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もしも「一時間でプレゼン資料を作れ」と無茶振りされたら

みなさん、こんにちは。
資料デザインのリサーチや分析に取り組むパワーポイントのスペシャリスト、パワポ研です。

今日は上司から急に「一時間でプレゼン資料を作れ」と言われた時に取るべき対処法を、具体的な作業フローや時間配分、スライドを示しながら解説していきます。

状況としてはこんな感じでしょうか。

「お疲れさん! 今のミーティング、良い議論だったね! 部長に説明したいからさ、説明資料ちょっと作っておいてよ。なに、難しいものじゃなくていいんだ、簡単でいいからさ。締め切りは……会議の一時間前には展開したいから、あと一時間くらいで出来るかな? なに、出来る範囲で構わないからさ! 頼んだよ、じゃ!」

……ずいぶんな無茶振りですね。

今回はメンズコスメ事業を題材に、社内プレゼン資料を一時間で作成しなければならない場合を想定し、その具体的な対処法について解説していきます。

Mission:メンズコスメ事業の市場動向についてのレポート
・インタビューを何本か実施した結果なんとなく市場の傾向は掴めつつある
・プレゼン対象者の本部長は、スライドの細かいディテールには拘らないが、理解力が著しく低いかつ、市場のことを何もわかっていない
・市場の状況だけ説明しても芸がないので、”今後わが社(部門)はどうするべきか”を記載しなければならない
・なお、上司は鬼のように厳しいので一時間は厳守とする

それでは、作り方を見ていきましょうか。

1. やるべきこととあきらめることを整理する(2分)

まず大事なことは、いきなり手を動かさないこと。急いてはことを仕損じるとはよく言ったもので、ここでも一考をはさむべきです。

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今回考慮すべきポイントは、大きく二つ。

1)何をやるべきか

今回は、上長が「説明資料を作っておいて」と言っていたので、上述の通り「メンズコスメ市場の状況:弊社の立ち位置と潜在顧客のニーズも含めて~」というところが、伝えたい内容になるでしょう。
もっとも、これだけ示すのでは芸がないので、「それを踏まえた、弊社がとるべき戦略・戦術」そして、「そのためのNext Action」というのも加えておけば、バッチリです!

2)何をやってはいけないか

ここで抑えるべきポイントは、「きれいな資料を作ろうとしない」ということ。こだわりたければこだわってもよいですが、すごく奇麗なスライドが一枚だけポンっと出てくる場合と、体裁は多少粗いものの情報が十二分に配されたものが十枚出てくる場合であれば、後者の方が求められていることは明白です。
また、情報ソースなどに過度に気を配る必要もありません。あくまで1時間で作った社内資料なので、情報転載の許諾などは必要なく、参照元を簡単に記載する程度で良いでしょう。

2. パワーポイント作成の下準備(3分)

1)事前の準備

事前の準備は、「資料作成に使うパーツを用意しておく」ということに尽きます。パーツというのは、パワーポイントのオブジェクトやスライドフォーマットを指します。例えば、タイトルを書く欄ですとか、よく使う矢印とか、そういったものを揃えておくということです。
パワポ研のメンバーは、こういう有事に備えて「よく使うパーツ集.pptx」というものをデスクトップに配置しています。具体的には、以下のようなオブジェクトを適当に置いていたパワーポイントです。

・テキストボックス:よく使うフォント・文字の大きさのもの
・タイトルorメッセージBOX:表題を記載するテキストのいれ場所
・ハイライト用の「囲い」:赤の枠線や、下地が赤のボックス
・いろいろな種類の矢印:太いもの、三角のシンプルなものなど
・コメントの「吹き出し」:誰かが喋っているふうのもの
・番号、アルファベット図:丸や四角で囲まれた1やAなどが記載されたもの
・三点リーダー:「…」という「次に続く」という意味の図形
・ステッカー:「作業中」や「更新予定」など状況が分かるもの
・〇×△オブジェクト:何かを評価するときに使う図形

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上記のようなオブジェクトは探せばどこからでも手に入れられます。それこそ、WEB上で手に入れてもいいし、自分で作成してもいいし、マイクロソフトオフィス謹製のものを使ってもいい。でも、それを探す時間はいつもない。しかも、どうせ自分で使うものなんて毎回限られています。なので、それらを「お徳用パック」みたいな形で常に手元に置いておくのです。もちろん、よさげな図やスライドを見つけた時には、適宜そこから抜粋して更新しています。いわゆる、秘伝のタレみたいなものですね。

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2)その場での準備

次章の「空パックの作成」に向けての準備ということで、ごく簡単にパワーポイントの資料の外形を作っておく、というのが当日の準備です。

具体的には、新しいパワーポイントを開いて、以下のスライドのフォーマットを作成しておくことです。

・表紙:タイトルと名前を入れておくスライド
・サマリースライド:言いたいことのまとめを文字で書くスライド
・コンテンツスライド(数枚):タイトルとメッセージがあるスライド
・裏表紙:会社のロゴなどが入っているスライド

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上記のスライドを、コンテンツスライドを除き各1枚ずつ、計10枚程度準備して、パッケージのタイトルを「20200801_メンズコスメ市場概況_営業企画部山田_13:00版」とでもしておけばよいでしょう。表紙もそれに準じた形で記載しておけばよいと思います。

なお、上記に加えて目次やディバイダー(章の切れ目を示すもの)もあればよいのですが、1時間しかないのでそんなものを作っている余裕はありません。そのあたりは、口頭でカバーしましょう。

さて、これで下準備が終わりました。いよいよスライド作成に移っていきます。

3. 空パックの作成(20分)

