被写体さんが撮影前にもっと確認すべきと思うこと

被写体(snsなどで活動しているアマチュアモデルの通称)をやってみたいという人が増えているように思います。被写体さんがカメラマンに撮影を依頼、もしくはカメラマンから依頼を受ける。気軽にやってみるのは良いことだと思います。

ただ、カメラマンとモデルの間で撮影時や撮影後にトラブルになるケースも多いと聞きます。そういったトラブルは、当たり前と思っていたことを事前に確認せず撮影に臨み、行ってみたら違っていた、ということだと思います。

これはどちらが正しいということではなく、双方異なる環境で活動しているため、認識が違っていたということ。些細なことであっても確認して擦り合わせておくことが大切です。

私の経験上、最低限これだけは確認しないとトラブルのもとだよ、というのをまとめてみました。

1. 報酬はもらえるのか渡すのか

被写体さんに依頼が来た場合は報酬がもらえるのか、撮影をお願いした場合は報酬を支払う必要があるのか、確認しましょう。双方が報酬なしで撮影をすることを「相互無償」と一般的に言われています。

2. 何に対して報酬が発生するのか

モデル料もカメラマンの撮影料もそうですが、さまざまな報酬形態があります。撮影時間に対して1時間あたり●●円、という場合もあれば1回あたり●●円、もあります。

さらに撮影自体ではなく、写真の現像(写真データ)に対して費用が発生する場合もあります。(プロの場合、こちらの方が一般的です。)この場合は、カットごとの金額なのか、または枚数に関係なく全データなのか、とかもあります。何に対していくらなのか明確にしましょう。

3. 写真データをもらえるのか

撮った写真の著作権は、法律上、基本的にカメラマンのものです。例え自分が写っている写真であっても撮った写真をもらうことは当たり前ではありません。ですので、撮影後に写真データはもらえるのか、いつまでにもらえるのか、何枚もらえるのか、必ず確認しましょう。

4. 写真データの権利

4-1. 被写体側の使用範囲

写真データを持っていることと、写真を掲載していいこととは別問題です。前述したように、著作権はカメラマンにあります。カメラマンが撮った写真を勝手に掲載するのは著作権の侵害です。

とはいえ、撮影写真はモデルさんもカメラマンも自由に使うのが多くの場合に通例になっています。写真を投稿して怒るカメラマンはあまりいないと思いますが、それはあくまで慣習。あらかじめ「投稿しても大丈夫ですか?」などと聞いておくとトラブルが減ります

4-2. カメラマン側の使用範囲

カメラマンが写真をどこに使うのか、sns上なのか、写真展や写真集に使うのか、広告写真などの素材の可能性もあります。自分が想定していなかった場所に写真が無断で使用されないよう、確認しておきたいです。

なお、著作権はカメラマンに帰属しますが、肖像権はモデルさんに帰属します。カメラマンがSNSなどの公共の場に掲載することはモデル側の許可が必要です。著作権と肖像権はそれぞれ違う法律が適用されます。

5. 写真を加工してよいのか

やはり、写真の著作権はカメラマンに帰属するので、写真はカメラマンの作品です。ですから、それに手を加えるのは作品をいじることとなります。「肌をもう少し整えたい…」などありますが、それは許可を取ってからにしましょう。「色を調整する」「トリミングする」も同じように許可が必要です。

※モデルとカメラマンの共同著作という考え方もあります。その場合もやはり双方の許可が必要です。

6. 誰が撮影に関わるのか

撮影は、カメラマンひとりですべてを行う場合もありますが、カメラアシスタントやスタジオスタッフ、メイク、衣装などいろいろな人が関わることもあります。「撮影当日、現場に行ってみたら相手は複数人でびっくりした」ということがないようにあらかじめ確認しておきましょう。

7. どんな撮影をどれぐらいやるのか

どういった場所で、どのような衣装で、開始時間と終了時間は何時ごろか。大まかに決めて、当日の雰囲気で内容を変えるケースもあり得るでしょう。しかし、その場合も両者が合意を得た上で変更するべきです。想定と違う撮影をして嫌な思いをした、ということがないように注意しましょう。

8. 記録を残す

これらの確認は、事前にDMなどで行い、記録を残しておくのが安心ですが、当日口頭で確認するケースも多いでしょう。ただ、言った言わない問題に発展しないため、確認した内容をDMなどで事後に共有しておくのも良いでしょう。

まとめ

上記の内容はある程度信頼できる者同士であれば、省略しても問題ない場合も多いです。実際私も省いて進行するケースも多いです。しかし、信頼できることと、認識が一致していることは別問題です。撮影に対する考え方はひとりひとり違うと思ってください。

プロの撮影の場合、モデル事務所などが仲介し、撮影内容や報酬体系、写真の使用範囲について、契約を結んだ上で撮影を行います。仲介者が「認識のズレ」を調整してくれているのです。

ところが、フリー同士だと、そのあたりが曖昧になりがちで、気になっていても後から聞きづらかったり、聞くと面倒と思われるのを懸念してうやむやにしてしまったりしがちです。相互無償だと、なおさらです。

初めて会う人同士であれば、撮られる側(特に若年の女性)は弱者になりがちです。上記のようなことを事細かに確認するのは大変ですが、後の不安を無くすためにも、相手を尊重しつつ、聞き方に注意して、確認してほしいなと思います。また、逆にこのような内容を真剣に相談したり説明してくるカメラマンがいたら、それを面倒くさいと思わず、一緒になって確認してほしいなと思います。

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