見出し画像

【再考したい】パワーポイントについて書かれた論文3選

みなさんこんにちは。
資料デザインのリサーチや分析に取り組むパワーポイントのスペシャリスト、パワポ研です。

今回は、パワーポイントについて書かれた論文に焦点を当て、それぞれの論文を詳しく解説していきます。少々マニアックな内容となっていますが、普段あまり考えない視点からパワーポイントについて再考する良い機会になればと思い、記事化しました!
(なお、今回は無料で公開されている論文のみ紹介するため、アカデミックの世界にいるいないに関わらず、原文は誰でも閲覧可能です)

それでは早速見ていきましょう。

板書スライドの問題を解決する授業設計とは

画像1

引用元:https://gakkai.univcoop.or.jp/pcc/2015/papers/pdf/pcc086.pdf
角南 北斗(2015), 2015 PC Conference, 91-92

昔ながらの「黒板に板書する」という授業のやり方から、「スライドを事前に作成してプロジェクターに投影する」というやり方にシフトする際のメリット・デメリットなどを筆者自身の経験をもとに具体的に論じた論文です。

スマホの普及によって、生徒が板書をスマホで撮影する「黒板写メ」が増えているの今の教育現場に対し、

授業での実践において、単純に黒板写メを禁止し、手書きでノートを取りなさいと指示するだけでは、教師の期待するような深い理解にはつながりにくいという実感がある(p.91)

というのが著者の最初の問題提起です。
「必ずしもノートを取る行為は必要ない」と考えた筆者は事前にスライド一式を生徒に配布するという授業スタイルを取りますが、今度は別の問題が発生します。

聴き手の思考が横道に逸れないよう、情報の取捨選択や整理を徹底すればするほど、学習者が途中で疑問を持って立ち止まったり、別の視点で情報を再構成したりすることが難しくなる。(p.91)

つまり、授業を整理されたスライドで展開することによって、生徒が紙芝居を鑑賞しているような状態になってしまい、授業の内容を咀嚼したり考えたりする機会が減ってしまうのではないか、ということです。

そこで著者は

学習者が自身の理解度を確認するような活動を授業に盛り込む(p.92)

という方法を採用しているのだと言います。詳しくは論文をご覧いただきたいのですが、例えば説明の途中で授業の理解度を生徒に質問したり、あえてスライドの途中で全体の方向性とは少し異なる疑問をさし挟んだりすることで、双方向のコミュニケーションを実現し、生徒に考えさせる機会を増やすことが重要だと説明しています。

論文自体は短く読みやすいため、教壇に立つ仕事をしている方は、是非全文を読み理解を深めていただければと思います。

機械学習を用いた要修正なスライドの自動発見

画像2

引用元:https://ipsj.ixsq.nii.ac.jp/ej/?action=repository_uri&item_id=205921&file_id=1&file_no=1
川瀬 卓也、大平 茂輝、長尾 確 (2020), 情報処理学会第82回全国大会講演論文集, 519-520

タイトルの通り、機械学習の技術を用いてスライド内の要修正ポイントを特定しようという夢のような話です。研究の大まかな流れは下記のようになっております。

対象スライド:学会発表までに繰り返し練習発表で使用したスライド
修正点の基準:練習時に参加者から指摘のあったポイント
アルゴリズム:最も古いスライドと最も新しいスライドを比較することで、修正が必要なスライドが持つ新たな特徴を発見する
(p.519)

学会の発表練習に用いた最も古いスライドと、様々な改善がなされた最も新しいスライドを比較すると、下記のような特徴が明らかになったと書かれています。

・箇条書きの同一レベルの項目数の削除
・箇条書きの深さの削除
・長文を箇条書きに分割
・説明の追加
・図の追加、削除
・箇条書きの文末表現の統一
・連続出現した単語の削除(二重表現)
・長文の短縮、削除
・強調部分の制限

これらの特徴に加え、先行研究で指摘されていた特徴も参考にした上で「要修正スライド」群と「修正不要スライド」群をデータセットとして作成し、これらを機械学習によって分類していくというのが本研究が目指しているゴールになります。
この論文では最も精度が良くなるパターンを特定し、その精度を確認したところで説明が終わっていますが、今後さらなる精度向上と実用化に期待したいですね。

