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決算説明会資料を集めて「パワポ採点ランキング」を作ってみた(鉄鋼・非鉄業界編)

みなさん、こんにちは。
資料デザインのリサーチや分析に取り組むパワーポイントのスペシャリスト、パワポ研です。

今日は「上場企業の決算説明会資料として公開されているパワーポイントを、パワポ研独自の観点でスコア化し、分析してみた」シリーズ第二弾です。今回の調査では、日本の鉄鋼・非鉄業界の東証一部上場企業うち、「TOPIX1000」にノミネートされている26社を対象としています。

各会社によってスライドの枚数、レイアウト、コーポレートカラーなどがバラバラなので、パワポのデザインや内容に関する採点基準を作ったうえで点数を付与しています。

それでは、早速見ていきましょう。

1位 愛知製鋼株式会社 【79.5点】

採点シート

バランスの良い配点で1位に輝いたのは、愛知製鋼社です。ビジネススライドとして目指すべき形を体言していると言ってよいでしょう。具体的なスライドについて解説していきます。

■シンプルだが、ロゴや日付が上手く配置されている表紙

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愛知製鋼社は、自らを「トヨタグループ唯一の素材メーカーとして、素材の限りない可能性を追求し、 新しい価値の創造を通じて、社会・地球の持続可能な発展に貢献していく特殊鋼メーカー」と位置付けています。コーポレートカラーであるオレンジ色と補色の青色を組み合わせることで、全体としてまとまった印象を受けます。

■見るべきポイントが一目瞭然であるサマリスライド

サマリ

投資家が企業の決算説明会資料から確認したい内容は、売上と営業利益の「前期比」「計画比」「増減要因」の3つです。今回のサマリスライドでは、このうち「前期比」「計画比」が記載されております。青色部分で強調されている部分が当期の数字であり、視覚的に非常にわかりやすくなっています。このようなサマリスライドがあるだけで、読み手は決算の全体像がつかめ、他のスライドへのアクセス性も向上します。

■配色の特徴が良くわかるスライド

グラフ

愛知製鋼社のスライドはとにかくシンプルで余計な情報がありません。上記の滝グラフでは、増加した項目は赤色、減少した項目は灰色と決めて営業利益の増減分析を行っております。グラフは色を多用してしまいがちですが、多くても3色に抑えて、違いを区別することを意識すると良いでしょう。

■必要な情報が抽出された表スライド

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サマリスライドで「減収減益」という事実を理解させ、「どうしてそうなってしまったか」という要因についても後段のスライドで解説しています。その分析に役立つのが上記のような部門別のPL情報です。最上段で売上高、営業利益と区別をした上で縦軸に各カンパニーの種別を並べており、誰が見ても理解できる構造になっております。表を作成する際には、「伝えたい情報は何なのか」「余計な情報は混じっていないか」「強調する面積が広すぎないか」という観点で見直してみると良いでしょう。

■文字色の上手な使い方がわかるスライド

ハイライト

全スライドに言えることですが、テキストの色に関して、いわゆる"真っ黒"は使われておりません。黒から2トーンほど落とした灰色が使われています。テキストに関する採点では、このように視覚に配慮された文字色をメインとしている場合には加点をしております。少しの工夫ではありますが、読み手に与える印象が全く異なるためです。このような細かな配慮がある企業は別の観点でも、減点が少なくなっている印象があります。「神は細部に宿る」ですね。

■参考資料や細かなデータは最後尾へ

参考資料

"おまけ"にはなりますが、重要な観点なので解説します。端的に言うと、「そこそこ重要なデータではあるが、スライドに入りきらなかった情報はまとめて最後に載せる」ということです。このメリハリがあるからこそ、本スライドで必要な情報のみを記載することができ、シンプルで見やすいスライドが完成します。当たり前のようで、案外できている会社は少ないので、参考にすると良いでしょう。

2020年3月期 決算説明会資料より引用


2位 DOWAホールディングス株式会社 【76.0点】

採点シート

僅差で2位に輝いたのは、DOWAホールディングス社です。メッセージの位置や余白の項目で点数を落としたものの、配色や画像の項目では高得点を獲得しています。
具体的なスライドを見ていきましょう。

■コーポレートカラーを前面に押し出した表紙

画像9

コーポレートカラーであるエメラルドグリーンを前面に押し出し、不要な情報がないシンプルな表紙になっています。金属の生産から高付加価値製品の製造、廃棄物処理・リサイクルに至る、独自の循環型事業を展開している同社のイメージが上手く表現されていると思います。

■視覚への負荷を抑えながら、ポイントを強調しているサマリスライド

サマリ

愛知製鋼社の表の説明でも記載した「①前期比」「②計画比」が一目で理解できる構成になっており、増収増益である事実が非常にわかりやすいです。補足する形でテキストの説明とグラフが挿入されており、「増収増益を達成したこと」がこの上なく表現されています。ただ、スライド下側の余白が無いことが少し気になりますね・・・。

■色のメリハリがあり、メッセージが明確なグラフスライド

グラフ

配色という観点、メッセージの伝わりやすさという観点で非常に高得点なスライドです。配色に関して、中期経営計画のグラフはワントーンほど薄くすることで未実現の数字であることが明確ですし、部門別の配色も明度を統一することで、各部門がフラットな関係にあることで理解できます。余計な情報がなく、完成度の高いスライドと言えるでしょう。

■必要な部分のみをハイライトしているテキストスライド

テキスト

グラフや画像での説明が多いため、数少ないテキストベースのスライドです。各事業ごとに今後の展開をコンパクトにまとめていますが、重要な部分はさらに青色でハイライトすることで、読み手に与える情報の優先度を上手くコントロールできていると言えます。テキストサイズも適切ですね。

