【パワポ研の決算資料探訪④】DeNA社の決算説明資料は「超省エネ」の到達点
企業の決算説明会資料について解説するこのシリーズ。前回大変好評をいただけましたので、おかげざまでこの度シリーズ四回目を迎えることができました(好評だった初回Goodpatch様の記事は以下)。
今回も見どころある企業の決算説明資料について紹介させていただきます。
対象とするのは、「株式会社ディー・エヌ・エー」。プロ野球球団横浜DeNAベイスターズの親会社であり、メガベンチャーと呼ばれる企業の一つです。
2021年3月期 第2四半期決算説明会資料
https://ssl4.eir-parts.net/doc/2432/ir_material/150613/00.pdf
それでは早速見ていきましょう。
表紙
超シンプル! そう、DeNAの決算書は表紙に始まり徹頭徹尾「シンプル」さを追求しています。必要最小限の労力で、しかしそれぞれのスライドが役割を果たす。そういうスライドがここからずらりと並びます。
なお、表紙に必要な要素は「企業名」「資料の種類」「決算時期」の3つです。そういう意味では、必要最初限ギリギリですね。ロゴは削ってもよいかもしれませんが、モノトーンなロゴなのであってもごくごくシンプルに見えるのがミソです。
2021年3月期の進捗
一切のイラストや画像をそぎ落とした収益推移です。上端部を除き緑のみで構成されていても、不思議と見づらさはありません。余計な目盛りも全くなく、グラフの一つの理想形です。
ゲーム事業:四半期業績
セグメント毎の指標においても、相変わらずグラフはシンプルです。項目毎に色を変える企業も多く、それが悪いとは言いませんが、変に色を使ったり色々悩んだりするくらいなら、これくらい潔い手法も検討してもよいかもしれません。なぜなら、担当者あなたの本業はグラフの色に頭を悩ますことではないはずなので。
ゲーム事業(新規タイトルの紹介)
任天堂社もそうなのですが、コンテンツに自信のある企業は細かいことをくどくど説明することはしません。ここでも、ドラクエが何周年なんだとか、H✕Hがジャンプで云々……という説明は全く不要です。そして、読み手はドラクエとH✕Hに並ぶ二つの見慣れないタイトルについても、「ああ、同じくらい有名なんだな。その筋では」と思うはずです。
スポーツ事業
スポーツビジネス全体が新型ウイルス問題で苦しんでいるのは、誰もが知っていることです。そこについてあれやこれや記載しても仕方がないということを「読み手は分かってくれる」という前提に基づき、これも最小現の情報量で閉じたスライドにしています。そして、その逆境下でもやるべきことはやっている、というのは写真3枚で十分に分かります。スライドの利点は文章をできるだけ少なくして、直感的に読み手の理解を促進させることにあるので、その良い例と言えるでしょう。
ライブストリーミング事業(事業解説)
ここも、他の企業ならYouTubeやInstagramのロゴを入れたくなるところをぐっとこらえて、主に文字情報だけ(+少しのアイコン)で閉じています。色使いも他のスライドと同じく緑を基調に、一つだけアクセントカラーの黄色を入れて、ハイライトが際立つ構成になっています。
向こう1~2年の重点施策
流石に少し文字と色が少なすぎでは……とも思ったこのスライド。近い将来の事業計画を記したこのスライドは、他社だと例えば三角形の山型にして、その詳細をイラスト等で丁寧に紹介する……ということになると思います。
しかし改めて見てみると、その場合でも情報量として大した差分はないので、作業効率を優先した場合このようなスライドになると思います。何時間もかけて手を込んだスライドを作るのであれば、こういったシンプルな形にまとめるのも一つの手でしょう。
バランスシート
実はDeNA社の全ての表スライドに共通するのですが、緑系のみでハイライトし、それ以外は全てモノトーンというビジュアルを徹底しています。企業によっては、文字が大きくなったり色がついたりしますが、この薄っすらとしたハイライトで、読み手側はどこを見ればよいかということが分かるので、これで本来的には十分なんですね。
まとめ
全編にわたりシンプルだったDeNAの決算説明会資料。ちなみに、ページ数も表紙と最終ページ込みで23ページとこれも出色の短さ。恐らく、世に出回っていて、かつ、見やすさと情報の必要十分性を両立した決算説明会資料の中では最も短い部類なのではないでしょうか。
贅を尽くした資料はそれはそれで良いのですが、社内のリソース配分という意味ではこれも一つの在り方と言えます。結果が出ている好業績企業の一つであることは間違いないので、株主はこの程度分量の資料でも不安になることはほとんどないでしょう。もしも業績が厳しかったら、この限りでは済まないかもしれませんが。
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