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寝ている間にパワポ資料ができている「Timewitch」は破壊的イノベーションになり得るか?
みなさんこんにちは。
資料デザインのリサーチや分析、作成に取り組むパワーポイントのスペシャリスト、パワポ研です。
本記事では2021年5月9日現在においてタイムリーな話題を扱いたいと思います。ベンチャー企業のTimewitch社が提供するサービス「深夜特化型アウトソーシングサービス」の第一弾「パワポ作成代行」です(HPリンク)。
まず初めに同社は、以下の2点を売り文句としたサービスを展開しているようです。
圧倒的に手軽な入稿 :入稿指示書、キャパシティの事前確保一切不要
圧倒的なスピード納品:毎晩22時までの入稿で翌朝8時までの納品を実現
実際に、PR TIMESの記事(リンク)には入稿とリザルトの例が挙げられており、以下引用します(左から、Before→After)。
サービスのイメージ
例1:手書き入稿
例2:パワポ入稿
例3:写真入稿
では、このサービスが実際に「使えるか」どうかの考察をしていきましょう。
結論:良いサービス。ただしお金持ち限定
同サービスを運営するTimewitch社の三浦健之介氏は戦略コンサルタント(BCG)出身らしいので、その論法に倣って結論から述べると、
・パワーポイントが苦手な人、あるいは体裁にこだわらない人にはもちろん良いサービス
・ある程度スキルがある人にとっても、使い方によっては良いサービス
・ただし、コストパフォーマンスに拘らない人限定
といったところでしょう。以下、その理由を述べていきます。
サービスのメリット/利点
まず、同サービスのメリットについて正しく理解しておく必要があります。
同サービスは、「手書きや写真、パワーポイントの状態」で入稿すると、夜間に作業して「それなりにきれいな状態」で出力される、というものです。
つまり、「時間の節約」が、全ユーザーに共通するものとしては、唯一にして最大のメリットになるでしょう。
なお、「スライドがそれなりにきれいになる」というのは、人によってはメリットかデメリットか見解が分かれるところでしょう。詳細は後述しますが、細かい体裁に拘らない人にはメリットになり得る一方で、そうでない人にとっては足枷にすらなってしまいます。
サービスのリスク/欠点
一方で、リスクや欠点はそれなりに存在します。Twitterやヤフコメなどの意見を集約すると、以下のものが挙げられます。
・(おそらく安くはない)コストが発生する
・Before並みの素材があれば自分で出来る
・細かいフォーマットの指定が難しい
(=思い通りのスライドにはならない)
・情報の漏洩
コストに関しては、「自分でやればタダ!」というのはおっしゃる通り。そしてどこまでを外注するのかは、その人の判断です。例えば「電話やメールが無くても走って行って伝えればいいじゃない」というのは極論ですが、線引きはその人のお財布事情に依存するところが大きいので水掛け論になります。
「Before並みの素材があれば自分で出来る」という意見は、「時間を買う」サービスなので上記コストの問題と同じ結論になります。
「思い通りのスライドにはならない」というのは蓋しその通りなのですが、これは前述の「スライドがそれなりにきれいになる」というメリットの裏返しで、どこまでが許容できるかが肝です。完璧主義者(テキストの行間を0.1単位で気にする人)は到底依頼はできないでしょうし、逆に「紙があればなんでもいい」という人はどんどん依頼をするべきでしょう。
「情報の漏洩」に関しては、これは「NDAを結ぶ」というプロセスが発生するので、信頼を置くしかないですね。もしもそれが侵されたのなら、どこまでも同社に責任を追及するべきでしょうが、まずは信頼しましょう。
ということで、メリデメ(プロコン)が整理された上で実際の現場での運用実例を見ていきましょう。先行事例を参照する、というのもコンサルタントの手法ですね。
実際のコンサルタントの現場での活用
さて、同社の代表が述べている通り、コンサルタントの現場でも同様のものが社内サービスとして展開されています。コンサルタント(あるいは、アナリスト)は、待ち時間無く共通言語(英語の場合が大半)で夜間に入稿し、グローバルのパワポ作成部隊がそれを受け取り、翌朝それを受け取ります。なお、費用はプロジェクトの予算から捻出されますが、他のコストと比較しても微々たるものなので、ほとんどそれがネックになることはありません。
なので、そのサービスはしばしば活用されています。しかし、一般の方(パワーポイント作成の能力がコンサルタント並みに高くはない方)がイメージするような使い方ではありません。以下、よくある依頼の例を挙げます。
・4:3のフォーマットの16:9への変換
・ネットで拾ったPDFファイルや、客先から受領した紙媒体資料、画像のオブジェクト(パワーポイント)への変換