■画像の有効な使用例がわかるスライド

画像

画像の使用は、多すぎず少なすぎずというバランスが難しいポイントですが、上記のスライドはバランス良く配置されたスライドであると言えます。DOWAホールディングス社のような企業の場合、身近なところでどのような商品の活用事例があるのかを明確にするだけで、一気に製品との距離感が縮まります。その意味で、「非常用電源に使われている燃料電池を新規事業として製造しています」というメッセージを書かずとも、画像を見れば理解できるスライド設計になっている点は高評価です。

2020年3月期決算説明会資料より引用

3位 古河電気工業株式会社 【69.5点】

採点シート

惜しくも70点代には乗りませんでしたが、第3位に輝いたのは、古河電気工業社です。配色項目での点数が高いことが採点シートからも読み取れます。
それでは、具体的なスライドを見ていきましょう。

■清潔感がありシンプルな構成の表紙

画像15

非常に透明感のある表紙です。企業理念として掲げている「世紀を超えて培ってきた素材力を核として、絶え間ない技術革新により、真に豊かで持続可能な社会の実現に貢献すること」を清潔感のある青色で表現しています。ディバイダーにも同様のカラーが使われており、全体の構成を考えても、青色が重要な役割を果たしています。

■改善余地のあるサマリスライド

サマリ

表の構成や全体の色合いは非常にバランスの良い仕上がりになっていますが、全体として余白がなく圧迫感を受けることが気になります。テキストに着目すると下線やフォントサイズで強調をしているものの、どこが重要なポイントなのかが一目ではわかりづらい構成になっています。強調する方法を統一して、伝えるべき内容を絞る必要がありそうです。

■配色が視覚に優しいグラフスライド

グラフ

滝グラフで売上高の減少要因を解説したスライドです。減少項目を赤色で表現し、かつ「▲」の記号が読み手の理解を促進しています。全体として落ち着いた色合いになっており、配色の観点で非常に参考になるスライドだと思います。

■タイトル部に"真っ黒"を使わないテキストスライド

テキスト

新型コロナウイルスの影響を表にまとめたテキストベースのスライドです。タイトル部は灰色、メッセージ部は紺色と用途に応じて色分けがされております。一方で、本文にはハイライトがなく全体として単調な印象を受けてしまいます。伝えるべき情報を厳選し、重要箇所にはハイライトを施したほうが、完成度の高いスライドになるでしょう。

■表紙と色合いを合わせたディバイダー

ディバイダー

全体が白基調なので、ディバイダーを青基調にすることで、ディバイダーとしての役割が強調されています。ディバイダーは他のスライドとは大きく異なった色彩にすることが重要です。文字が上に配置されており、中段のスペースが空いてしまっているのが少し気になります。

2020年3月期 プレゼンテーション資料より引用


採点シート

4位 リョービ 【66.0点】

採点シート

2019年12月期決算説明会資料を対象とした。

5位 日本製鉄 【64.5点】

採点シート

2019年度決算説明会を対象とした。

6位 神戸製鋼所 【64.0点】

採点シート

2020年3月期 決算IR説明会資料を対象とした。

8位 大平洋金属 【63.5点】

採点シート

2020年3月期 期末決算説明会資料を対象とした。

8位 UACJ 【63.5点】

採点シート

2020年3月期決算説明会資料を対象とした。

9位 アサヒホールディングス 【63.0点】

採点シート

2020年3月期 決算説明会資料を対象とした。

10位 日本冶金工業 【62.0点】

採点シート

2020年3月期決算補足説明資料を対象とした。

11位 JFEホールディングス 【61.5点】

採点シート

2020年3月期 インベスターズミーティング資料を対象とした。

13位 住友金属鉱山 【60.5点】

採点シート

2019年度決算 経営戦略進捗状況説明会資料を対象とした。

13位 三菱マテリアル 【60.5点】

採点シート

2020年3月期決算補足説明資料を対象とした。

14位 フジクラ 【59.0点】

採点シート

2020年3月期第4四半期決算資料を対象とした。

14位 東邦チタニウム 【59.0点】

採点シート

2020年3月期 決算説明会資料を対象とした。

16位 共栄製鋼 【58.0点】

採点シート

2020年3月期通期決算説明会資料を対象とした。

17位 住友電気工業 【57.5点】

採点シート

2019年度 中間決算説明会資料を対象とした。

18位 日本軽金属ホールディングス 【55.5点】

採点シート

2020年3月期決算説明資料を対象とした。

19位 大阪チタニウムテクノロジーズ 【54.5点】

採点シート

2020年3月期決算説明資料を対象とした。

20位 東邦亜鉛 【54.0点】

採点シート

2019年度決算IR資料を対象とした。

21位 大同特殊鋼 【53.5点】

採点シート

2020年3月期 決算説明会資料を対象とした。

21位 日立金属 【53.5点】

採点シート

2019年度決算2020年度業績予想を対象とした。

23位 丸一鋼管 【49.5点】

採点シート

2020年3月期 決算説明会資料を対象とした。

24位 山陽特殊製鋼 【48.0点】

採点シート

2020年3月期 決算説明会資料を対象とした。

25位 古河機械金属 【42.0点】

採点シート

2020年3月期 決算補足説明/「中期経営計画2019」総括を対象とした。

26位 三井金属鉱業 【38.5点】

採点シート

2020年3月期 決算説明資料を対象とした。

まとめ

今回の記事では、鉄鋼・非鉄業の企業を対象として、独自の採点基準をもとに決算説明会資料を分析してきました。スコアが上位の企業のみならず、下位の企業も紹介することで、上場企業全体のレベル感や決算説明会資料作成のポイントについて再考するきっかけになればと考えております。
採点基準については精査を重ねておりますが、主観的な判断をせざるを得ない点があることもご理解いただけると幸いです。

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