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ノベルゲーム『ヒラヒラヒヒル』がめっちゃ良かった

『ヒラヒラヒヒル』というノベルゲームをプレイした。
このゲームをプレイするほとんどの人がそうだろうけど、僕もまた瀬戸口さんが大好きだ。いつも通り今回も期待を膨らませた状態でプレイを始めたが、期待通り、めちゃくちゃ良かった。

クリアまでのプレイ時間は15時間程度。
プレイしながら色々考え込んだりしていた時間もあったので、実際には13時間くらいだ。短く感じるが、値段を考えれば妥当だと思う。

この物語では風爛症という架空の病気が出てくる。
簡単に言えば歩く死体のようになる病気で、それ自体は明らかにファンタジーのものなんだけど、そこから現れる症状の大部分は実際の障害者と変わらない。
身体障害、精神障害、知能障害。現実でもある様々な障害が、この作品では風爛症という病気を通して描かれている。
これは僕の予想だが、作者は障害者というものをメインに取り上げたかったが、色々な方面に配慮した結果、実際の病気ではなく架空の病気を考案したんじゃないかと思う。
架空の病気がメインの物語でありながら、内容はどこまでも現実に即したものになっている。

この作品では二人の主人公がそれぞれの立場から、その風爛症という病気に触れ、悩み、決断し、生きていく様子を描いている。
中にはかなりハードな描写もあるが、それもまたこの作品の見所の一つだ。

自分や、あるいは自分の愛する人が風爛症になることで、彼らの人生は一変する。
一度なったら治療法は無いその病気によって、現実は滅茶苦茶に変えられてしまう。
しかし、病気になってしまったことはもう仕方がないのだ。凄く悲しいことだけども、なった後ではどうにもならない。
それになんとか折り合いをつけて、うまく、それぞれの人生を生きていくしかない。

出てくる登場人物皆が、それぞれの生き方を選択していく。
淡々と描かれるそれらを最後まで見守っていくプレイ体験は、本当に素晴らしかった。

瀬戸口さんシナリオの作品は全てプレイしているが、中でも今作は、エンタメ的な方向からかなり外れているように見える。
どちらかと言えば唐辺葉介名義の作品に近いけど、唐辺葉介名義の時にありがちな独特な暗い感じもあまり無い。
過去作と比べても、全体的にストーリーの起伏が少なく、淡々と進んでいく。その平坦さもあり、より文学チックなゲームになっている。

そういうわけで、前作『BLACK SHEEP TOWN』のようなものを期待してプレイすると、少し肩透かしを食らってしまうかもしれない。
しかし、方向性は今までと少し違うが、絶妙な心理のゆらぎを捕まえるその筆力は間違いなく瀬戸口さんのものであるため、シナリオライター目当てにプレイしても決して期待は裏切らない。

色々書いてきたけども、とにかく、めっちゃおすすめだ。

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