空パック(からぱっく、と読みます)と銘打ったものの、それが何かわからない人も多いと思うので、説明します。ちなみに、この作業が最も大事かつ高度なので、ここが踏ん張りどころです。組織によっては、この空パックさせあれば話が通じてしまうところもあります。

空パックを一言で言えば、「発表資料のパッケージの体裁をなしているが、中身が詰まっていなもの(=実作業が残っているものの、それ以外は作成が完了しているもの)」となります。その実作業とは、次章の「中身詰め」になるので、それ以外の外形を整える作業が空パックの作成になります。

そして、その空パック作成作業は以下に分解されます。

1)タイトル・メッセージの設定
2)中身(Body)の内容と、フォーマット決め


1)タイトル・メッセージの設定

これは、各コンテンツスライドにタイトルとメッセージを記載していく作業です。パッケージには目的があり、その目的を達成するためのストーリーがあります。今回の例では、目的は最初に以下のように設定しました。

ストーリーライン
・メンズコスメ市場の状況を説明する(自社の立ち位置と顧客のニーズ含む)
・それを踏まえた、「弊社がとるべき戦略・戦術」を説明する
・そのためのNext Actionを示す

この三つになります。なお、後段二つはあくまで作成者自身の解釈になりますので、「そういうことにも気を配っています」ということをアピールするかつ、議論の呼び水になれば十分です。なので、ここでは最初のポイントをきっちり語りきれるスライドを準備するための解説を例として以下に記載します。

一つ目の「市場の概況」を考えたときに、頭に上がってくるのは例えば以下のようなものがあるでしょう。

市場の概況
・市場規模と今後の展望
・市場のメインプレイヤーとその特徴(自社含む)
・市場のニーズと具体的な商材
・対象市場の現在のトレンド
・先進事例(例えば、諸外国の動向など)

そして、各要素で1~2枚のスライドを想定してそれぞれタイトルとメッセージを記載すると、例えば以下のようになります。

スライド1
・タイトル:メンズコスメ市場規模と今後の展望(1)
・メッセージ:国内市場規模は現在約xx億円で、2025年には約xx億円規模に成長
スライド2
・タイトル:メンズコスメ市場規模と今後の展望(2)
・メッセージ:XX年代初頭にXXの影響でブームになり、以降はニーズが安定
スライド3
・タイトル:市場のメインプレイヤーとその特徴(1)
・メッセージ:XXXが国内トッププレイヤーで、次点でXXX、XXX
スライド4
・タイトル:市場のメインプレイヤーとその特徴(2)
・メッセージ:XXXの主力商品はXXXであるが、XXX社のXXXなども市場で好評

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……などをざっと書き上げます。ポイントは、「その知識が手に入りやすいか(=一時間で獲得できるか)」と「ストーリーに対して意味があるか」の二点です。いずれも、時間短縮に必要な観点です。前者は、企業に問い合わせして手に入れるような情報はこの段階では当然使えませんし、後者は時間がないのにそんな情報を詰め込んでいる余裕はありません。


2)中身(Body)の内容と、フォーマット決め

タイトルとメッセージが決まったらしめたもの。その中身をどうするか、というのはほとんど決まったようなものです。

この後書いていく、おおよそスライドのパターンは三つ程度に絞られます。

三つのスライドパターン
・1パネル型:大きな図(グラフなど)がスライドの全面を占有
・2パネル型:左側に図、右側にその説明を記載。あるいは、メッセージを異なる二つの要素で支える場合などに活用
・3パネル以上:並列で複数の要素を見せる場合や、推移や経過を示すフロー図などに活用

一時間という短い枠組みなら、この三つくらいを念頭にスライドのBodyを考えていきます。1枚あたり1分くらいで構成しましょう。押さえるべき要素は二つしかなく、「本当に情報がすぐとれそうか(前回と同じ)」と「そのフォーマットで情報が伝わりそうか」です。特に後者については、イメージが湧かない場合はノートに手書きでスライドの概形を書くことも多いです。

上記二つの要素をステッカー(黄色などでハイライトされた、完成スライドには載せない説明書き)に記載し、各スライドにペタペタと貼っていきます。

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このようにして全部のスライドにステッカーを張ってきます。以下がタイトル・メッセージ・Bodyのイメージを上記の通りに記載して空パックを組み上げたものになりますのでご確認ください。

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ここまでくれば、後はもう中身を詰めるだけです。

4. 空パックの中身詰め(35分)

中身の詰め方……実際のところ、先ほどの下準備で8割方終わったようなもので、あとはとにかくググって張り付ける、これに尽きます。

・ググって、コピーして、ペースト
・文脈に合うように中身を修正
・引用したソースを貼る
・メッセージをちゃんと支えているか確認する

唯一注意すべきなのは、多少調べて情報がなさそうならそのスライドをあきらめるか、あるいはメッセージを変更すること。一枚に拘泥しているほど暇ではないはずなので、別の方法を考えましょう。もし横に同僚がいれば、代替の情報収集は任せてしまってもOKです。この段階まで来れば、スライドライティングから情報収集まで、他の人と分担が可能となります(ステッカーをきちんと貼っている前提)。

ということで、以下に完成形を示します。
繰り返しになりますが、社内向け資料なので、デザインには全く手を加えていません。これを対外向けにアレンジするのであれば、図表はソース元の情報を参考に自分で作り直し、全体の色のトーンを合わせるなどの工夫が必要でしょう。

おわりに

以上で完成となります。一時間でなんとか作成できそうなイメージは掴めたのではないでしょうか。少なくとも、内輪の社内MTGではこれで十分とも思います。逆に言えば、これ以上手間をかけるのは無駄だとも言えます。ジェフ・ベゾスを見習いましょう。

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