・エクセルの表のオブジェクトへの変換
(表を図形としてパワーポイントに表示させる)
・微妙にOCR処理できなさそうな文章のテキストボックスへの打ち込み
要すれば、皆さんがイメージするような「手書きでアウトプットイメージに近いコンセプチュアルなものを入稿して、それをきれいにしてもらう」というものとは少し乖離した、「非常に単純な作業」を依頼することが多いのです。
その理由は、「絶対に思ったものが出て来ないから」です。特に、コンセプチュアルなスライド、例えばビジネスモデルや将来の絵姿を解説するスライドなどは、プレゼンする本人がプレゼンしやすいように作るようにする他はなく、それを文章や電話で解説するとかなりの時間を要し、それでも「思ったのとなんか違うな」というものが出てきます。同じ会社の中でも、そういった齟齬が発生するのです。その結果、「自分でやったほうが速い」となり、そうした依頼はしなくなります。
なお、ジュニアなコンサルタントがそういう依頼をすることがあるのですが、朝起きてとんでもないアウトプットに絶望し、泣きながら修正する、というシーンは珍しくありません。
使うべき人/使うべきでない人
さて、先行事例を確認したところで、この前提を踏まえてこのサービスを「使うべき人」「使うべきでない人」がどのような人なのか、解説していきましょう。
使うべき人:お金にゆとりがあり、細かい修正を許容できる人
言うまでもないことですが、コストが許容できない人は使うべきではありません。このサービスは世の中にあるほとんどのサービスと同じく「時間と金を交換する」サービスです。依頼者は自身の時給や労働状況を考えた上で依頼をするべきで、さもないと期待値が膨れ上がり「こんなはずではなかった」とどこかに苦情を言うはめになります。
そして、前述の通り「細かい修正」は確実に発生します。自社のフォーマットに合わせてください、と言ってもインデントや行頭文字、テキストボックスの余白など修正したくなるところは山ほど発生することでしょう。それを見て見ぬふりが出来る人か、修正を厭わない人のみがこのサービスを満足に利用することが出来るでしょう。
使うべきでない人:お金にゆとりがないor細かい修正が許容できない人
逆に言えば、上記に当てはまらない人はこのサービスを使うには向いていない、ということですね。
なお、情報漏洩に心配がある人というのは敢えて記載しませんでした。NDAを結んですら心配であるとすれば、なかなかビジネスパーソンとしてやっていくのは難しいのではないでしょうか。もっともこの私の意見は、会社設立数か月のTimewitchを過度に信頼したものであることも否定できませんが……。
まとめ
という訳で、表題の「破壊的イノベーションになり得るか?」という問いに真摯に答えると「便利だけれども、破壊的イノベーションになるかと言えばNO」になります。実際、クラウドサービスで「パワーポイント作成」で調べれば無数に受託者はいますし、パワポの領域だけで何かしらのイノベーションを起こすことは困難だと言えます。
同社が売りにする「寝ている間に」というところですが、修正が確実に発生することを考えると、人によっては「おちおち寝てられない」ということになりますし、普通に考えれば余裕をもって発注するべきということが分かるでしょう。少なくとも、翌朝9時からのプレゼンテーションの資料が「朝の8時に見知らぬ人から送られてくる」ということは、一流ビジネスパーソンは絶対に許容しません。
コンサルティングの現場ではそういったこと(むしろ、もっと逼迫した場面)はよくありますが、それは信頼を置く(そして、文脈を深く理解している)チーム内での分担だから出来ることであって、見ず知らずの人をそこまで信頼することは自殺行為に他有りません。所謂、「お前のオールを任せるな」ですね(別に消えて喜ぶワケではないと思いますが……)。
そうすると、使い方は既存の代行業者とあまり変わりがないということになります。コストが破壊的に安価になるなら別ですが、クオリティが期待できない以上は「破壊的イノベーション」への道は険しいということになりますね。
とは言え、窓口が一本化してあり、毎度毎度NDAを結んだりするような事務的な手間が省けるならそれなりに便利であることは間違いないので、コストを気にする必要がない人はこれを機に「パワポ外注」を検討してみるのも良いでしょう。
また、同社はパワポ以外の領域にも事業を拡大しようとしているので、それらがシナジーを持ち始めると、破壊的イノベーションに繋がる可能性もあると言えます。
正しい依頼の方法
なお、パワポ外注には混乱がつきものです。以前にパワポ研では「正しい依頼の方法」を纏めておきましたので、必要があれば以下を参考に依頼してみてください。個人的には、「入稿指示書」はあったほうがよいのではないかと思う次第です。
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