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ふんわり読書記録

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読書記録としての感想文。
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#ミステリー

斜線堂有紀「キネマ探偵カレイドミステリー」 - 映画好きにはたまらない短編集

引きこもりのオタクキャラ、すごい頭脳持ちがち。 デスノートのLのような安楽椅子探偵筋金入りの映画オタクで、一歩たりとも自宅から外に出ない休学中の白髪大学生「嗄井戸高久」が、ワトソン役の友人である奈緒崎くんとさまざまな事件を解決していくライトな探偵ドラマ。 かと思いきや、ラストは結構ハードな内容も含まれていて、読み応えがありました。 とにかくこの嗄井戸、キャラがめちゃくちゃ濃くて、デスノートのLを思い起こさせる。 そんな彼が、次第に人との友情を育んでいく過程も見どころのひと

読書記録 - 我孫子武丸 「殺戮にいたる病」

我孫子さん、あなたね……書きゃ良いってもんじゃないのよ。 ドス黒い気分を味わいたいなら犯人の逮捕シーンである "エピローグ" から幕を開けるサイコスリラー。 犯人の蒲生稔 息子から犯罪の匂いを嗅ぎ取る蒲生雅子 友人を殺された元刑事: 樋口武雄 という3人の視点で、時系列を前後しながら物語が進行していきます。 たまにはホラーも読んでみようと、軽い気持ちで読み始めたのが間違いでした。 グロ注意にもほどがある。 ホラーというより、ただただキモい。エグい。救いようがない

読書記録 - 西澤保彦 「七回死んだ男」

この設定、ズルい。 「七回死んだ男」のルール同じ1日が繰り返されることがある (意図的に繰り返せるわけではない) 繰り返される範囲はきっかり24時間 繰り返される回数は9回と決まっている 最後の9回目の結果のみが「本当に起こった出来事」として成立し、それ以外の結果は全て闇に葬られる 主人公が全く同じ行動をとれば、全く同じ1日が繰り返される そして事件は「あり得ないタイミング」で起こる。 新感覚タイムリープミステリいわゆるタイムリープもの。 ある1日が9回繰り返さ

読書記録 - 伊与原新 「リケジョ!」

小4にはなかなかハードな授業してます、この人。 軽めな「探偵ガリレオ」的ミステリ2人の理系女子、通称リケジョの活躍を描いた連作短編。 不思議な現象を科学の力で解き明かす、東野圭吾の『探偵ガリレオ』を彷彿とさせる5篇が収録されています。 表紙がかなりポップなので子供向けというイメージを持たれるかもしれませんが、ボリュームもあって普通に大人でも楽しめる小説でした。 エグいシーンなどはほぼ無いので、軽めで明るい雰囲気のミステリを欲してる方におすすめ。 科学に関する雑学が満載!

殊能 将之「ハサミ男」を読ませたい

ミステリーには2種類ある。 読者が探偵と同じように推理に挑む「推理メイン」のミステリーと、読者が「騙されること」を前提とするエンターテイメント色の強いミステリーだ。 "読者への挑戦" で知られるエラリー・クイーンの『国名シリーズ』は前者に分類されるだろうし、アガサ・クリスティの『そして誰もいなくなった』や『アクロイド殺し』は後者の代表であろう。 ではこの『ハサミ男』はどちらに属するか。答えは、完全に後者である。 ハサミ男は既に2人殺している。紛れもないシリアルキラーだ。