見出し画像

【パワポ研の決算資料探訪12】森トラスト・ホテルリート投資法人の決算説明資料は「一見さんお断り」な好事例

企業の決算説明会資料について解説するこのシリーズ。前回大変好評をいただけましたので、おかげざまでこの度シリーズ12回目を迎えることができました(好評だった初回Goodpatch様の記事は以下)。

今回も見どころある企業の決算説明資料について紹介させていただきます。
対象とするのは、「森トラスト・ホテルリート投資法人」。森トラスト及び森トラスト・ホテルズ&リゾーツがスポンサーのホテル特化型J-REITです。(J-REITとは、多くの投資家から資金を集め、オフィスビルやなど複数の不動産などを購入し、その賃貸収入や売買益を投資家に分配する投資信託)。

2021年8月期 第11期決算説明会資料
(http://mt-hotelreit.jp/file/ir_library_term-f9e9efb1317f48bee3bfa44c0747eade424fffa1.pdf)

それでは早速見ていきましょう。独特な資料です。

表紙

森トラスト_ページ_01

表紙は別にどうということはありません。投資対象(のはず)の不動産であるホテルの良い雰囲気の画像を用いた、それなりにきれいな表紙です。コーポレートカラーはクリムゾンレッドに近いことも分かります。

目次

森トラスト_ページ_02

そもそもパワーポイント資料に「目次」は必要かと言う問いもありますが、この資料には目次があります。目次があるだけなら珍しくはないのですが、かなり細かいです。このあたりから特色がその片鱗を見せ始めています。

新型コロナウイルス感染症に関する状況

森トラスト_ページ_03

とにかく細かいです。1ページに収まる情報量を遥かに上回っています。これほどまでに1ページに収める意味は分かりませんが、とにかく収まっています。紙面の幅はギリギリ、参考資料も国も縦横無尽。正直なところ、どこを見ればよいのか分かりません。このスライドで「何が言いたいのか」を瞬時に突き止めることはできないでしょう。コロナウイルスは自社にどう影響したのか、それは改善されているのか/そうでないのか、そういうメッセージは(おそらく)記載が無いように見えます。

このスライドの目的は、おそらく「各国こういう状況です」ということを本編に入る前に提示したい、ということだと考えられます。しかしこのように文字が詰まり過ぎたスライドは誰も見ません。せいぜい、「ああ、何かコロナの話が書いてあるのね」と思うだけです。あまり効果的なスライドとは言えないでしょう。

運用ハイライト

森トラスト_ページ_05

メッセージが分かりにくいのは、他のスライドでも同様です。比較的(前のスライドよりは少なくとも)情報量が少ないこのスライドでも、何が言いたいのかクリアには分かりません。分配金の絶対値は理解できますが、前年比いくらなのか、そもそもこの金額は多いのか少ないのか、そして注目すべき数値はどれなのか、そのハイライトもありません。

決算概要

森トラスト_ページ_06

こちらは所謂表スライドになりますが、やはり注目すべきポイントを理解するのは難しいでしょう。ただ、こういった表スライドは分かる人だけ分かればよいというものですので、これはこれで良いのかもしれません。

コートヤード東京の一部譲渡について

森トラスト_ページ_07

このスライドが白眉と言えるでしょう。とにかく情報を載せる。紙面ギリギリまで文字を使い、そして特段ハイライトはしない。

要すれば、この決算説明会資料は「分かる人だけ分かればよい」というスタンスで作成されています。それがよいのか悪いのかは明言できませんが、言ってみれば「一見さんお断り」な資料になっています。こういった資料は研究発表の場などで(意図しているかどうかはともかく)よく見られます。そういった場で求められるのは、「とにかく情報を掲載すること」です。そして、読み手は(時に)乱雑に積み重ねられた情報から瞬時に重要なポイントをピックアップすることができます。逆に言えば、そういう人以外は読み手として想定していないということです。

個別物件運営実績

森トラスト_ページ_08

「一見さんお断り」と思えば、この複雑怪奇かつ文字が小さすぎる表スライドも納得できます。作成者が想定する読み手は、この数値の羅列と小さすぎるかつ文字が多すぎる注釈の中から情報を必要十分に受け取ることができる人です。

実績分析

森トラスト_ページ_12

このスライドも同じです。左下のグラフに関しても、ありとあらゆる情報が詰め込まれており、一読では重要なポイントが理解できません。しかし、分かる人には分かる。そういった一枚です。

法人の特徴

森トラスト_ページ_17

その証拠に、章が変わった(第二章:法人の概要)際には比較的見やすい資料になっています。メッセージの項目こそありませんが、文字は比較的すっきりして、コーポレートカラー(?)のクリムゾンレッドにほど近い色で整然と情報が並んでいます。余白も一定存在し、いわゆるスライドライティングのお作法に則った表現に近いです。

つまり、第一章が「一見さんお断り」で情報リッチに、第二章が「こういう会社ですよみんな分かってね」という、明確に意図が分かれた構成になっているのです。使い分けの手腕はなるほど流石と言えます。

今後の主なホテル開発プロジェクト

森トラスト_ページ_24

このスライドも、新規の投資家に分かりやすいスライド構成になっています。メッセージがあり、また情報もそこまでミチミチに詰まっているわけではありません(左右の余白はもう少しあっても良いとは思いますが……)

ポートフォリオ概要

森トラスト_ページ_30

こちらのスライドはAppendixのものですが、これもすっきりと分かりやすいスライドです。左面いっぱいの物件の画像、右面にその説明。良いスライドです。

まとめ

前半は一見さんお断り後半は誰でも見やすいという二分された構成の資料でした。一見さんお断りの資料が日本では(意図せず)多いですが、こういう特殊な用途ではないかぎりあまり求められないでしょう。今さら紙で印刷する時代でもありませんので、1スライド1メッセージを徹底したスライドを書くことを強くお勧めします。さもなければ、ただ文字が小さくて見づらいスライドになってしまいますので。「分かる人には分かる」スライドが要求される場面は、そう多くはありません

パワポ研オリジナルテンプレート

パワポ研では「ビジネスシーンで使える」パワーポイントテンプレートを公開しております。デザインを整えるのみならず、ロジックやストーリーを整理するのにも役立つパッケージになっておりますので、関心のある方は下記ページも併せてご覧ください!

パワポ研_ビジネステンプレート

パワポ研からのお知らせ

上記の記事のように、noteではフォローしているだけでビジネスにおける「資料作成のコツ」と「デザインのセンス」が身に付くアカウントを目指して情報配信を行っています。

今後もコンスタントに記事を配信していく予定なので、関心のある方は是非アカウントのフォローをお願いします!

Template販売
https://powerpointjp.stores.jp/
note(マガジン)

https://note.com/powerpoint_jp/m/mc291407396da
Twitter
https://twitter.com/powerpoint_jp
お問い合わせはこちら
https://power-point.jp/contact



この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?