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散策におススメ。魅力的な『東京の階段』を3タイプにわけて紹介

 山を走るトレイルランニングをしている私は、日々のトレーニングと趣味の街歩きを兼ねて、都心の階段をダッシュで巡っています。無数にある都内の階段のどれをまわるか、セレクトの基準は松本泰生著『東京の階段』です。

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 この本には、すでになくなったものも含めて126の特徴ある階段が収められており、この126の階段すべてを今年中に制覇してしまおうというのが、来年の新潟移住をひかえた私の計画です。

 今年1月から始めて、すでに85の階段をめぐってみました。名所に通じる急傾斜の峻烈系から、ゆるやかに蛇行する癒し系まで、さまざまな表情をみせる江戸の階段にすっかり魅了されてしまいました。その中でも特に散策におススメの階段をピックアップしてみました。

 ところで、都市の階段はなぜ存在するのでしょうか?めぐってみて思うのは、階段とは「高低差をつなぐ橋」だということ。ではなぜその橋はかけられているのか。『東京の階段』に収められている階段を、目的別に3つに分類してご紹介します。

1、点へ通じる階段 ~寺社仏閣への参道

 由緒ある建造物は、高所に置かれている場合が多いです。江戸の寺社仏閣も例外ではなく、古いものほど山の上にあり、つらい思いをして「たどりつく」ことによってご利益が増えそうな気分にさせてくれます。ツラ楽しいというべきか、ハアハアワクワクというべきか、参道階段を上る意義は大きいと思います。

 私が好きな参道階段、まずは「愛宕男坂」。


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「愛宕男坂」はおそらく都心で最も急で高低差のある階段。斜度が37°もあり、上からみると崖にしか見えません。86段を踊り場なしの一気登り。出世の階段ともいわれ、江戸時代に家光公のまえで曲垣平九郎が馬で駆け上ってみせたという故事にちなみます。なお、この階段を走ることは禁止されています。

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 「神田明神男坂」も、台上から秋葉原方面への眺望がすばらしく、上りがいがあります。「日枝神社山王男坂」は、まさに古来から人々が昇降していた重厚で趣のある石段で、厳かな気持ちにさせてくれます。

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 そして、学問の神様、湯島天神へつづく「湯島天神男坂」も急峻で直線的な意匠がたまらない名階段です。

 と、ここまであげたのは全部「男坂」ですね。他意はないのですが、私は急な階段を好みます。トレーニングしているということもありますが、一気に標高があがるのは登る喜びが大きいからです。

 急な階段は「男坂」と名付けられることが多いですが、その対となる「女坂」も近くに存在している場合が多く、男坂より傾斜が緩い優しい階段になります。ぜひ、男坂と女坂のセットで巡ることをおススメします。上記すべての男坂に、パートナーの「女坂」も存在します。

 ちなみに、参道ではないのですが、普段私がトレーニングに使っている階段はお茶の水にある「駿河台男坂」。これも、男坂。いかにもトレーニングにふさわしい、挑戦したくなる暑苦しい名前が気に入っています。こちらもちかくに「駿河台女坂」が存在します。

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2、複数の点へ通じる階段 ~傾斜地住居などへのアプロ―チ

 次に、目的地が複数ある場合。これは、傾斜に建てられた住居に続くものが多いですね。なので、プライベート空間にみえるものがほとんどで、通るのは憚られものも多いです。そういう階段は、離れた地点から眺めて楽しみましょう。

『東京の階段』からのおススメは、「白山の狭いアプローチ」「おばけ階段」「弥生の密集地階段ですね。

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「一葉の路地奥の階段」もこれに含まれますかね。一葉の階段は、なんとか未来に残したい、心のベストテン第一位の名階段です。本当に路地の奥地にあるので、探すのも楽しいです。

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 上記はほとんどが文京区に密集しています。傾斜がおおく、古い住宅地が残っているからでしょうか。そしてどれも狭いのが特徴。派手さや重厚感はありませんが、味のある、渋い階段が多いです。

3、面と面をつなぐ階段 ~エリア間をつなぐ近道

 1と2が特殊な例で、実際はほとんどの階段がこのカテゴリーに入りますね。駿河台男坂もそうですし、もちろん駿河台女坂も。

 私のお気に入りは、「谷中・王林寺わきの井戸付き階段」。令和時代によく残ったな、と感心してしまうほどの詫び寂び感です。井戸も、まだ使われているのでは思えるほどリアルに残っています。場所はわかりにくく、探すのにちょっとしたトレジャーハンティング気分を味わえます。

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 同じ谷中の「夕やけだんだん」も日暮里の台上と谷中銀座をつないでいる抜け感たっぷりの庶民階段で、にぎやかな商店街へ抜けるというのが、そのユニークネスを際立たせています。撮影にもよく使われているとか。

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 そして、文京区と豊島区の境にある「日無坂」も、タモリさん絶賛の風情と情緒を残してくれています。

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 新宿区の「念仏坂」も、低地のにぎやかな商店街「あけぼのばし通り」と台上の静かな住宅街をつなぐ、湾曲したユニークな階段です。庶民の大事な導線ですね。

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おまけ 抜け階段も面白い 

 カテゴライズが難しかったのであえて別枠でご紹介しますが、上記3類型すべての要素を持ちながら、面白いのは抜け道ならぬ「抜け階段」です。そこを通ることで一気にワープできるような、別の道を選ぶとえらく遠回りになるような、そんな魔法の段差を「抜け階段」と呼んでいます。

「高輪4丁目・高輪台から下る長い階段」は、眺望の先にある品川の高層ビル街とのコントラストが絶妙です。

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 赤坂の「福吉坂」もまさに繁華街から住宅地へ抜けています。地元住民の力で作ったそうですね。

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 そして、「神楽坂の熱海湯階段」「三田・小山湯階段」のダブル銭湯階段は風情×ワープの贅沢な掛け算を楽しめます。すでに廃業している小山湯の方は、開発で無くなることが決まっているので早めに訪れることをおすすめします。


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以上、江戸の階段レポートはいかがでしたでしょうか?私の階段旅もまだ道半ばです。まだ走れていない階段があるので、早く体感したいと思う一方で、全部制覇してしまった時の寂しさを恐れている自分もいます。『東京の階段』全てのマーキングが終わったら、今度は自分の視点でお宝階段を探していくのもありですね。

 なお、Googleマップで『東京の階段』マップを作ってみました。ぜひ、散策にご活用ください。

『東京の階段』Googleマップ

 江戸の階段をめぐる旅、ぜひご参加してみてください。また、この本に載っていなくて、みなさんのとっておきの階段があれば、ぜひ教えてくださいね。

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