学生の情報収集,パワーポイント作成,プレゼンテーションスキルの向上を目的としたパワーポイント・ディベートの実践

画像3

引用元:https://opac.ll.chiba-u.jp/da/curator/105101/S13482084-66-1-P317-OYA.pdf
小山 義徳 (2017), 千葉大学教育学部研究紀要, 66(1), 317-320

パワーポイントによって培われる「プレゼンテーションスキル」とディベート(の準備)によって培われる「情報収集スキル」の両方を同時に養っていくために、この二つを組み合わせた「パワーポイント・ディベート」の実践を提案する論文です。

パワポ作成、ディベートの実践はどちらも学生の能力を向上させる有意義な取り組みなのですが、

トピックが「地元の紹介」であったため,プレゼンテーションの中身が観光ガイドに載っていそうな,情報にとどまっていた(p.318)
情報収集の後に,実際にディベートを行ったディベー ト自体は盛り上がりを見せたが,スピーチに慣れておらず,持ち時間である 3 分間話すことができない学生が複数いた(p.318)

といった具合に、それぞれ単体で実施すると学生が著者の目標とする到達レベルになかなか達しないという問題がありました。そこで著者が提案するのが「パワーポイントを用いたディベート」の実践です。

通常のディベートでは「テーマ設定→情報収集→発表」という流れで進むところを「テーマ設定→情報収集→パワポ作成(スライドの作り方解説)→発表」という形に変更し、情報収集と発表の間にパワポ作成に関するコマを設けることを提案しています。

ビジネスの現場では「リサーチ」と「資料作成」が連動していることが多いですが、学生に対して必ずしもこの二つのバランスを意識した講義が実施されているとは言い難い状況なので、筆者の提案する「パワーポイント・ディベート」がもっと普及する世の中になると良いですね。

その他論文

本noteでは紹介できませんでしたが、他にも無料で閲覧できるパワーポイント関連の論文があったため、こちらにまとめて記載しておきます。

ICTによる鑑賞教材の提案 : パワーポイントによる鑑賞授業
https://gair.media.gunma-u.ac.jp/dspace/bitstream/10087/12169/1/2018-honda.pdf
学生の集中力を高める講義の要件とは:眠らせない講義
https://www.jstage.jst.go.jp/article/cjpt/2014/0/2014_1206/_pdf/-char/ja
文系授業における反転授業の事例研究 : ブレンド型授業におけるディスカッションと学び合い
https://tamagawa.repo.nii.ac.jp/?action=repository_uri&item_id=224&file_id=8&file_no=1
伝わるプレゼンテーションのありかた「ポイントを絞って文字数を減らせ」
https://www.jstage.jst.go.jp/article/jjsca/37/1/37_116/_pdf/-char/ja
プレゼンテーションの電子資料から見た問題点とは何か : 日本語母語話者及び外国人日本語学習者の共通点と相違点
https://u-gakugei.repo.nii.ac.jp/?action=repository_uri&item_id=34096&file_id=21&file_no=1
文を効率的に覚えてもらう指導方法 : パワーポイント型プログラム学習教材の作成と利用
https://iwate-u.repo.nii.ac.jp/?action=repository_uri&item_id=10842&file_id=36&file_no=1
実習や演示実験にパワーポイントを加味した授業実践の一例
https://www.jstage.jst.go.jp/article/chitoka/71/0/71_KJ00009324012/_pdf/-char/ja

パワポ研オリジナルテンプレート

パワポ研では「ビジネスシーンで使える」パワーポイントテンプレートを公開しております。デザインを整えるのみならず、ロジックやストーリーを整理するのにも役立つパッケージになっておりますので、関心のある方は下記ページも併せてご覧ください!

パワポ研_ビジネステンプレート

パワポ研からのお知らせ

上記の記事のように、noteではフォローしているだけでビジネスにおける「資料作成のコツ」と「デザインのセンス」が身に付くアカウントを目指して情報配信を行っています。

今後もコンスタントに記事を配信していく予定なので、関心のある方は是非アカウントのフォローをお願いします!

Template販売
https://powerpointjp.stores.jp/
note(マガジン)
https://note.com/powerpoint_jp/m/mc291407396da
Twitter
https://twitter.com/powerpoint_jp
お問い合わせはこちら
https://power-point.jp/contact

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?