みそというところだけで存在しているらしい。 高円寺のロータリーがいつもより冷えている。 「いえーい」と叫んでいるギタリストと目があった。新しい服を着ている自分と、マジの古着を着ている彼との新旧対決。 「あけましておめでとう。それ、なんの曲?聞いたことない。」

【日曜興奮更新】金

あけましておめでとう。ついに、新幹線の指定席に乗れる身分になった。真面目に働いていたら、そういう年を迎えた。 ゆうちょ銀行に並んでボーナスが入るのを楽しみに待つ。お先に金持ちになった東京の友達が2日で稼いでしまう金額が半年間待ちに待って私に振り込まれた。 暗証番号を爪で押して引き出して、みどりの窓口へ裸のお金を持っていく。 「もったいない」 そう思ってしまう自分がいた。この数万で綺麗な服を買えたかもしれない。ものたりない金額が残って、こんなせこい気持ちで華の東京から帰