アンジュルム『はっきりしようぜ』~星屑と天使~
アンジュルムに9期が加入して初のシングルが発表された。そのうちの1曲が、なんとスターダスト☆レビューが去年リリースした曲のカバーという。ハロプロでは最近、80年代シティ・ポップ風な楽曲が系統として増えてきて、Juice=Juiceがシュガーベイブの『DOWN TOWN』をカバーしたりしてる。
そんな流れで今度はアンジュルムがスターダスト☆レビューをカバーすると聞いて、現アップフロントの制作陣や上層部が完全に決定権を手中に収めたんだなと思ったり。というのも長らくハロプロは山崎会長の意見が絶対的であり、どうしてもカバーするとしても70年代から80年代初頭の曲が多かった。フォークソングとかね。
だが、現在のアップフロントの社長である西口さんやディレクターである橋本さんが生きてきた時代は80年代後半から90年代にかけてだ。バブル全盛を若い頃に謳歌し、その後のどん底も味わってきた人たちはどこか音楽に夢を持った少年みたいな感性が多い気がしている。BEYOOOOONDSの楽曲でシティ・ポップが積極的に取り入れられたりしてるのも、やはりトップの人たちの趣味が多分にあるんだろうなと思っていた。
からのシュガーベイブとスターダスト☆レビューである。「なるほど納得だ」と勝手に解釈している。さて、スターダスト☆レビューといえば個人的には『今夜だけきっと』が大好きだ。ベタだけど。
1986年にアルバム曲としてリリースされ、CMソングとしても有名だが、実は2000年にシングルカットされている。そしてその時のB面(もやは死語)は、なんとモーニング娘主演映画『ピンチランナー』の主題歌なのだ。どうやら当時スターダスト☆レビューはアップフロント所属になっていたらしい。そんな縁が20年経って繋がるというのも面白い。
そしてアンジュルムがカバーした今回の『はっきりしようぜ』は、スターダスト☆レビューが去年だしたばかりの曲だ。
同じ事務所のKANの『ポップミュージック』をJuice=Juiceが同時期にカバーして出すことはあったけど、現在別事務所のミュージシャンが大切な新曲をカバーさせてくれるというのもすごい話だと思う。
本家はダンディズムの塊みたいな渋くカッコいいオジサンたちの「奮起」を歌っているような印象だったのが、アンジュルム版の方は見事にハロプロ様式になっている。この辺は流石に編曲がハロプロの源泉である鈴木俊介によるのが大きい。
が、歌詞に全く変更点はない。原曲そのまんまの歌詞なのだが、それすら視点が変わっているように感じるのは『はっきりしようぜ』が去年の曲なのが大きいと思われる。
マスクの中 呼吸も絶え絶えの毎日で
言いたいことも飲み込んで いつも青息吐息
冒頭の歌詞だが、まさに今の状況を描いていて、それが「いま」の臨場感を持って若い世代であるアンジュルムが歌うことのリアリティを生み出している。
アンジュルムといえば改名した6年前に出した曲が『大器晩成』である。
何にも惑わされずに どんな時代にも流されずに
と這いつくばって「負けないぞ」と歌っていた子たちが、幾多の試練を乗り越えて新メンバー3人を迎え入れて歌うのが
叫んでみようぜ 恐れずに 誰になんと言われても
という曲なのは、逆境を跳ね除けて「いまが最高!」と叫ぶアンジュルムに相応しい。相応しすぎて、最初からアンジュルムの為に作られたんじゃないかとすら思ってしまう。
そういえば『大器晩成』も提供者である中島卓偉が自分の曲として作っていたのをハロプロ上層部が「これいいな」とアンジュルムにカバーさせた曲だ。今回も西口社長なのか、橋本さんなのか、おそらくどちらかが決めたことだろうが、こういう嗅覚は流石だなぁと思うのだ。
なかなか思い通りにいかない世の中になってしまい、誰もが閉塞感でいっぱいになっている状況で明るく天真爛漫なアンジュルムの子たちが
笑ってみようぜ とびきりの 笑顔見せてくれ
なんて言ってくれると、がんばろうって気持ちになれる。
沁みるね。
こんな素敵な曲をカバーさせてくれたスターダスト☆レビューに感謝です。
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